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12章 新たな学校生活
新緑の春
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すっかり雪も解け、色とりどりの草木が芽吹く頃。
長かった長期休暇もついに終わり、再び魔法学校へと向かう日がやって来た。
アネシアルテとルインは、それぞれ大きな荷物を抱え、セイムセインの屋敷で家の者達と対峙する。
「また半年近く会うことは出来ないのだろう。しかし、お前たちが毎日努力を重ねることは判っている。頑張ってきなさい」
カルタネシアはそういうと、帰って来た時より少し背が伸びた二人の頭を優しく撫でた。
次いでユイエンを始めとした奴隷達、給仕長を始めとした従者達も、温かい声をかけてくる。
二人はたっぷりの時間を使って別れの挨拶を済ますと、初めて魔法学校へ向かった時同様、豪華な馬車に乗り込んで転送魔法陣へと向かった。
町はずれの広場より、転送魔法陣にて見慣れた場所へと転移する。
遠くに見える尾根はまだ白けれど、学校周辺は既に草木が萌えているようで、快晴なのも相まって僅かに温かく感じる。
辺りを見渡せば、他の二都市を繋ぐ転送魔法陣も無事起動し終えたようで、少し賑やかになっていた。
魔法陣から伸びた道を歩み、合流地点にて仲の良い友人と再会の喜びを分かち合う。
やがて誰とはなしに、全員揃って寮へと歩き出した。
この日は移動日とされていて学校での授業は無い。
生徒達はそれぞれ、学校にいる講師に挨拶をしたり、仲の良い友達と駄弁るなどして、思い思いに時間を過ごす。
翌日より、再び学校での授業が始まる。
しかし、長い時間空いてしまったうえに、近々大きな祭りが迫っている為、授業内容は大部分が復習となっていた。
これまでに学んだ知識、技術が本当に身についているのか、再確認をする作業だ。
約六月に渡って学んだものを、二月程で振り返るのだから、一日の授業は相当な駆け足となる。
それでも生徒たちは、慌てることなく毎日を熟していく。
長期休暇が終わってから一月もすれば、生徒たちは祭りの準備に追われるようになる。
その祭りとは、年に一度だけある『新入生歓迎会』だ。
以前は歓迎される側だったルインも、今回は歓迎する側。
各研究団はその日の為に、念入りな準備を始める。
魔法人形の整備、試合会場の準備、祝砲や空を飛ぶ魔導書の確認等々。
ルインの属する錬金術研究団では、例年通り、喫茶店を開くことになっていた。
時間と共に味が変わる飲み物、中からソースが弾け出る食べ物はお馴染み。
他にも普通に屋台で見ることが出来る食べ物から、何処でも見たことのない奇抜な飲み物まで意外と幅広い。
作り方の確認をして、実際に食べてみて、美味いだの不味いだの騒ぐ。
それはそれでとても楽しい時間だった。
魔法学校入学より一年が経とうというある日、座学の担当講師カロッセが、その日の授業を終える頃、生徒一同に声をかけた。
「さて、君たちがこの学校に来てもうすぐ一年が経つ。もう少しすれば四年生は卒業し、君たちは二年生へと上がるだろう。そうなれば当然、新たな新入生が入ってくる。後輩に馬鹿にされぬよう、これからも研鑽に励むように」
魔法学とは終わりなき学問である。
また、魔法という技術に関してもまだまだ不明な点が多く、研究しつくしたとは言い難い。
この点から言えば、ルインが魔法学校で学んだ一年など取るに足らない物ではあるが……講師の先の発言を受けた生徒達は、魔法学校で過ごした一年間に胸を張り、得も言われぬ満足感につつまれた。
学年が変わるまで後数日。
魔法学校には生徒の声が木霊する。
長かった長期休暇もついに終わり、再び魔法学校へと向かう日がやって来た。
アネシアルテとルインは、それぞれ大きな荷物を抱え、セイムセインの屋敷で家の者達と対峙する。
「また半年近く会うことは出来ないのだろう。しかし、お前たちが毎日努力を重ねることは判っている。頑張ってきなさい」
カルタネシアはそういうと、帰って来た時より少し背が伸びた二人の頭を優しく撫でた。
次いでユイエンを始めとした奴隷達、給仕長を始めとした従者達も、温かい声をかけてくる。
二人はたっぷりの時間を使って別れの挨拶を済ますと、初めて魔法学校へ向かった時同様、豪華な馬車に乗り込んで転送魔法陣へと向かった。
町はずれの広場より、転送魔法陣にて見慣れた場所へと転移する。
遠くに見える尾根はまだ白けれど、学校周辺は既に草木が萌えているようで、快晴なのも相まって僅かに温かく感じる。
辺りを見渡せば、他の二都市を繋ぐ転送魔法陣も無事起動し終えたようで、少し賑やかになっていた。
魔法陣から伸びた道を歩み、合流地点にて仲の良い友人と再会の喜びを分かち合う。
やがて誰とはなしに、全員揃って寮へと歩き出した。
この日は移動日とされていて学校での授業は無い。
生徒達はそれぞれ、学校にいる講師に挨拶をしたり、仲の良い友達と駄弁るなどして、思い思いに時間を過ごす。
翌日より、再び学校での授業が始まる。
しかし、長い時間空いてしまったうえに、近々大きな祭りが迫っている為、授業内容は大部分が復習となっていた。
これまでに学んだ知識、技術が本当に身についているのか、再確認をする作業だ。
約六月に渡って学んだものを、二月程で振り返るのだから、一日の授業は相当な駆け足となる。
それでも生徒たちは、慌てることなく毎日を熟していく。
長期休暇が終わってから一月もすれば、生徒たちは祭りの準備に追われるようになる。
その祭りとは、年に一度だけある『新入生歓迎会』だ。
以前は歓迎される側だったルインも、今回は歓迎する側。
各研究団はその日の為に、念入りな準備を始める。
魔法人形の整備、試合会場の準備、祝砲や空を飛ぶ魔導書の確認等々。
ルインの属する錬金術研究団では、例年通り、喫茶店を開くことになっていた。
時間と共に味が変わる飲み物、中からソースが弾け出る食べ物はお馴染み。
他にも普通に屋台で見ることが出来る食べ物から、何処でも見たことのない奇抜な飲み物まで意外と幅広い。
作り方の確認をして、実際に食べてみて、美味いだの不味いだの騒ぐ。
それはそれでとても楽しい時間だった。
魔法学校入学より一年が経とうというある日、座学の担当講師カロッセが、その日の授業を終える頃、生徒一同に声をかけた。
「さて、君たちがこの学校に来てもうすぐ一年が経つ。もう少しすれば四年生は卒業し、君たちは二年生へと上がるだろう。そうなれば当然、新たな新入生が入ってくる。後輩に馬鹿にされぬよう、これからも研鑽に励むように」
魔法学とは終わりなき学問である。
また、魔法という技術に関してもまだまだ不明な点が多く、研究しつくしたとは言い難い。
この点から言えば、ルインが魔法学校で学んだ一年など取るに足らない物ではあるが……講師の先の発言を受けた生徒達は、魔法学校で過ごした一年間に胸を張り、得も言われぬ満足感につつまれた。
学年が変わるまで後数日。
魔法学校には生徒の声が木霊する。
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