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ミーティアと別れたシウバリスは、東へ向かう乗り合い馬車に揺られていた。特別目的地を定めていたわけではない。ただ町に居続けるのは気まずく感じてしまったのだ。町に蔓延る傭兵が与すた大本に喧嘩を売り、加えて貴族の知り合いにも借りを作ってしまった。全ての柵を清算出来たのならそれが最上だったが、なんとも顔を会わせ辛い関係性であった為にばっくれたのだった。
町を発ってから半日もすると、馬車は以前彼が白銀狼と戦った農村に止まった。幌延の外から賑やかな子供の声が聞こえる。
(ここは確か……)
シウバリスは特に深い考えもなく馬車を降りた。農村がいかに寂れていようとも、宿屋くらいはあるだろうという考えはあったし、最悪一、二泊野宿をする程度の貯えはあったから気軽なものだ。
「まいどあり」
御者に代金を渡し、走り去る馬車を見送る。そうしていると背後から賑やかな声がかかった。
「あー! 狼退治のおじさんだー!」
「でっけー盾!!」
「かっけー!!
わらわらと子供らがシウバリスに集まる。その中心で、彼は困った表情を浮かべていた。彼は子供が苦手だ。彼の得意とする威圧の危機が鈍く、すぐに人懐こく寄ってくる。ひどい場合は言葉も通じない時がある。一人を求める彼にとって、何とも厄介な存在だ。
(くっ、殴り倒していくわけにもいかん)
そんなことはもっての外。シウバリスが身動きできぬ間に、見覚えのある老人が近寄ってきた。
「ようこそいらっしゃいました、傭兵様。以前は大変お世話になりまして……今回は旅行か何かですか?」
声の主はこの村の長、ノインだった。彼はシウバリスの様子を見るや否や、子供たちを追い払っていく。漸く身動きが効く様になったシウバリスは、ノインへ向き直った。
「すまない。宛の無い旅のつもりだったが……」
シウバリスは散り行く子供らに向かって一度だけ手を振ると、少々思案した。言葉を待つ村長。やがてシウバリスは口を開く。
「そうだな。森の中を一画貸してもらいたいのだが、よろしいだろうか?」
「森の中……ですか?」
「ああ」
ノインが困惑するのも当然の話だった。シウバリスにとって森の土地を借りることが一体何の役に立つのか。それが分からなかった。
「それは問題ありませんが、一体どうするおつもりで?」
「一人で暮らしてみようと思ってな」
理由を聞いてもノインの困惑は晴れない。
「お、お一人でですか……我が村にも空き家はございますが……」
「すまないが私は人付き合いが苦手でね。何、迷惑をかけるつもりはない。私が出向いたときに時々なにか取引してくれるだけでいい」
もともと不思議な人だと感じていたノインだったが、ここにきてもやはりその印象は変わらない様だ。また多少の提案等意味がないと察し、シウバリスの要求を呑むことに決める。
「……わかりました。お好きな場所をご自由にお使いください。助力は惜しみませぬ故、何かあればいつでも声をかけてくださいね」
「感謝する」
シウバリスは礼を言うと、群がる村人らに殆ど対応もせず、一人森へ向かって歩き出した。
がさがさと草木をかき分け森を進む。全ては行き当たりばったりの思い付きで始まったことだったが、さてどうしたものかと思考を張り巡らせた。
(人が暮らすにはまず飲み水の確保が先決だな……次に食料。そして雨風を凌げる場所か……)
そう考えた矢先、彼は以前この森を訪れた際に見た場所の中で、都合の良い場所を思い出した。
「そうだ。あそこがいい」
頻りに辺りを見渡し目的地を割り出す。そして爪先を其方へと向けた。そのまま歩くこと暫く、彼は以前白狼の群れと戦った小川の付近に辿り着いた。
鬱蒼とした森の中、彼が知る中で唯一と言ってもよい空が仰げる地点だ。流れる川は相変わらず清らかで、魚の姿しっかりとも見える。
「これで飲み水と食料は大丈夫だな」
恵み豊かな森でよかったと、シウバリスは心底思った。例え川で魚が見つからなかったとしても、道中で果物や食べられる野草の類は多種見つかったから何も問題ない。あとは雨風をしのげる場所を作らなければならない。シウバリスは改めて周囲を見渡す。
「……こじんまりとした洞窟でもあると楽なんだがな」
洞窟があれば多くの過程を飛ばすことが出来る。だが当然そんな都合の良い場所が都合よく見つかるわけがない。シウバリスが把握している限り森の中は概ね平坦で、岩場山場と呼べる所は見当たらない。また、折角見つけた水場から離れるのも少々勿体ない気がした。
「可能なら近場に作りたいところだが……ふむ、そうだな……」
シウバリスは川の畔に荷物を下ろすと、徐に腰の剣を引き抜く。それから川の最も近くに立つ大木目掛けて剣を振り下ろした。
ザシッ! ザクッ! ザクッ!
剣で切り付ける度、木の傷が広がっていく。剣の質が悪いせいか思った以上に時間がかかる。何度か繰り返し振り続けて要約、大木は切り倒されることになった。
「ふぅ、ふぅ……さすがに剣では勝手が違うか」
額に浮かぶ汗を腕で拭う。それから倒れた立木に近寄ると、片っ端から枝を切り落としていく。
(まずは道具が必要だな)
このまま剣で切り続けても良いのだが、もし剣が駄目になっては有事の際に身を守れない。ここは、恵み豊かな森であると同時に、野生生物が跋扈する危険な森でもあるのだ。剣の消耗は最低限に留めなければ、これからの生活が危ぶまれる。ならば木を伐るには伐る用の道具が必要だ。木に巻き付いていた蔦を剣で断ち切り引き抜く。続いて川岸から形の良い石を探しだすと、それを別の石に打ち付け形を整え始めた。子気味の良い音が周囲に響く。やがて出来上がったお手製の斧刃を、蔦で柄となる棒に括り付けた。
「見よう見まねで作ってみたが……ふふっ、不格好だがなかなかいいじゃないか」
シウバリスは以前目にしたことのある斧と自作した斧を頭の中で比べては苦笑を漏らす。片手で振り回せるくらいの大きさの手斧。何度かそれを振り回し感触を確かめると、肩に担いで次なる立木へと向かった。
石斧が出来てからは只管に木を切り倒した。川に近い方から順々に。おかげで一角は切り株だらけになってしまったが、それと同数の丸太を手に入れることも出来た。切り倒した丸太は端の方に集め、この日の作業は終了。続いて野営の準備を始める。石斧を作る要領で、より長い棒に尖った小石を括り付け、簡易的な槍を作る。シウバリスはそれを持ったまま川の中に入り、魚目掛けて突き立てた。一突き目、外れ。二突き目、外れ。
「これはなかなか難しい」
作りが荒いせいか、槍を初めて使ったせいか、どうも目算と外れた個所に槍が突き刺さる。それでも三突き目で漸く槍が魚を貫いた。
「良し良し。今日はこれと果物でよさそうだな」
シウバリスはそれから更に魚を一匹捉えると、川から上がり森の中へと入っていった。
果物を幾つか取ってきたシウバリスは、次に伐採の際に出来た木の枝をかき集める。
「薪にするには瑞々し過ぎるが……枯れ木を集めれば何とかなるだろう」
切り株を椅子代わりに、程よい距離に枝を積み重ねた。生木だけでは燃えにくかろうと、続いて森へ枯れ木を集めに行く。そうこうして全ての準備が整う頃には、辺りはすっかり暗くなってしまっていた。
ばちばちと火が弾ける音がする。焚火の前には木の枝に突き刺した魚が立てかけられ、夜風に乗って川魚の独特な匂いが漂ってくる。魚が焼けるまでの間、口寂しさに果物を口に放り込んだ。甘い物、酸っぱい物、香りの強い物。どれもこれも空きっ腹には良く刺さる。やがて焼き上がる焼き魚。焦げと煤で少々黒くなってはいるが、初めてにしては良く出来たものだとシウバリスは自賛した。
「これまでは携帯食のみだったからな……これからの為に慣れねばならんな」
とりあえず魚に齧り付く。さっぱりとした油が滴り、香りが鼻孔をくすぐる。口内には魚が持つ自然の味が広がり、一切調味していないその味にシウバリスは少々物足りなさを感じた。
「焼き加減は中々だが、少し味付けが欲しいな。調味料の類は流石に村と取引せねばならないか? っ! ……ふふふ、いけないな。人がいないとなった途端独り言ばかりだ」
一匹目を平らげたシウバリスは、二匹目に手を伸ばす。二匹目の魚は少々焼き過ぎたようでぱさぱさとした触感だ。シウバリスは堪らず香りが強い香草を齧る。口の中に広がる若干の酸味。組み合わせは悪くない。
夕食を取り終えたシウバリスは、次に寝床の準備を始めた。とはいっても、もともと野営をするつもりで荷物は準備していたから物資には問題ない。荷物から丸まった布の塊を引っ張り出し羽織る。それから切り株を背もたれに地面に座り、目を閉じた。そこでふと気づく。
(これを使えばもっと快適になるんじゃないか?)
これとはそこらに残っている切り株の事だ。シウバリスは幾つかある切り株を一つずつ確認し、丁度良い二つを見繕う。それから薪に使っていた余りの木の枝の中から、自身の背丈を超える長さを持ち、出来るだけ真っすぐな物を選びだす。多少不揃いはあったが必要数を見つけた後、高さの合う二つの切り株に渡した。落ちないように蔦で軽く補強を加える。最後にその上に羽織っていた布を敷くと……
「酷く簡素だが地べたに座るよりはましだろう」
拙いながら寝台が出来上がった。シウバリスは軋む寝台に横になると、もう一枚の布を被って目を瞑る。熟睡はしない。眠る前に聞こえていた音とは違う音が聞こえた時、即座に対応できるように、浅い眠りについている状態だ。しっかりとした睡眠がとれないと疲れも取れないが……野営に成れている彼にとっては、数日程度なら大して問題はない。こうして、森での一日目は終了した。
町を発ってから半日もすると、馬車は以前彼が白銀狼と戦った農村に止まった。幌延の外から賑やかな子供の声が聞こえる。
(ここは確か……)
シウバリスは特に深い考えもなく馬車を降りた。農村がいかに寂れていようとも、宿屋くらいはあるだろうという考えはあったし、最悪一、二泊野宿をする程度の貯えはあったから気軽なものだ。
「まいどあり」
御者に代金を渡し、走り去る馬車を見送る。そうしていると背後から賑やかな声がかかった。
「あー! 狼退治のおじさんだー!」
「でっけー盾!!」
「かっけー!!
わらわらと子供らがシウバリスに集まる。その中心で、彼は困った表情を浮かべていた。彼は子供が苦手だ。彼の得意とする威圧の危機が鈍く、すぐに人懐こく寄ってくる。ひどい場合は言葉も通じない時がある。一人を求める彼にとって、何とも厄介な存在だ。
(くっ、殴り倒していくわけにもいかん)
そんなことはもっての外。シウバリスが身動きできぬ間に、見覚えのある老人が近寄ってきた。
「ようこそいらっしゃいました、傭兵様。以前は大変お世話になりまして……今回は旅行か何かですか?」
声の主はこの村の長、ノインだった。彼はシウバリスの様子を見るや否や、子供たちを追い払っていく。漸く身動きが効く様になったシウバリスは、ノインへ向き直った。
「すまない。宛の無い旅のつもりだったが……」
シウバリスは散り行く子供らに向かって一度だけ手を振ると、少々思案した。言葉を待つ村長。やがてシウバリスは口を開く。
「そうだな。森の中を一画貸してもらいたいのだが、よろしいだろうか?」
「森の中……ですか?」
「ああ」
ノインが困惑するのも当然の話だった。シウバリスにとって森の土地を借りることが一体何の役に立つのか。それが分からなかった。
「それは問題ありませんが、一体どうするおつもりで?」
「一人で暮らしてみようと思ってな」
理由を聞いてもノインの困惑は晴れない。
「お、お一人でですか……我が村にも空き家はございますが……」
「すまないが私は人付き合いが苦手でね。何、迷惑をかけるつもりはない。私が出向いたときに時々なにか取引してくれるだけでいい」
もともと不思議な人だと感じていたノインだったが、ここにきてもやはりその印象は変わらない様だ。また多少の提案等意味がないと察し、シウバリスの要求を呑むことに決める。
「……わかりました。お好きな場所をご自由にお使いください。助力は惜しみませぬ故、何かあればいつでも声をかけてくださいね」
「感謝する」
シウバリスは礼を言うと、群がる村人らに殆ど対応もせず、一人森へ向かって歩き出した。
がさがさと草木をかき分け森を進む。全ては行き当たりばったりの思い付きで始まったことだったが、さてどうしたものかと思考を張り巡らせた。
(人が暮らすにはまず飲み水の確保が先決だな……次に食料。そして雨風を凌げる場所か……)
そう考えた矢先、彼は以前この森を訪れた際に見た場所の中で、都合の良い場所を思い出した。
「そうだ。あそこがいい」
頻りに辺りを見渡し目的地を割り出す。そして爪先を其方へと向けた。そのまま歩くこと暫く、彼は以前白狼の群れと戦った小川の付近に辿り着いた。
鬱蒼とした森の中、彼が知る中で唯一と言ってもよい空が仰げる地点だ。流れる川は相変わらず清らかで、魚の姿しっかりとも見える。
「これで飲み水と食料は大丈夫だな」
恵み豊かな森でよかったと、シウバリスは心底思った。例え川で魚が見つからなかったとしても、道中で果物や食べられる野草の類は多種見つかったから何も問題ない。あとは雨風をしのげる場所を作らなければならない。シウバリスは改めて周囲を見渡す。
「……こじんまりとした洞窟でもあると楽なんだがな」
洞窟があれば多くの過程を飛ばすことが出来る。だが当然そんな都合の良い場所が都合よく見つかるわけがない。シウバリスが把握している限り森の中は概ね平坦で、岩場山場と呼べる所は見当たらない。また、折角見つけた水場から離れるのも少々勿体ない気がした。
「可能なら近場に作りたいところだが……ふむ、そうだな……」
シウバリスは川の畔に荷物を下ろすと、徐に腰の剣を引き抜く。それから川の最も近くに立つ大木目掛けて剣を振り下ろした。
ザシッ! ザクッ! ザクッ!
剣で切り付ける度、木の傷が広がっていく。剣の質が悪いせいか思った以上に時間がかかる。何度か繰り返し振り続けて要約、大木は切り倒されることになった。
「ふぅ、ふぅ……さすがに剣では勝手が違うか」
額に浮かぶ汗を腕で拭う。それから倒れた立木に近寄ると、片っ端から枝を切り落としていく。
(まずは道具が必要だな)
このまま剣で切り続けても良いのだが、もし剣が駄目になっては有事の際に身を守れない。ここは、恵み豊かな森であると同時に、野生生物が跋扈する危険な森でもあるのだ。剣の消耗は最低限に留めなければ、これからの生活が危ぶまれる。ならば木を伐るには伐る用の道具が必要だ。木に巻き付いていた蔦を剣で断ち切り引き抜く。続いて川岸から形の良い石を探しだすと、それを別の石に打ち付け形を整え始めた。子気味の良い音が周囲に響く。やがて出来上がったお手製の斧刃を、蔦で柄となる棒に括り付けた。
「見よう見まねで作ってみたが……ふふっ、不格好だがなかなかいいじゃないか」
シウバリスは以前目にしたことのある斧と自作した斧を頭の中で比べては苦笑を漏らす。片手で振り回せるくらいの大きさの手斧。何度かそれを振り回し感触を確かめると、肩に担いで次なる立木へと向かった。
石斧が出来てからは只管に木を切り倒した。川に近い方から順々に。おかげで一角は切り株だらけになってしまったが、それと同数の丸太を手に入れることも出来た。切り倒した丸太は端の方に集め、この日の作業は終了。続いて野営の準備を始める。石斧を作る要領で、より長い棒に尖った小石を括り付け、簡易的な槍を作る。シウバリスはそれを持ったまま川の中に入り、魚目掛けて突き立てた。一突き目、外れ。二突き目、外れ。
「これはなかなか難しい」
作りが荒いせいか、槍を初めて使ったせいか、どうも目算と外れた個所に槍が突き刺さる。それでも三突き目で漸く槍が魚を貫いた。
「良し良し。今日はこれと果物でよさそうだな」
シウバリスはそれから更に魚を一匹捉えると、川から上がり森の中へと入っていった。
果物を幾つか取ってきたシウバリスは、次に伐採の際に出来た木の枝をかき集める。
「薪にするには瑞々し過ぎるが……枯れ木を集めれば何とかなるだろう」
切り株を椅子代わりに、程よい距離に枝を積み重ねた。生木だけでは燃えにくかろうと、続いて森へ枯れ木を集めに行く。そうこうして全ての準備が整う頃には、辺りはすっかり暗くなってしまっていた。
ばちばちと火が弾ける音がする。焚火の前には木の枝に突き刺した魚が立てかけられ、夜風に乗って川魚の独特な匂いが漂ってくる。魚が焼けるまでの間、口寂しさに果物を口に放り込んだ。甘い物、酸っぱい物、香りの強い物。どれもこれも空きっ腹には良く刺さる。やがて焼き上がる焼き魚。焦げと煤で少々黒くなってはいるが、初めてにしては良く出来たものだとシウバリスは自賛した。
「これまでは携帯食のみだったからな……これからの為に慣れねばならんな」
とりあえず魚に齧り付く。さっぱりとした油が滴り、香りが鼻孔をくすぐる。口内には魚が持つ自然の味が広がり、一切調味していないその味にシウバリスは少々物足りなさを感じた。
「焼き加減は中々だが、少し味付けが欲しいな。調味料の類は流石に村と取引せねばならないか? っ! ……ふふふ、いけないな。人がいないとなった途端独り言ばかりだ」
一匹目を平らげたシウバリスは、二匹目に手を伸ばす。二匹目の魚は少々焼き過ぎたようでぱさぱさとした触感だ。シウバリスは堪らず香りが強い香草を齧る。口の中に広がる若干の酸味。組み合わせは悪くない。
夕食を取り終えたシウバリスは、次に寝床の準備を始めた。とはいっても、もともと野営をするつもりで荷物は準備していたから物資には問題ない。荷物から丸まった布の塊を引っ張り出し羽織る。それから切り株を背もたれに地面に座り、目を閉じた。そこでふと気づく。
(これを使えばもっと快適になるんじゃないか?)
これとはそこらに残っている切り株の事だ。シウバリスは幾つかある切り株を一つずつ確認し、丁度良い二つを見繕う。それから薪に使っていた余りの木の枝の中から、自身の背丈を超える長さを持ち、出来るだけ真っすぐな物を選びだす。多少不揃いはあったが必要数を見つけた後、高さの合う二つの切り株に渡した。落ちないように蔦で軽く補強を加える。最後にその上に羽織っていた布を敷くと……
「酷く簡素だが地べたに座るよりはましだろう」
拙いながら寝台が出来上がった。シウバリスは軋む寝台に横になると、もう一枚の布を被って目を瞑る。熟睡はしない。眠る前に聞こえていた音とは違う音が聞こえた時、即座に対応できるように、浅い眠りについている状態だ。しっかりとした睡眠がとれないと疲れも取れないが……野営に成れている彼にとっては、数日程度なら大して問題はない。こうして、森での一日目は終了した。
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