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詠史と稜弥の心情

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 瑠璃の海の浜辺にて砂の城を造っている、湖紗若様と鈴様。なずなに瑠璃殿を横目に物語を書いていた。

 楓禾姫様が浜辺に……

(詠史殿の所に先に行った……)

 少し……イヤ、かなり気持ちが落ちてしまって。

 詠史殿と私の間に、湖紗若様達がいらしても視界には映って来る訳で。おまけに遊びながらも、鈴様がこちらを気遣わしそうにしておられるし。なずなも。


 幸い……なのか? 会話は聞こえない。

(集中して書くぞ)

『稜弥様? 何をしているの?』


 瞬間、単純なんだな。私は。楓禾姫様が来て下さった事に気分が持ち直したんだから。


(後に、私の方が難しそうな顔をして、何かをしていたから 後にしたんだと聞いて。心の霧が少し晴れましたからね。丁度、外喜について記してたから顔が険しかったんでしょうね)


『はい。楓禾姫様との会話を記したら、 ずっとその事を忘れないし。見返して思い出す事が出来るじゃないですか』


『もう! 冗談は辞めて!』

 呆れた表情されたり、凄い。と素直な気持ちを言って下さったり、表情をクルクルと変える楓禾姫様が愛しくて。

 日記に楓禾姫様との会話を記したら、ずっと忘れずに。見返して思い出す事が出来る。冗談ではないのですがね。

 ふと、会話が途切れた時に。

「稜弥様と、詠史殿にお話したい事があります」

 そう、おっしゃられて。 
   

  お可哀相に、その顔色は青ざめ、緊張されているのが痛い程に伝わってきたんだ。






 瑠璃の海の浜辺にて砂の城を造っている、湖紗若と鈴様。なずな殿に瑠璃殿を横目に絵を描いていた。


 楓禾姫様が浜辺に……私の所に先に来て下さった……

 嬉しくて。


 しかし。稜弥様と私の間に湖紗若達がいらしても、視界に稜弥様は映って来る訳で……

 険しい表情にて、集中している風に見せておられるのをヒシヒシと感じて。おまけに遊びながらも、鈴様があちらを気遣わしそうにしておられるし。なずな殿も。



『詠史殿? 何をされてるの?』


『同じ構図の絵だけど色が違うわ』

『はい。色の濃淡の違う墨を作って。同じ構図でも、色の濃さや塗り方を変えたらどう見えるかな? と思って。 色々試していたんです。絵を描くのは趣味なんです』

  とお答えすれば。

『なるほど…… 色が濃いのは、鈴兄上様の力強さがよく表れてて。淡い色合いの絵は、なずなの儚げな様子が良く描かれている気がするわ。湖紗若様は可愛いわ。瑠璃ちゃまも』

 きちんと、私の意図した事を理解して下さって。

 湖紗若びいきと笑えば。

『何か問題でも?』

『いえいえ』

 少しムッとして、拗ねられたのがお可愛らしくて。

 恐れ多いけれども"軽口"を言い合えたのが幸せで。


 ふと、会話が途切れた時に。


「稜弥様と、詠史殿にお話したい事があります」

 そう、おっしゃられて。

   お可哀相に、その顔色は青ざめ、緊張されているのが痛い程に伝わってきて。



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