追放された勇者の異世界改革の旅 ~地球に戻る方法は唯1つ僕のスキルで文化を発展させること~

K.K

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18 モドキ

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※話の中に残酷な描写があります。



「モドキじぃじ、バイバイ。」

「送ってくれてありがとう。」

 マオたちに見送られ、ワシはひとり寂しく洞窟へ戻る。いつもはマオが笑顔で出迎えてくれる。その相手がいないだけで、洞窟が広く感じる。

『ワシには寂しがる資格はないか。』

 マオの名前を知らなかった。そんなワシがこれからもマオと暮らして良いのか。ひとりになると変に考え込むのはワシの悪いクセじゃ。食事をして早めに寝ようと、ワシは食料を保管している洞窟の奥へ向かった。


 ムシャムシャ、ボリボリ。


 ふと足を止める。侵入者じゃ。ワシは岩影から相手を伺う。

「美味しくない。ああ、何処かに美味しい食べ物ないかしら。」

 魔人?なぜこんな場所に居る。彼女がグレイの話していた魔人か。ただの偶然。いや偶然にしてはタイミングが良すぎる。

「早く任務終えて、ご褒美に美味しい物食べに行こうかしら。」

 目が合った。ヤバい。反射的に距離を取ろうとするが、相手はワシの行動を読んでいた。

「どこに行くのよ?」

 この女早い。これでもワシは速さには自信がある。グレイの剣だって不意打ちでも避けれた。間違いない。こいつは魔人の中でも、別格の実力の持ち主じゃ。
 
「はあい、ライラよ。夜遅くにごめんなさいね。」

『…モドキじゃ。魔人様がこんな場所に何の用じゃ。』

「そう、聞いてよ。酷いのよ。魔王様の命令で私がこんな田舎まで来る羽目になったの。変な黒と灰色の球体には追いかけられるし、本当に最悪の気分よ。」

 ライラと名乗る魔人は、文句を言う。態度は悪く、ワシを警戒している様子はない。しかし逃げられる気がしないのは、ライラとワシとの実力が離れているからだ。
 それにライラの言葉も気になる。魔王様の命令。ライラの目的は何じゃ。この洞窟にはワシとマオ以外住んでおらん。

「ねえ、この洞窟に女の子居るよね。私にちょうだい。」

『マオちゃんのことか。』

「名前は知らないけど、ゼロの妹ちゃん。早く渡してよ。」

『マオちゃんを迎えに来たのか。』

 ゼロから頼まれたのか。こんな事なら、最後の夜を一緒に過ごせば良かった。

「違うわよ。私はマオを殺しに来たのよ。」

『!?』

 驚きで声が出ない。マオを殺す。何かの聞き間違いに決まっている。そんなワシの願いは叶わなかった。

「本当よ。私がウソ付く意味ないでしょう。ねえ、妹ちゃんはどこ?私は早く任務を終わらせて帰りたいの。」

『…ここには居ない。居場所も知らん。マオちゃんは数日前に勝手にいなくなった。信じてくれ。』

 実力の差は明確。ワシには嘘を付いてこの場を凌ぐしか方法はない。

「何よそれ。完全に無駄足じゃない。」

 ライラはワシの言葉を信じたようで、凄い落ち込んでいる。この調子でライラを森の外へ誘導する。

『ライラさ「貴方もういらない。」』

 一瞬のことでモドキは避けれなかった。ライラの手から放たれた炎が、モドキを包み込む。

「使えない。流石は無能なゼロが選んだ魔獣ね。しょうがない。手掛かりがないなら、1度城に戻るか。」

 ライラは冷たい目でモドキを睨むと、足早にその場を後にした。




『良かった。』

 モドキは炎の中、笑っていた。自分の魔法で火を消せる力はモドキにはない。モドキは自分が炎に焼かれ死ぬのが分かった。だが、モドキには死の恐怖がなかった。自分の命でマオを守れた事を心から喜んでいた。

(やっと…。)

 モドキは魔物だった頃を思い出していた。





 モドキは宝石グマと呼ばれる魔物の1種だ。彼等は集団行動を好む魔物だ。彼等はリーダーの命令は絶対であり、命令違反者には容赦なく群れから追放された。そして、モドキも群れから追放された魔物だった。

 モドキは群れの中でも、平均より少し上くらいの実力しかなかった。そんな彼は普通なら、彼より強い宝石グマに命令される立場であった。


『ガオガオオ(訳:メシ、メシ)』

『ガオオ、ガオ。(訳:少しマッてろ。)』

 しかし、彼は群れの中では特別な扱いをされていた。群れのリーダーが、変り者で有名なモドキの父親だったからだ。彼は間もなく魔獣になれる魔物の中でも上位の実力者だった。魔人や人間に興味を持ち、自分の子供であるモドキを凄く大切にしていた。

『ガオオ、グオオゥ(訳:メシ、とっテこい)』

『ガオオ、グオ。(訳:ジブンで行け。)』

 他の宝石グマがモドキに命令しても、父親がそれを阻止した。何度か繰り返されるやり取りに、彼等は学習してモドキに命令する者はいなくなった。

 そんなある日、父が魔物から魔獣になった。

『魔人に認めラれた。すごいダロう』

『ガオ(訳:ふぅん。)』

 魔物と魔獣は見た目では分からない。魔人と会話が成立する知能を持ち、初めて魔獣と認められるのだ。
 この頃のモドキは魔獣に興味がなかった。魔獣って強いよね。今より良い食べ物が貰えるかも。父が魔獣になってもモドキの感想はそれだけだった。だが、モドキを責める者はいない。魔物は欲に忠実で、それ以外は興味がないのだ。

『魔獣にナッて、ゼロさまにナマエもらえる。スゴク嬉しい。』

 それでも、父はモドキに嬉しそうに話し続けた。だが、そんな父の話をモドキは殆んど聞き流していた。
 
(ねムい。)

『おマえにも、ナマエ付ける。楽しみにしてイろ。』

 喜ぶ父を前にモドキは、夢の世界に旅立った。それがモドキの記憶に残る最後の父の笑顔になった。






『ガオオ(訳:…ナンで)』

 モドキが起きて最初に見た光景。それは自分を背に庇う父の姿だった。父はかなり損傷が激しいが、モドキの前を絶対に動こうとしなかった。

『ムスコだけは、マモル。』

「なんでそんな頑固かなぁ。大人しく魔国に来てよ。キミは出世して魔人である俺の部下になれる。キミの仲間は全員、魔人の糧として食べてもらえる。良いこといっぱいでしょう。」

 モドキは魔物だ。この時は魔人の言葉を殆んど理解できなかった。しかし、本能で悟った。俺はこいつに食われて死ぬ。そんな未来を見た俺は父を置いて走った。

「逃がすかよ。」

『アブナイ!!』

 魔物の攻撃が父の肩を貫き、モドキの横に力なく倒れた。瞬殺だった。先の闘いでキズを負っていた父は、ピクリとも動く事なく命を落とした。

「ヤバい、どうしよう。上になんて報告すればいいんだよ。…待てよ。こいつの亡骸なきがらは良い研究材料になるか。そうと決まれば。」

 魔人は父の遺体の上に座り込む。モドキは動けなかった。魔人がゆっくり地面に手を付くと、父の遺体ごと影に飲み込まれていった。


 どれ程の時間が経ったのか。モドキの死への恐怖が和らぎ、周囲の状況を把握し始めた。


『ガオオオオオオオオォー』


 モドキは吠えた。理由は覚えていない。モドキはこの時まで気付けなかったが、周囲には仲間の死体で溢れていた。中には自分より小さい子どももいる。中には魔法ではない噛みちぎった痕がある仲間もいる。
 でも、彼等の中には自分のように、無キズの仲間は誰もいなかった。







 モドキは運良く狩りや水浴びに行き、魔人の攻撃から免れた仲間と再会したが、その暮らしは悪かった。上から命令されても、動かないモドキを憎く思う宝石グマは少なくなかった。モドキだけに命令が集中し、新しいリーダーがアイツの命令は聞くなと言ったことで、自分より弱い宝石グマからも無視された。
 それでも一生懸命に頑張るモドキだったが、メシの量が足りないと因縁を付けられ、群れから追放された。

 モドキはひとりになった。モドキはひとりで生き抜く為に、必至で知識を蓄えて父と同じ魔獣になった。それは父が死んでから300年以上経った日のことだった。


 



 それが何の因果か、ワシの父を殺した魔人の妹と暮らす事になるのはな。1年前洞窟で暮らしていたワシの前に、記憶より年を取った彼が突然現れた。

「こいつを預かれ。」

『この子は。』

「…俺の妹だ。魔力が多くて魔国では暮らせないんだ。暫くここで生活させろ。」

 眠るマオを強引に渡すと、詳しい説明は何もしないで去っていった。父を殺したゼロの妹。憎かったが、すやすや眠るマオを見て、この子に罪はないと彼女を育てることを決めた。

「ゼロー、ゼロどこ。うえーん。」

 最初は大変じゃった。ずっと泣いていて、食料は全然食べない。適当な理由をゼロに説明して、育児放棄をしようとも考えた。

「…じぃじ、いっしょにねんねして。」

『仕方ないのう。』

 だが育てる内に愛情が芽生えた。マオには幸せに生きてほしい。そう、心から思えた。






(…やっと父の気持ちを理解できた。)

 自分の命を捨ててまで守りたい家族の存在。モドキの生涯は、笑顔で幕を閉じた。
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