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それぞれの戦い④~涼也~

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 涼也『オイ! 何やってんだよ! ふざけんな! 』

 なんでこんな事になったんだよ? ふうちゃんが何したってんだよ……

 市の職員達に対する憤り、怒り

 悲しい悔しい

 けど……何よりも、何で俺はふうちゃんを助けらんなかったんだよっ……

 自分自身への怒りが、 一番強く渦巻いたんだ……

 ──

 風歌『世の中の為になる仕事に就きたいな。介護の仕事をしたいわ』

 るな『頑張って働いて来たお年寄りに、感謝を込めてお世話してしあげたいな』

 すげぇな。ふうちゃんも、るなちゃんも。 高校生になったばっかだってのにさ、きちんと将来の事考えてんだ

 二人より、一つ上の俺だけどまだ将来の事を決めかねてるってのにな……

 世の中と、人の為になる仕事か…… 俺が、 福祉関係の仕事に就きたいと思った瞬間だった


 るな『私、 運動神経あまり良くないから、運転免許取るの怖いしな』

 風歌『私も。家の近くで。バスで 30分以内の介護施設に、 就職出来たらな』

 そっか、一足先に就職する俺が、ふうちゃんと、るなちゃんの 希望に叶った所に就職すればいいのか……

 3人で、この専門学校にしよう。 出来ればこの会社に入れたら良いよね? 

 色々話し合って、希望通りの専門学校に入って。大手で、名前も知られている介護サービス会社だから……決めた

 俺は就職した介護サービス会社が、業務委託を受け負う市立の養護老人ホームにて働く事になった

 直ぐに思い描いていた介護との、余りの違いに……いや仕事内容とかじゃなくて  

 市の職員と、介護サービス会社の職員の立場の違い。とか。 施設内で当たり前に行われている事の

 余りの悲惨な惨状に  

 俺はショックを受けたんだ

 -

 涼也『あれ、新川《しんかわ》さんどこか行くんですか?』

『子供にご飯を作らなければならないから帰らなきゃなんだよ』

 涼也『 そっかもう夕方だもんね』

 認知症のお年寄りにとって、施設内の廊下を歩き回るにはきちんと意味があるんだ

 例えば 一日中歩いているおばあさんはさ

『子供にご飯を作らなければならない』

 おじいさんは

『仕事に行かなければならない』

 黄昏時と言われる夕方になれば

『子供を迎えに行かなければならない』

『夕飯を作らなければならない』

『家に帰らなければならない』

 その人その人の深い理由があるんだ

 涼也『新川さんは凄いね。 朝から晩まで働いて大変なのにさ。子供さんのご飯を毎日きちんと手作りしてさ』

『それが親と言うもんだよ』

 俺は、新川さん。入居者のおばあさんと一緒に歩きながら、ちょっとでも気持ちが他に向くキッカケは無いかな? って探りながら……

『御厨くん、○○ちゃんは一時間も歩いてるの。『家に帰る』しか頭に無いし。もう車椅子に乗せて!』

 涼也 《……》

 あり得ないだろう? お年寄りに向かって"ちゃん"呼びとかさ……

 車椅子に乗せて=車椅子の後ろに紐を付けて廊下の手すりに……

『拘束』

 お腹にベルトを巻いて…… 車椅子から立ち上がれない様に……

 なぜそのような事をされるのか分からないお年寄り達にとっては、恐怖でしかないよな

 大声で叫んだり泣いたり 

 職員の都合を優先させるってマジあり得ないぜ

 ショックだった。その行為に慣れてはいけないんだ。その様な、施設ここだけだよな? ……初めに働いた所が、たまたまそういう施設であったと信じたいよ

 大多数の施設が、その様な事をしていないと言い聞かせて……

 慣れる事……受け入れる事なんて……納得が出来なかった……

 俺は人への優しさを忘れない! その様な人間でいようと固く誓って……介護の仕事にやりがいはある。俺は、お年寄りが大好きだから……






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