正義の味方!

菅原

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1章 

レジェンド・ストーリーズ・オンライン

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 夏の蒸し暑い夜。
僕はクーラーの効いた涼しい部屋で、PCに向かっていた。
時刻は既に深夜二時を過ぎ、動物も寝静まっている時間だ。
明日は日曜日。
仕事も休みで一番気持ちがたかぶる時間帯でもある。
 今年で28にもなるが、相変わらず彼女もいなければ友達といえる友人もいない。
僕より後に入ってきた後輩は、この間出世して上司になった。今では僕にため口だ。
 そんな冴えない僕が、オンラインゲームに夢中になるのは必然といえるだろう。

 レジェンド・ストーリーズ・オンライン。通称LSO

 ゲームの中に入って、まるで自分がそこにいるかのようにプレイできるオンラインゲーム。一時期巷を騒がせていたVRMMORPG。その中のいちタイトルだ。
大手ゲームメーカーが作ったわけでもなく、大体的に流行ったわけでもない。
というか……むしろ『クソゲー』認定までされている。
全プレイユーザー数500にも満たない小規模のオンラインゲームだ。
 
 このゲームは、プレイヤーがいくつかの職業から一つ選び、更に与えられる『スキルポイント』を割り振ることで、個性を出すことが出来るのを売りにしている。
 プレイヤーはモンスターを狩り、レベルを上げることでスキルポイントを得る。
最終的にプレイヤーに与えられるスキルポイントは100。
そしてスキルの最大レベルも100である。
つまり、単体回復スキルの『治癒ヒール』をレベル100にする、なんてことも可能なのだ。
当然スキルの中から取捨選択して、適度に強化するのがいいのだが、一つのスキルをレベル100まで振るのも、感じがして楽しい。

 LSOがクソゲーとされる理由は、ユーザーによる悪質行為の為だ。
このゲームにはプレイヤー同士が戦うシステム(PvP)があり、更にプレイヤーは『ギルド』と呼ばれるチームを組むことで、ギルド同士でも戦うこと(GvG)が出来るようになっている。
そのGvGを本気でプレイする、所謂いわゆる『ガチ勢』が諸悪の根源だった。
 このゲームは、スキルレベルの仕様のため、メンバー一人当たりの戦力が馬鹿にならない。
新規メンバーが一人増えて、そのキャラクターが強いスキルを50ないし100振るだけで、彼我の戦力が大きく入れ替わってしまう程だ。
 その為、ガチ勢プレイヤーは新規プレイヤーを見つけると、ライバルギルドにとられないようにと『ルーキー狩り』を始めたのだ。
なぜ勧誘という方法を取らないのかは正直分からない。
決まった仲間内で盛り上がっているとかだろうか?
 このゲームを面白そうと思って始めたプレイヤーは、何も知らぬまま、開始数分で他のプレイヤーにタコ殴りにされるのである。
キャラクターが死んだらセーブポイントに戻るのだが、その場所でも待ち伏せをするため、モンスターと戦えずレベルも上がらない。
 こんなことをしてはユーザーも増えるわけがないだろう。

 そんなクソゲーのレビューを見て僕が見つけた楽しみ。
それは……正義の味方だ。
 新しく始めるプレイヤーをルーキー狩りから守る。
ただそれだけを目的に僕は、自分のキャラクターを作った。
僕のキャラクターは、どんな状況でも対応できるようにと、色眼鏡で作った結果、レベル1のスキルを100種類取るという、究極の器用貧乏となってしまった。
このキャラクターを作り上げるために多くの時間と気力が必要だったのは言うまでもない。

 楽しみ方が違うなんて当然知っている。唯の自己満足だって事も知っているさ。誰かに頼まれたわけじゃないしね。

それでも僕は……ゲームの中だけでも、頼られる存在でいたかったんだ……
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