蝶よ花よ〈甘い蜜に誘われて〉（BL）

夢でしか逢えない 12

月曜日 某居酒屋

　倫『俺が2歳の時に、父さん交通事故で亡くなったの。風のお母さんは、未婚で風を… 母さんと仲の良い姉妹だったみたいで『いつかきっと、二人の生活が何不自由なく出来る体制が整ったら迎えに来る』って約束したらしくって…』

心紀｢ホント俺さ、あまりにも自分の両親が仲良すぎて… それが当たり前って思ってたからさ…｣

英士｢見た目に反して倫くんの方が、素直だったって事か…｣

心紀｢倫も言ってた。風は、お母さんの事もあって、人を信じたいけど、信じる事が出来ない。ジレンマに陥ってて、必要以上に人に自分の素を見せる事を良しとしない所があるって｣

涼也｢他には何か話をしてくれたの？｣

心紀｢色々親切な人達の事をね？｣

倫『俺は10年ちょっと女手一つで、俺と風を育ててくれたの感謝してて。恋人がいたって… けどさ世間の人ってそう思わないじゃん？ずっと同じ所に住んでるからさ。噂ってのはどんどん尾ひれをつけて違った事実に変わっていく訳。俺素直じゃないから反抗的な態度を取ったり… 母さんに負担かけたくなくて県立高校選んだんだけど、相手の人に『お前と上手くやる自信が無い。早く自立する方法考えたらどだ？』とか、言われるようになって。その人さ、母さんの家に住んでいる状態なもんだから…』

涼也｢二人が私立の高校に編入したのって？｣

心紀｢親切な人達が自分の子供達に、その手の嫌味を言わせてたみたいなんだけど。風の母親の事迄『とうの昔に新しい恋人作ったから、迎えに来ないんじゃないの？』って言われたらしくて… 倫は我慢出来なくて喧嘩をね… 同級生3人相手に｣

英士｢3人が倫くんが、最初に手を出したって言ったかナンカしたんだ？｣

涼也｢風ちゃんの方にも、その3人喧嘩ふっかけて風ちゃんも、我慢出来なくなって手を出した？｣

心紀｢イヤ、出す寸前だった… が正しいかな。風には倫の母親の悪口を言って… 今迄の溜まりに溜まった物が爆発したんだろうね？教室で褒めたもんだから。一部の生徒は、教師に報告しに行ったんだけどさ｣

英士｢風ちゃんと倫くんの言葉や、その生徒達の言葉より… 真実より嘘が勝ったって事？｣

心紀｢退学を勧められたって事はそういう事なんだろうね…｣

涼也｢信じらんない!それで二人は蓮華学園に編入したんだ？それなのに又？｣

心紀｢世間は狭いっていうけど… 二人は新たな気持ちで頑張ろうとしてたのに、家庭環境とか知ってる奴がそこにも居るとかホントありえないよね？｣