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21 説教

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 僕たちは部屋で、ソファーに座りマスターの到着を待っていた。

「マスターに会ったら、リョウの冒険者登録を頼むか。普通は受付でするが、目立つの嫌だろう。」

「うん、流石にあの中に戻る気にはなれないよ。でも依頼人に間違えられるなんて、ツイてなかったよ。」

 まさかあんなに沢山の人に囲まれるなんて、想像してなかった。新人や低ランクの冒険者には、僕が依頼人ではなく冒険者登録しに来た一般人には見えなかったのかな。マオ(子ども)と一緒なのが悪かったのか。

「その服装じゃ仕方ないよ。高かっただろう。」

「これは確か1980Gだよ。マオの服よりは高いけど、僕のサイズの服だとこれが1番安かったんだ。あれ?手数料があるから、もう少し高かったかも。」

「すまん。俺が変な質問をしたな。」

 俺が悪かった。鈍感なリョウにさりげなく今着ている服は、貴族や王族が着るような高級品だと伝わるかよ。他の冒険者が依頼人と勘違いした気持ちが凄いわかる。しかもーー。

「マスターまだかな。」

「もうすぐ来るよ。」

「まつの。」

 この容姿だからな。リョウとマオの顔を改めて見ると、美少女だと実感させられる。リョウは男だが、初対面で性別を当てる人間は少ないだろう。実際に俺も間違った。
 リョウに声を掛けた奴の中には、金が目的ではなくリョウ目当てがいた。囲んでいる奴の中に森に出入りできるCランク以上の冒険者が数名いた。あれは完全にリョウが目的の連中だ。

「待たせたな。おや?今日は珍しく連れがいるのか。」

「まあな。それより森の状況だがーー。」

 色々と考え事をしてる間に、マスターがやってきた。リョウのことは保留にして先に報告を済ませよう。


「と言うわけで、今地図に書いた場所には魔物が全くいない。城から町の付近まで魔物が消えたのは、魔人がこの辺に生息していて、魔物が逃げ出したからだと俺は推測する。」

「ご苦労。魔人の目的は不明だが、今の状況が長引けば、ギルドの被害は大きい。現段階でも魔物の肉や皮が足りず、クレームが来ておる。引き続き調査を頼む。」

「任せておけ。それとマスターにお願いがあるんだが、リョウの冒険者登録を頼めないか。」

「初めてリョウです。」

「マオなの。」

 グレイの報告が終わり、僕はマスターに挨拶をする。

「登録するのは構わないが、この子は何か特別なスキルでもあるのか。」

「流石はマスターだな。見事な推測だ。」

伊達だてに何年もマスターをしている訳ではない。登録の準備をするから、少し待っていろ。」

 マスターが棚から水晶と紙を取り出すと、僕の目の前に置く。話の分かるマスターのようで、この場で直ぐに登録をしてくれるようだ。

「最初はリョウの魔法の力を測定する。この水晶に手を置くと魔法の属性と、魔力の量を測定できる。やってみろ。」

 マスターの指示に従い、僕は水晶に触れる。赤・青・白・オレンジ・紫・黄色。6色の眩い光が部屋中を照らす。余りの眩しさに、僕は咄嗟に目を瞑る。
 
「水晶から手を放せ。」

 グレイが僕の手を取り、水晶から離れると、光は瞬く間に消えた。まだ目がチカチカする。

「全属性に敵性があるのか。それにこの輝きは…。グレイは知っていたのか。」

「全属性を使えるのは知ってたぜ。だが、これ程の魔力量があるなんて。森で試した時は威力がなくて、回復役ヒーラーとして育てようと考えていたんだが…。」

「教え方が悪かったのではないか。例えばリョウが小さい水とかを想像していたならば、小さい水が出るのは当然だ。リョウよ。この位の大きさの水球を出してくれ。」

 ようやく辺りがハッキリし出した目で、マスターを見る。バレーボール位の水の球を想像すればいいのか。

「これでいいですか。」

「こんな簡単にできるのか。」

「グレイよ。お主は確かに天才だ。ひとりでAランクの冒険者になったのを俺は高く評価している。だが、ひとりで過ごす時間が多く、他人に何かを教えるのは、その辺にいる冒険者よりヘタだ。もっと弱い人間の気持ちを理解しろ。」

「…分かりました。」

 マスターの言葉にグレイが謝る。グレイが悪い訳ではないのにな。僕が最初からしっかり想像していれば済んだことだ。

「リョウが気にする必要はない。俺が説明不足だっただけだ。」
 
「でも「グレイの言う通りだ。もう少しで、リョウの才能が潰れたかも知れないんだぞ。」」

「マスターの台詞は容赦ないぜ。」

 気にするなと言われて、本当に気にしないような性格は僕はしていない。

「グレイ兄さんなら、すぐに僕に上手に魔法を教えられるよ。僕はグレイ兄さん以外から、魔法を教わる気はないからね。」

「イジワル言うひとキライ。げんきだしゅの。」
 
「励ましてくれて、ありがとな。」

 僕とマオの言葉でグレイが少し元気になる。良かった。マスターはグレイを悪く言ったけど、僕にとってグレイは恩人である。あのまま森に居たら、町の方向が分からず野垂れ死ぬ危険もあった。それにお金だけ盗られて逃げられる危険があるのに、ガネットの話を聞くと躊躇なくお金を僕に預けた。グレイは本当に良い人だ。魔法の上達が少し遅れるくらい、グレイと一緒に居られるなら僕は喜んで受け入れるよ。

「俺もちょっと言い過ぎた。良い仲間を持ったな。」

「ああ。」

「それじゃあ次に移るぞ。この紙は特殊な紙でな。魔力を流すと本人のスキルや、何の役職に向いているかが分かる。魔法に凄い敵性があるから、スキルは1つかも知れないが、余り気にするなよ。」

「「・・・。」」

「その意味深な反応は何だ。」

 スキル沢山あるんだよね。まあ、隠してても意味がない。紙に魔力を流せば、マスターにも僕たちの反応の意味が分かるだろう。

「できました。」


リョウ・ワタリ(♂)16才

オンリースキル:購入(E)

スキル:鑑定(A)・支援(B)・魔力上昇(B)・言動読み書き(S)

オススメ役職:後衛支援の魔法使い




「ウソだろう。」

 マスターが紙を持ち震えている。予想が外れて、スキルが4つにオンリースキルがあれば、驚くのは当然かな。

「スキル多すぎ。それに男の子とか冗談だろう。詐欺だぁー!!」

「こ、こんな容姿で悪かったね。てかそんなに驚くか。失礼じゃない。女顔なのコンプレックスなの。大声で叫ぶんじゃねぇ。」

「りょうにぃにこわい。」

 マオの言葉でハッと我に帰る。まただ。女の子に勘違いされると、暴言を吐くのは自分の悪い癖だ。グレイなんて完全に引いてる。口元がピクピク動いている。

「次からは間違えないで下さい。」

「すいませんでした。それとこれで登録に必要な手続きは終わり何だが…」

「何か問題あったか?」

「問題とは違う。リョウに提案をしたいんだ。リョウの冒険者カードを発行したら、俺が暫く預かってもいいか。依頼は行えないが、その分に発生すると思われる賃金は俺が出そう。」

 暫く預かる?何でそんな事をする必要があるんだ。僕の疑問にマスターが分かりやすく説明をする。

「先にグレイに確認するが、お主はリョウとパーティーを組む気はあるか。」

「ああ、これも何かの縁だからな。一緒にパーティーを組むつもりだ。」

「だからだよ。今パーティーを組むとリョウも森の異変調査の依頼をしないといけない。魔法が覚えたてのリョウには危険だ。」

「なら、調査が終わってからパーティーを組めば問題ないだろう。」

「お前は1人だが、新人がパーティーを組むのは当たり前だ。新人にも薬草の採集など仕事がない訳ではない。僕たちが薬草の見分け方教えてあげる。と言い、強引にパーティーに入らされる可能性はゼロではない。」

 グレイと目が合う。あり得るって顔をしている。僕そんなに騙されやすくないよ。失礼だな。

「大丈夫です。自分の身は守ります。」

「でも実際に新人を魔物の囮目的で勧誘するパーティーがあるんだぞ。」
「入りません。無視します。」

「カードには自分の使う魔法や、スキルが全部書いてある。リョウの能力が目的に群がる奴はいるぞ。」
「カードを見せなければ、問題はありません。」

「薬草の採集する場所には魔物がいる。危ないだろう。」
「薬草の採集は新人の仕事でしょう。弱い魔物が相手なら、実践経験になる。万が一の時はすぐに逃げます。」

 何度か行われたやり取りは、結局グレイが先に折れた。

「絶対に受付以外はカードを見せないこと。依頼は薬草の採集だけ。採集の時は人に頼らないで鑑定を使うこと。その際にはマオを宿で留守番させるのでなく、一緒に行うこと。採集に集中し過ぎて、マオを疎かにしないこと。約束できるな。」

「はーい。」

「じゃあカードが出来るまで、少し待っていろ。あと受付で初心者用の冒険者セットがあるから、帰りに貰いに行きなさい。」

 こうして僕の冒険者登録は完了した。明日から薬草の採集を頑張るぞ。





 成るほどな。ずっとひとりでパーティーを組まなかったグレイが、リョウと供にに行動する理由。リョウは昔のグレイにそっくり何だ。グレイはもしやーー。
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