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1章
薬いらず
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今僕は、ヤナと一緒に商店が立ち並ぶ通りに出ていた。
護衛も兼ねて買い物の荷物持ちだ。
ヤナは機嫌よく通りを練り歩く。
「お!ヤナちゃん。ご機嫌だねぇ」
「シャリの実食べるかい?」
店番の人たちが口々にヤナに声をかける。
それを上手くはぐらかす彼女の手腕もなかなかのものだ。
「ヤナは人気者だね」
「そんなことないですよ。社交辞令です」
何ともしっかりした娘さんだこと。
僕たちは暫く歩き、目的の店に到着する。
品ぞろえは……よく分からない。
雑草のようなものが吊るされているし、赤い木の実が液体に漬けられているのもある。
食べ物でも売っているのかな?と思ったら、ゲームの中の治癒魔法薬と同じ入れ物を見つけた。
一体何屋なのか。
「パネアさーん。今月の分貰いに来ましたー」
「おやおや、お使いご苦労様。ハイこれ今月分だよ」
ヤナが手渡されたのは小さな包みにくるまれた何か。
それを大事そうに受け取ると、代金を手渡して店を後にした。
外に出ると荷物持ちとしてそれを受け取る。
「これなんだい?」
「お母さんのお薬なんです。定期的に飲まないといけないので……」
なんと。あの元気なお母さんがまさかの持病もちとは。
驚きながらも渡された包みをしっかりと手に持った。
それから野菜やパンなどの食材を数種買い込み、宿に帰ってきた。
「お母さーん!お薬貰って来たよ!」
包みを手渡すとお母さんは中身を確認する。
「ありがとうね、ヤナ。うん、いつも通り」
僕は何となしに魔法を発動した。
『情報探索』
対象の状態異常、強さなんかを数値化してみることが出来る魔法だ。
これならばお母さんの病気が何かわかるかもしれない。
僕は絶句した。
彼女の状態異常の欄には……
「毒……?」
そう毒だ。
『不治の病』とか、『死者の呪い』とか、そういったものではない。
唯の毒。
ならば簡単に直せるんじゃないのか?
「ガロンさん!どうしてわかったんですか!?」
驚くのはヤナ。
でもそれにかまう前に試さなくてはいけない。
「女将さん、ちょっといいですか?」
ヤナの母親を呼び寄せると、『解毒』の魔法を発動する。
手のひらから『治癒』の時と同じ黄緑の光が出たので、その光を彼女の体に浴びせてみる。
同時進行で発動していた『情報探索』を確認すると、状態異常のところにあった毒が消えていた。
どうやら治療は成功したようだ。
「多分……だけど治ったんじゃないかな」
自分でも、なんて曖昧な言い方だ、とは思うけど、実際治ったかどうかは経過を見るしかない。
「ほ……本当ですか!?」
「命に危険がないのならば、薬を飲まずに少し様子を見て貰いたいんですが……」
その言葉にヤナの母親は頷き、お礼を述べてきた。
ヤナからは尊敬の眼差しっぽいものが向けられる。
それに照れながら僕は自室に戻った。
護衛も兼ねて買い物の荷物持ちだ。
ヤナは機嫌よく通りを練り歩く。
「お!ヤナちゃん。ご機嫌だねぇ」
「シャリの実食べるかい?」
店番の人たちが口々にヤナに声をかける。
それを上手くはぐらかす彼女の手腕もなかなかのものだ。
「ヤナは人気者だね」
「そんなことないですよ。社交辞令です」
何ともしっかりした娘さんだこと。
僕たちは暫く歩き、目的の店に到着する。
品ぞろえは……よく分からない。
雑草のようなものが吊るされているし、赤い木の実が液体に漬けられているのもある。
食べ物でも売っているのかな?と思ったら、ゲームの中の治癒魔法薬と同じ入れ物を見つけた。
一体何屋なのか。
「パネアさーん。今月の分貰いに来ましたー」
「おやおや、お使いご苦労様。ハイこれ今月分だよ」
ヤナが手渡されたのは小さな包みにくるまれた何か。
それを大事そうに受け取ると、代金を手渡して店を後にした。
外に出ると荷物持ちとしてそれを受け取る。
「これなんだい?」
「お母さんのお薬なんです。定期的に飲まないといけないので……」
なんと。あの元気なお母さんがまさかの持病もちとは。
驚きながらも渡された包みをしっかりと手に持った。
それから野菜やパンなどの食材を数種買い込み、宿に帰ってきた。
「お母さーん!お薬貰って来たよ!」
包みを手渡すとお母さんは中身を確認する。
「ありがとうね、ヤナ。うん、いつも通り」
僕は何となしに魔法を発動した。
『情報探索』
対象の状態異常、強さなんかを数値化してみることが出来る魔法だ。
これならばお母さんの病気が何かわかるかもしれない。
僕は絶句した。
彼女の状態異常の欄には……
「毒……?」
そう毒だ。
『不治の病』とか、『死者の呪い』とか、そういったものではない。
唯の毒。
ならば簡単に直せるんじゃないのか?
「ガロンさん!どうしてわかったんですか!?」
驚くのはヤナ。
でもそれにかまう前に試さなくてはいけない。
「女将さん、ちょっといいですか?」
ヤナの母親を呼び寄せると、『解毒』の魔法を発動する。
手のひらから『治癒』の時と同じ黄緑の光が出たので、その光を彼女の体に浴びせてみる。
同時進行で発動していた『情報探索』を確認すると、状態異常のところにあった毒が消えていた。
どうやら治療は成功したようだ。
「多分……だけど治ったんじゃないかな」
自分でも、なんて曖昧な言い方だ、とは思うけど、実際治ったかどうかは経過を見るしかない。
「ほ……本当ですか!?」
「命に危険がないのならば、薬を飲まずに少し様子を見て貰いたいんですが……」
その言葉にヤナの母親は頷き、お礼を述べてきた。
ヤナからは尊敬の眼差しっぽいものが向けられる。
それに照れながら僕は自室に戻った。
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