蝶よ花よ〈甘い蜜に誘われて〉（BL）

涼やかな風.美しき優しい華(花)たちへ5

 　2018.11

　風side

　2005.11 風 6歳11ヵ月

　風『僕ね!　大きくなったら、ケーキ作る人になるの!』

　風音《かざね》『風ちゃん、ママすごい楽しみだわ!　風ちゃんのパパは…… ケーキを作る人…… パティシエになりたい人にケーキ作りを教える先生なのよ!』

　心紀《みさき》『僕は、ケーキ売る人かな』

　倫《りん》『オレも、ぱてしぇになりたいな』

　紀南《きみ》.凜湖《りんこ》『楽しみねぇ』

　──
　2018.11

　-風の部屋-

（夢か……）

　もう何が本当で…… 何が嘘か…… 分かんなくなっちゃったよ……

　──

　-その頃のリビング-

　風音『あれから13年…… 早いわね……』

　紀南『私は、夫と死別して……』

　凜湖『私は、離婚して……』

　風音『女３人シェアハウスして。良くここまで持ったわよね……』

　風音.紀南.凜湖『子供達がいたからよね…… 私達の大切な宝物…… 愛しい子供達の……』


　──
　-洗面所-

　心紀「おはよう。風」

　風「おはよう。心紀にぃ」

　心紀「母ちゃん達、すげぇ昔話で盛り上がってるよ」

　風「そうなんだ…… あ、心紀にぃ。俺さ、美優花と来年の1月に結婚するから、この家出て行くね。それと、製菓調理専門学校の講師になる事も決めたから」

　心紀「は？　風？　何言って……」

　風「来年の3月、専門学校卒業だし。家庭を持つならさ、将来の無さそうな店に就職するより、安定した生活の見込める専門学校の講師になろうかなって」

　心紀「風…… まだ19で１月で20歳…… 早すぎる…… り、倫が悲しむし、心配している。アイツ可哀想じゃん!」

　風「心紀にぃ、倫にぃが海外行って悲しいのは、心紀にぃでしょ？　それに俺は、倫にぃから一言も聞いてないしね。まあ、聞かされても困るんだけど…… 倫にぃに伝える事があるのは、心紀にぃの方でしょ？」

　心紀「風……」

　風「心紀にぃ心配しないで。俺、少し自分の事を見つめ直して考える時間が欲しいんだよ。心配掛けてごめん。あ、心紀にぃに教えてもらったさ接客の心得？　お客様の一言を噛みしめて、伝えて来られた情報を『会話の中にさり気無く織り交ぜる』のしたらさ、上手く接客出来たんだ。ありがとね」