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新たなる日々……

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 翌日、鈴兄上様。なずな。凛実の方様。おばば様(楓希の方)。おじじ様(陽)は、湖楓鈴丸《こふりん まる》にて稜禾詠ノ国へ帰られたの。


 そして……

 『拝啓  楓禾姫様  いかがお過ごしですか?』 


 稜禾詠ノ国に帰りしなずなより、わずか三日後に届けられし書状。

『六年振りに、稜禾詠ノ国に帰られし楓菜の方様のお姿に、民達は皆歓喜に湧き、涙していました』


 そう、お母上様が六年振りに、稜禾詠ノ国にご帰国なされたの。

 お母上様とお父上様の中で、お母上様が一度稜禾詠ノ国に帰えられる事が決められていたみたい。

 お母上様のご帰国の先触れの役を果たしてくれたのは……かつて外喜の家臣であった秋川信介。私と湖紗若様が瑠璃ノ島に渡った際に、護衛してくれた男。今回のお母上様達の船旅の護衛もしてくれ、書状まで届けてくれて。

『行ったり来たり大変よね。ありがたいわね』

 そう言うと、稜弥様と詠史殿は苦虫を噛んだような表情? をしたのだけれど……

 なぜかしらね? 



 外喜を見限り。

『桜家の為に、これからは忠誠を誓いたいと思います』

 そう船で、誓いを立ててくれた時に、私はわだかまりを捨てて信介を受け入れたのだけれど……



 前置きが長くなってしまったわ。



 先触れを受け、稜禾詠ノ国を守って下さっている勇叔父上様の尽力にて。


『まず、各支配地の名代達が、桜桃城の本丸御殿の庭にて、縁側に立たれた楓菜の方様との対面をなされました。次ぎに上群、中群、下群の民達が桜城に招かれ、希望する民達が皆集まり……縁側に立たれた楓菜の方様も涙。民達も涙、涙で、歓喜に満ち溢れました』

「良かった……楓菜姫様」

 そう言って、涙ぐまれたお父上様。

『民達は、歌い踊り沸き返っています。桜桃城内では、楓菜の方様が持女を招待して、 自らお茶を立てて下さり。夜は、家臣達の今までの労をねぎらうため、酒肴の席を設けておもてなしされたりと、忙しくされております』

 大体二週間ぐらいの予定で、稜禾詠ノ国に帰国なされたお母上様だけれど。後一週間で本当に帰って来てくれるかしら? 

「楓菜姫様らしい……」

 誇らしい。というように。でも、寂しさを滲ませて、呟かれたお父上様に。

「お父上様。お母上様に付い行きたかったのでしょう? すみません」

「楓禾姫…… 怒るぞ『瑠璃ノ島での、領主の役割について 教えて下さい』と、言ってくれた時に、私は 全てをきちんと教えてあげたいと思ったのだ。 それが楓禾姫にしてあげられる領主としての最後の私の務めなのだから」

「 お父上様。愚かな事を申してすみませんでした」


「まぁ、今まで、名代の瑠璃の父親に統治を任せてきたのだから偉そうな事は言えないがな」

「きつい言い方をしてすまなかった」

 そうおっしゃられたお父上様。




 この六年間、瑠璃ノ島を長として守ってくれたのは、瑠璃ちゃまの父の孝道《たかみち》殿。

 統治の仕方について、話を聞く際に。心苦しくて。

『 私が統治して行く事に思う事はないのですか?』

 と問うと。

『楓禾姫様。 私は今日《こんにち》を迎える為に。その日まで名代として島を守り抜くのだと誓い生きて来ました。 これからは、楓禾姫様と湖紗若様をお支えして参ります。 今日の日を迎えられた事を、私は喜んでいるのですよ』

 そう言って下さった孝道殿。


『わたしも おしえを こいたいです』

『わたしも』


 湖紗若様と瑠璃ちゃまも。稜弥様。詠史殿も。一緒に講義を聞きながら、お母上様のお帰りを待つ。


 それが、私の瑠璃ノ島での新たなる日々……


 お母上様が帰って来て下くださらないんじゃないかと少し心配だったけれど。 一週間後に帰って下さった時は嬉しかったわ。

 その時に一緒に、瑠璃ノ島に渡って来たのは、幸 《こう》様。

   父の爽と勇叔父上様の父。私から見て……祖父《そふ》
 
   母の楓菜の父の陽の兄.伯父《おじ》で。私から見て……大伯父《おおおじ》

    父の爽と叔父の勇。勇叔父様の息子の稜弥様と私は従兄妹《いとこ》
 
    父と勇兄弟と母は従兄妹で。私と稜弥様は再従兄妹《はとこ》
  
  になるの。かしら? 

   

  こんがらって来たわ。


 幸様が瑠璃ノ島に 来られたという事は。

「早月…… 後進に道を譲り、そなたと暮らす為この島に来たよ」

「旦那様…… お疲れ様でございました」


 六年振りの再会……

 桜家の為に……


「幸様…… お疲れ様でございました。幸様は父を。私と湖紗若様を支えて下さり。早月は母を支えて下さって。感謝しています。ありがとうございました 。これからは瑠璃ノ島で仲良く暮らして頂きたいわ」

「「ありがとうございます。楓禾姫様」」


 幸様にすがり付き、抱き付いて号泣する早月を見て、 私も涙が溢れて止まらなくて。

 その場にいた皆も泣いていたけど。


 お母上様の。

「ありがとう。早月。幸様……」

 涙される姿。心がギュっとなって切なかったの。












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