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9 夢の中で

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 あの後再びラーメンを作って、グレイと一緒に食べた。グレイはラーメンを気に入り、ラーメンを2食ペロリと平らげた。最初の1食も殆んどグレイが食べたのに凄い食欲だ。お蔭でカップラーメンが残り1個になった。師匠ができて嬉しいが、食料が無くなりそうで怖い。

「取り敢えず、俺のテントに移動するぞ。そこそこ広いから一緒に寝れるだろう。」

 僕は急いで後片付けを終えると、いつの間にか段ボールを持ったグレイに声を掛けられた。昨日は森の中を歩き続け寝ていないので、テントで眠れることが嬉しく、グレイの後に続いて歩く。テントは近場にあり10分程で到着した。

「俺は少し用事があるからリョウは先に寝ていろ。明日から魔法の特訓をするから、しっかり体を休めろよ。」

「はい。明日は魔法の特訓をお願いします。」

「おう。」

 グレイがテントを出ると、僕はすぐに寝袋に入った。かなり疲れが貯まっていて、僕はすぐに眠った。
 




 その夜、僕は変な夢を見た。

『初めまして、涼様。私はこの世界の女神リアと申します。今日は涼様に用事があり、夢の中にお邪魔しました。』


 深々とお辞儀をして挨拶をするリアに、こちらも思わずお辞儀をする。

「って、女神様!?」

『はい。この世界を担当する女神です。』

 笑顔で柔らかく微笑む少女を見る。リアは保育園児くらいの幼い少女だ。見た目は日本人のようで、黒目に黒髪だ。髪は可愛らしく結っている。まだ子供のリアが神様なのは、にわかに信じられない。だが、本物の神様ならば僕は言うことがある。

「女神様なら僕を地球に帰してよ。」

『申し訳ありません。それが、今は涼様を地球に帰すことが出来ません。』

 今は帰れない。それに少しショックを受けるが予想していた答えなので、余り傷付かない。それに裏を返せば、いつかは帰れる日が来るのだ。この世界で少し頑張ろうという希望が持てた。

「では、僕はいつ地球に帰れるの?」

『お父様が私が一人前だと認めたら、涼様は地球に帰れます。』

 千秋が魔王を倒したら帰れると予想していた僕は驚く。リアが一人前に認められるのと、僕がこの世界に来たのには何の関係があるのか。困惑する僕にリアは説明する。

『私は子供で、この世界が初めて担当する世界何です。ですが、お仕事が分からない事ばかりで、500年ほど昔この世界は消滅の危機に陥りました。何とか消滅は回避したけど、文明は崩壊して、人類は僅かになりました。』

 リアの目が潤む。責任を感じているのだろう。リアも悪い部分はあるが、もっと悪いのは周囲の大人の神様だろう。初めての世界はしっかりサポートするのが、大人の役割だ。リアの両親は何をしているんだ。

『その時、私は人が亡くなり、文明が消え行くのを黙って見ている事が出来ず、私はお父様に泣き付きました。そしてお父様は自分の世界の中でも、強い魔力を持った少年たちを勇者として私の世界に喚びました。』

「リアのお父様ってもしかして…。」

『地球の神様です。』

 まさかの地球の神様。僕知らない間に地球の神様の悪口言っちゃったよ。罰が当たらないかな。今は異世界だからセーフだよね。でも、普通に考えれば、僕がこの世界に来たんだ。リアが地球の神様の娘でも不思議はないか。

『涼様お願いします。私に力を貸して下さい。私は無知です。他の神は最初の世界は滅んでも仕方がないと言います。けれど、私はこの世界の滅びを見たくありません。』

 リアが僕に抱き付き泣き始めた。リアは心の優しい子なのだろう。リアの話しからして、この世界は実験台だ。滅びて問題ない世界で、子供が立派な神に成長する為の勉強道具だ。僕のような少年を送っただけで、手を貸さない地球の神様が証拠だ。
 僕は優しくリアの涙を手で拭う。
 
「リアはこの世界が好きなんだね。」

『…うん。人間・エルフ・竜族・魔人。他にもいっぱいの種族がこの世界にいるの。どの種族もとても良い所がたくさーん合って、リアはみんなが仲良く暮らせる世界を作るのが夢なの。…あっ!?』

 僕の質問に目をキラキラさせて笑顔で答えたリアは、最後まで喋ると顔を赤くさせて口を抑えた。さっきまでは無理して口調を変えていたのかな。年相応のリアの態度に不思議と僕まで笑顔になる。この世界に来て初めて心から笑った気がする。

「大丈夫だよ。僕がリアが一人前の女神様になるお手伝いをするよ。僕は何をすれば良いの?」

『ありがとうございます。涼様は冒険者として自由に世界を旅して下さい。そして、スキルを使って人々に新しい概念を植え付けて下さい。』

 口調を戻したリアが僕から離れて丁寧にお辞儀をする。

「難しそうだね。」

『簡単です。それに涼様は既に行っています。グレイ様にラーメンを与えましたよね。これと似たことをして下さい。』

 良かった。想像より簡単だ。確かにグレイはラーメンに凄い感動していた。この世界の食文化は遅れている。イヤ、食文化だけではないよね。僕はこの世界の服装を思い出す。フトールは全身が金色の服。ヨクゥバは赤のドレスで、フリルや飾りは何も付いていない。化粧が厚いのにドレスはシンプルで、印象に残っていた。

 そして良く良く見ると、リアの服もシンプルだ。白いワンピースを着ていた。リアぐらいの年の子なら、オシャレに興味あるよね。顔がカワイイので少し勿体(もったい)ない。

 そんな風にリアを見詰めていると、何を思ったのかリアが僕の頬にキスをした。僕は驚いて後ずさる。

『あの、これはお礼です。魔力の上昇と、他国でも困らないように、言語の読み書きのスキルを与えました。まだ、未熟者なのでこの位しかお手伝いが出来ないけど、この世界の事よろしくお願いします。』

 リアが顔を赤く染めてペコリとお辞儀をする。その直後、頭が突然痛くなり僕はその場に倒れた。
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