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誘い
義賊
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一時は殺気だっていた部屋だが、今では落ち着きを取り戻しつつある。
それどころか各員の前には酒の入ったグラスやカップが幾つも置かれ、ちょっとした酒盛りが始まっていた。
「がははは! 新たな仲間に乾杯!!」
「いやぁ、俺は見ていたぞ! あいつの戦いっぷりを。あいつはすごい奴だ!」
男たちが一つ笑うたびにグラスが空になり、一つ会話が飛ぶたびにカップが机に叩きつけられる。
その様子を見て、ラインハルトは深いため息をついた。
「……なんだ、これは……」
ラインハルトの困惑に気付く者はいない。唯一人、彼らの棟梁を除いては。
少女は果実水の入ったグラスをもって、ラインハルトの肩を叩いた。
「どう? 楽しんでる?」
するとラインハルトは、手に持ったカップを持ち上げ、苦笑いをして見せる。
「ぼちぼち、な……それよりもだ、まだ聞きたいことが幾つかあるんだが……」
「そう、じゃあ場所を変えましょう? ここじゃちょっと騒がしすぎるわ」
少女は周囲の男たちを見渡してそういった。そしてまたもや返事を待たずに、さっさと部屋から出て行ってしまう。
男たちは程よく酒が入り、それぞれ談笑に花を咲かせている。既に酒盛りも架橋に入り、少女が席を外しても誰も気づかない。それもどうかとラインハルトは思ったが、この館は彼らの拠点なのだから安心しきっているのだろう、と理由をつけ、自らも席を立った。
少女は廊下を先行する。方角は玄関の方へ。その長い廊下の半ば辺りで止まると、少女は付近にある戸を開いた。
「ようこそ慈愛の女神の間へ」
「慈愛の女神?」
少女の後を追っていたラインハルトは戸に備え付けられた表札を見た。
「ロ……リエ……」
年季の入った表札はボロボロで、字は掠れ、読むことも難しい。
ラインハルトが表札の解析に時間がかかっていると、少女が横から口を挟む。
「ローゼリエッタ。いくつかの古代書物に記された、慈愛の女神の名よ」
「ほほう、博学だな」
ラインハルトは素直に感心した。彼は信心深くも無ければその手の話に興味すら示さない。また本を読む趣味も持ち合わせていない為、その女神の名前すら聞いたことが無かった。だが翻して考えれば、この少女はその手の話に興味を持ち、本を読む趣味があるということになる。彼が知る限りそんな人間は兵士の中には居らず、教会の牧師や魔法使いといった頭の良い者達の中だけに留まる。とてもではないが、盗賊が身に着ける知識としては身に余る物だと彼は感じた。
「ま、その辺りの話も含めて、中で話しましょう」
ラインハルトのそんな心情など気にもせず、少女はそういって部屋の中に入っていく。
その部屋は不思議な場所だった。
品の良い調度品。見たことも無い器具たち。ラインハルトにはそれらがどんな用途で使うのか見当もつかない。
少女は部屋の中にある丸い机に近づくと、椅子の一つに腰かけた。
「さぁ、どうぞ」
少女は真正面にある空席を指し示す。それに習って、ラインハルトも腰かけた。
部屋の中は静かだ。遠方でやっている筈の酒盛りの音も聞こえない。部屋に響くのは大きな柱時計が時を刻む音ばかり。その音が二十もなる頃、ラインハルトが口火を切った。
「いい館だな」
「そうでしょう? 私たちの自慢の家よ」
「盗賊にはもったいないな」
「盗賊じゃないわ。義賊よ」
「義賊……ねぇ」
片方は同等と胸を張り、片方はため息をついて頬杖を付く。
改めて質問を投げかけようとして、ラインハルトは少女の名まだ聞いていないことを思い出した。
「お前は……ん? そういえばまだ名前を聞いていなかったな」
「ああ、そういえばそうね。私の名前は‶エリス・アンシエラ”。好きに呼んでくれて構わないわ、ラインハルトさん」
アンシエラという聞いたことも無い家名に、ラインハルトは首をかしげる。
(少なくとも皇国周辺では聞いたことのないものだ。生まれは何処か遠くなのだろうか?)
そんな疑問が浮かんだが、現状では些細な疑問と割り切って話を進める。
「分かった。それでエリスは何者なんだ? 唯の賊にしては少々上品すぎる気がするが……」
ラインハルトはエリスが『お嬢』と呼ばれていたことを思い出していた。
「えぇ、全て話すわ。そうしいと貴方の信用は得られそうにないもの」
そう言って少女は語り始める。
少女は部屋の中を見渡した。
「先ずはこの館の説明からするわね。この館は私の家系……アンシエラ家に伝わる書物に記された、古い地図を頼りに見つけたの。ここに来る最中の迷路も、その地図のおかげで突破出来たわ。尤も、解読できたのはこの館の場所だけで、他に細かいことは何も分かっていないんだけど」
「こんな立派な館を、こんな場所に作ったんだ。エリスの先祖様はさぞ御立派な貴族様だったのだろうな」
これだけの屋敷、皇国でもそう多くは見かけない。ましてや中にある調度品は埃こそ被ってはいるが、素晴らしい細工品ばかりだ。これだけの物を集めようとすれば、相当な資金が必要となるだろう。また、幻想的な洞窟内に建造する手間暇も考えれば、とても一般人の成せる仕事ではない。
だが少女の言葉は、ラインハルトの予想を裏切った。
「いえ、先祖様は貴族じゃなくて傀儡師だったと聞くわ」
「傀儡師?」
「えぇ、人形を糸で操る技術を持った人たちだったらしいわ。ま、遥か昔にその技術は失われてしまったらしいけれども。何に使うかわからないけども、あれも、あれも、これも……全部人形を作るための道具らしいわよ」
エリスはそういって、断頭台のような物や、湾曲した机を指さした。
「なんと……あれは拷問器具の一種ではないのか?」
ラインハルトの素直な驚きに、エリスは声を上げて笑った。
酒盛りが盛り上がっているのか、遠くから笑い声が聞こえてきた。
そんな中、話は義賊団の生い立ちに差し掛かる。
「私たちは皆、スレイン君と同じで貧困に苦しんできたの。両親が病や戦争で死に、今日食べる物も無い。助けてくれる人だっていなくて、中には窃盗に手を染める者もいたわ。そうやって、私たちは苦しんできた。だから私たちは、同じ境遇にある子供らを一人でも多く救いたいと願ったの。でもどれだけ崇高な志を持とうとも、私たちにできることなんてたかが知れてたわ。当然よね。だって碌な子供時代じゃなかったんだもの。字を読める人なんて一握り。礼儀や常識もほとんど知らない。そんな人間を、どこが雇ってくれるかしらね」
「だがスレインは……」
仕事に就けた、と続けようとして、エリスに遮られる。
「あの子は運が良かったのよ。貴方が現れたから。でも私たち……いえ、彼らに救いは現れなかった。だから私たちは、お金持ちから盗むことにしたの。最初は手頃な仕事だったわ。安全な皇国に浸った金満貴族たちは、盗まれるなんて思ってないからちゃんとした警備もつけてなかった。でも数を熟すうちに警備が厳重になり、いよいよ私たちの手に余るようになったわ。何故なら、戦争が終わって、剣を握る機会が殆ど無かった私たちには、戦う力が伴わない」
「だから俺を勧誘しようとしたと」
「えぇ、あの時スレイン君を助けた貴方なら、私たちの思いに賛同してくれると思ったのよ」
エリスは小さく息を吐きだすと、まっすぐにラインハルトを見つめた。
ラインハルトは悩んだ。今はどうかわからないが、彼は以前、確かに皇国の兵士であった。その兵士が、人を助けるためとはいえ盗みを働くことを良しとしていい物か、と。だが少し悩んだところで、彼は思い出す。
(ああ、そういえば俺は、真面目な兵士じゃなかったな)
戦いを求める彼にとって、過程は然程重要ではない。極端な話をすれば、成すことが善行だろうが悪行だろうが、槍をもって戦える場が増えれば彼にとって本望なのだ。ならば皇国の兵士として昼寝にいそしむよりかは、自ら賊に堕ち国に喧嘩を売ったほうが、よっぽど望みをかなえられる。彼はそう思った。
「……まぁ確かに。子供らを救う為に汚名を被るのも吝かではない。というか、誰かさんのせいで既に取り返しはつかないだろうしな」
既に皇国は、ラインハルトを敵とみなしている。それはラインハルトも分かっていた。だからここまで思い切った決断をすることも出来る……だが、兵士としての矜持が全て消え去ったわけでは無かった。
「……しかしだからと言って、無作為に窃盗をする気は更々ない。やるなら生活に困らぬ金持ち、しかも悪党からだ」
いるかどうかも分からぬ輩を持ち出して、そう条件を伝えた。するとエリスは、艶やかな笑みを浮かべこう言う。
「それは安心して。大陸一平和と謳われる皇国と言えども、悪党は必ず居るものよ」
その言葉を最後に、二人の逢瀬はお開きとなった。
両者は席から立ち上がり部屋を出ると、酒盛りに合流する。
ラインハルトはこれまでの鬱憤を晴らすように酒を飲んだ。そして男たちから様々な話を聞いて回った。
不遇な身の上話。ここに至るまでの経緯。そうした愚痴を幾つも聞いているうちに、嵐の夜は更けていく。
それどころか各員の前には酒の入ったグラスやカップが幾つも置かれ、ちょっとした酒盛りが始まっていた。
「がははは! 新たな仲間に乾杯!!」
「いやぁ、俺は見ていたぞ! あいつの戦いっぷりを。あいつはすごい奴だ!」
男たちが一つ笑うたびにグラスが空になり、一つ会話が飛ぶたびにカップが机に叩きつけられる。
その様子を見て、ラインハルトは深いため息をついた。
「……なんだ、これは……」
ラインハルトの困惑に気付く者はいない。唯一人、彼らの棟梁を除いては。
少女は果実水の入ったグラスをもって、ラインハルトの肩を叩いた。
「どう? 楽しんでる?」
するとラインハルトは、手に持ったカップを持ち上げ、苦笑いをして見せる。
「ぼちぼち、な……それよりもだ、まだ聞きたいことが幾つかあるんだが……」
「そう、じゃあ場所を変えましょう? ここじゃちょっと騒がしすぎるわ」
少女は周囲の男たちを見渡してそういった。そしてまたもや返事を待たずに、さっさと部屋から出て行ってしまう。
男たちは程よく酒が入り、それぞれ談笑に花を咲かせている。既に酒盛りも架橋に入り、少女が席を外しても誰も気づかない。それもどうかとラインハルトは思ったが、この館は彼らの拠点なのだから安心しきっているのだろう、と理由をつけ、自らも席を立った。
少女は廊下を先行する。方角は玄関の方へ。その長い廊下の半ば辺りで止まると、少女は付近にある戸を開いた。
「ようこそ慈愛の女神の間へ」
「慈愛の女神?」
少女の後を追っていたラインハルトは戸に備え付けられた表札を見た。
「ロ……リエ……」
年季の入った表札はボロボロで、字は掠れ、読むことも難しい。
ラインハルトが表札の解析に時間がかかっていると、少女が横から口を挟む。
「ローゼリエッタ。いくつかの古代書物に記された、慈愛の女神の名よ」
「ほほう、博学だな」
ラインハルトは素直に感心した。彼は信心深くも無ければその手の話に興味すら示さない。また本を読む趣味も持ち合わせていない為、その女神の名前すら聞いたことが無かった。だが翻して考えれば、この少女はその手の話に興味を持ち、本を読む趣味があるということになる。彼が知る限りそんな人間は兵士の中には居らず、教会の牧師や魔法使いといった頭の良い者達の中だけに留まる。とてもではないが、盗賊が身に着ける知識としては身に余る物だと彼は感じた。
「ま、その辺りの話も含めて、中で話しましょう」
ラインハルトのそんな心情など気にもせず、少女はそういって部屋の中に入っていく。
その部屋は不思議な場所だった。
品の良い調度品。見たことも無い器具たち。ラインハルトにはそれらがどんな用途で使うのか見当もつかない。
少女は部屋の中にある丸い机に近づくと、椅子の一つに腰かけた。
「さぁ、どうぞ」
少女は真正面にある空席を指し示す。それに習って、ラインハルトも腰かけた。
部屋の中は静かだ。遠方でやっている筈の酒盛りの音も聞こえない。部屋に響くのは大きな柱時計が時を刻む音ばかり。その音が二十もなる頃、ラインハルトが口火を切った。
「いい館だな」
「そうでしょう? 私たちの自慢の家よ」
「盗賊にはもったいないな」
「盗賊じゃないわ。義賊よ」
「義賊……ねぇ」
片方は同等と胸を張り、片方はため息をついて頬杖を付く。
改めて質問を投げかけようとして、ラインハルトは少女の名まだ聞いていないことを思い出した。
「お前は……ん? そういえばまだ名前を聞いていなかったな」
「ああ、そういえばそうね。私の名前は‶エリス・アンシエラ”。好きに呼んでくれて構わないわ、ラインハルトさん」
アンシエラという聞いたことも無い家名に、ラインハルトは首をかしげる。
(少なくとも皇国周辺では聞いたことのないものだ。生まれは何処か遠くなのだろうか?)
そんな疑問が浮かんだが、現状では些細な疑問と割り切って話を進める。
「分かった。それでエリスは何者なんだ? 唯の賊にしては少々上品すぎる気がするが……」
ラインハルトはエリスが『お嬢』と呼ばれていたことを思い出していた。
「えぇ、全て話すわ。そうしいと貴方の信用は得られそうにないもの」
そう言って少女は語り始める。
少女は部屋の中を見渡した。
「先ずはこの館の説明からするわね。この館は私の家系……アンシエラ家に伝わる書物に記された、古い地図を頼りに見つけたの。ここに来る最中の迷路も、その地図のおかげで突破出来たわ。尤も、解読できたのはこの館の場所だけで、他に細かいことは何も分かっていないんだけど」
「こんな立派な館を、こんな場所に作ったんだ。エリスの先祖様はさぞ御立派な貴族様だったのだろうな」
これだけの屋敷、皇国でもそう多くは見かけない。ましてや中にある調度品は埃こそ被ってはいるが、素晴らしい細工品ばかりだ。これだけの物を集めようとすれば、相当な資金が必要となるだろう。また、幻想的な洞窟内に建造する手間暇も考えれば、とても一般人の成せる仕事ではない。
だが少女の言葉は、ラインハルトの予想を裏切った。
「いえ、先祖様は貴族じゃなくて傀儡師だったと聞くわ」
「傀儡師?」
「えぇ、人形を糸で操る技術を持った人たちだったらしいわ。ま、遥か昔にその技術は失われてしまったらしいけれども。何に使うかわからないけども、あれも、あれも、これも……全部人形を作るための道具らしいわよ」
エリスはそういって、断頭台のような物や、湾曲した机を指さした。
「なんと……あれは拷問器具の一種ではないのか?」
ラインハルトの素直な驚きに、エリスは声を上げて笑った。
酒盛りが盛り上がっているのか、遠くから笑い声が聞こえてきた。
そんな中、話は義賊団の生い立ちに差し掛かる。
「私たちは皆、スレイン君と同じで貧困に苦しんできたの。両親が病や戦争で死に、今日食べる物も無い。助けてくれる人だっていなくて、中には窃盗に手を染める者もいたわ。そうやって、私たちは苦しんできた。だから私たちは、同じ境遇にある子供らを一人でも多く救いたいと願ったの。でもどれだけ崇高な志を持とうとも、私たちにできることなんてたかが知れてたわ。当然よね。だって碌な子供時代じゃなかったんだもの。字を読める人なんて一握り。礼儀や常識もほとんど知らない。そんな人間を、どこが雇ってくれるかしらね」
「だがスレインは……」
仕事に就けた、と続けようとして、エリスに遮られる。
「あの子は運が良かったのよ。貴方が現れたから。でも私たち……いえ、彼らに救いは現れなかった。だから私たちは、お金持ちから盗むことにしたの。最初は手頃な仕事だったわ。安全な皇国に浸った金満貴族たちは、盗まれるなんて思ってないからちゃんとした警備もつけてなかった。でも数を熟すうちに警備が厳重になり、いよいよ私たちの手に余るようになったわ。何故なら、戦争が終わって、剣を握る機会が殆ど無かった私たちには、戦う力が伴わない」
「だから俺を勧誘しようとしたと」
「えぇ、あの時スレイン君を助けた貴方なら、私たちの思いに賛同してくれると思ったのよ」
エリスは小さく息を吐きだすと、まっすぐにラインハルトを見つめた。
ラインハルトは悩んだ。今はどうかわからないが、彼は以前、確かに皇国の兵士であった。その兵士が、人を助けるためとはいえ盗みを働くことを良しとしていい物か、と。だが少し悩んだところで、彼は思い出す。
(ああ、そういえば俺は、真面目な兵士じゃなかったな)
戦いを求める彼にとって、過程は然程重要ではない。極端な話をすれば、成すことが善行だろうが悪行だろうが、槍をもって戦える場が増えれば彼にとって本望なのだ。ならば皇国の兵士として昼寝にいそしむよりかは、自ら賊に堕ち国に喧嘩を売ったほうが、よっぽど望みをかなえられる。彼はそう思った。
「……まぁ確かに。子供らを救う為に汚名を被るのも吝かではない。というか、誰かさんのせいで既に取り返しはつかないだろうしな」
既に皇国は、ラインハルトを敵とみなしている。それはラインハルトも分かっていた。だからここまで思い切った決断をすることも出来る……だが、兵士としての矜持が全て消え去ったわけでは無かった。
「……しかしだからと言って、無作為に窃盗をする気は更々ない。やるなら生活に困らぬ金持ち、しかも悪党からだ」
いるかどうかも分からぬ輩を持ち出して、そう条件を伝えた。するとエリスは、艶やかな笑みを浮かべこう言う。
「それは安心して。大陸一平和と謳われる皇国と言えども、悪党は必ず居るものよ」
その言葉を最後に、二人の逢瀬はお開きとなった。
両者は席から立ち上がり部屋を出ると、酒盛りに合流する。
ラインハルトはこれまでの鬱憤を晴らすように酒を飲んだ。そして男たちから様々な話を聞いて回った。
不遇な身の上話。ここに至るまでの経緯。そうした愚痴を幾つも聞いているうちに、嵐の夜は更けていく。
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