蝶よ花よ〈甘い蜜に誘われて〉（BL）

追憶のキミ2-14

　風side

　いつも、住まいである北の対屋に近い北櫓か、心紀様の住まう西の対屋に近い西櫓で。心の中の整理を付けたい時に涙していたのだが

　今日は、 普段使用頻度の低い東櫓にて泣こうと……ここなら誰にも見つからないと思ったのに

　可哀相に……倫が泣いていた

　心の内を打ち明けた倫に『そうか……』と。ありきたりな言葉しか言ってあげられぬ事がもどかしくて……


　ギギギギ……ガチャン

　東櫓に涼也。英士。心紀様が揃って……


　涼也「風若様？　な、なぜ、倫殿と抱き合いながら泣いているのですか？」　

　英士「風殿？　な、なぜ、倫殿と抱き合いながら泣いているのです？」


　なぜ？　涼也、英士……心の内をさらけ出して良いのか？　

　答えずにいたら、居室に連れて来られ

　涼也「風若様？　なぜ、倫殿と抱き合いながら泣いていたのですか？」

　英士「風殿？　なぜ、倫殿と抱き合いながら泣いていたのです？」


　涼也、英士の問いかけに、涙が溢れて……両拳を握り両膝に置き、唇を噛みしめ。口を閉ざしたまま。二人の表情にて想いを汲み取ろうと

　大げさでなく英士の

　心の内を吐き出させてあげねば……このままでは風殿の心が壊れてしまう!　

　英士の心の声が聞こえて来た気がして

　英士「風殿？ 苦しい胸の内を、この英士に話して下さらぬか？　私がこの先ずっと……風殿のを支えますゆえ」

　大げさでなく英士の

　お心の内を吐き出して頂かなくては……このままでは風若様のお心が壊れてしまう!　

　涼也の心の声も聞こえて来た気がして

　涼也「風若様？ どうか。そのお心内をこの涼也に話して下さいませ……私がこの先ずっと……風若様をお守り致します」


　英士が、私の唇に右手親指にて軽く触れて来て。右手にて私の左頬に触れてくれて

　涼也も、私の唇に左手親指にて軽く触れて来て。左手にて私の右頬に触れてくれて



　チュッ

　風「英士？　な、なぜ？　何をした？」

　英士「何を？　接吻ですよ？」

「……」


　チュッ

　風「涼也まで？　何をしたのだ？」

　涼也「申し訳ありません？　接吻させて頂きました」

「……」

　気が付いたら叫んでいた

　風「分からぬ……なぜ接吻などっ。何より分からぬのは私自身だ。どうしたら良いのだ？　涼也っ英士っ。私を助けてくれっ」