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爽から稜弥へ
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ただただ、良かった……しか出て来なかった。
浜辺にて、物語の構想を練りながら、館での様子を思い返してた。
休日には、 物語から日記的な物まで、書き記すのが私の息抜きなんです。
視界の隅に、海辺にて釣りをしておられる詠史殿が見えているのですが……
(気にしないようにしましょう)
楓禾姫様と湖紗若様の母としての表情にて、再会の喜びを噛みしめていらした楓菜の方様。
楓希の方様と、大殿様の娘として……
楓希の方様にしがみつき号泣されている楓菜の方様を、優しく抱きしめて同じく号泣されている楓希の方様。更に、お二人を包み込むように静かに涙されていた大殿様。
少し離れた場所にて、楓禾姫様と湖紗若様はお三方を見つめておられ。湖紗若がヒックヒックとしゃくりあげているのを、楓禾姫様が優しく声を掛けながら、頬に伝う涙を襟元から取り出した、四角く縫った綺麗な布にて拭って差しあげながら。楓禾姫様も涙されていた。
その様子に私も、涙溢れて。それは、凛実の方様も、鈴様 なずなも、詠史殿に、早月殿も同じ。
殿様は、涙は見えないけど潤んだ瞳にて……泣いておられる凛実の方様の背中をさすりながら、楓菜の方様達の様子を見つめておられた。
「稜弥様、失礼致します。殿様より、館の客室にて話しをしたい。との事でございます。案内致しますゆえお願いします」
と、館の使用人なのでしょう。呼びに来てくれて。
「ありがとうございます」
私は、急ぎ客間に向かう事に。
さて、 客間に着くと上座に殿様が。下座に私は腰を卸したのですけどね……私の左隣に、湖紗若様が座っておられるのはどういう事なのでしょうね?
殿様は、苦笑されながらも面白いというように何もおっしゃる気はないようですし。
(なずな殿大好きな若君ですからね。監視の為に、おられるのですよね?)
本当に侮れないお方ですね……
「稜弥よ。 常々そなたには、聞きたいと思っている事があるのだが」
(殿様……)
湖紗若様の存在で、 どこか、和やかだった空気が引き締まりましたね……
「勇共々、桜家の護衛という立場で使う事に 、良いのだろうか? と逡巡してしまうのだ。もっと、表での執務を増やすとか。その才覚を活かす部署に移りたいとは思わないか?」
「殿様。幼き時より楓禾姫様と共に勉学だけでなく、稜禾詠ノ国の者として生きる心得や、必要な事をお教え下さった事感謝しても仕切れません。基史殿や父から『殿が、体術や剣術などを学ばせるのは、楓禾姫様や湖紗若様を守るという、目的以外に。自分自身。稜弥を守る為なのですよ』と教えてくれました。代々朝比奈家が、桜家の護衛を務めて来たから選んだ道ではありません。護衛として楓禾姫様と湖紗若様を見守りながら、時に諜報活動もする。御庭番に混じって大勢で動いてみたり。一人、 対象に悟られないように探る。とか。 奥深い役割ですからね。 私は満足しております」
「稜弥……全く……そなたと来たら……」
そう言って呆れた様子の殿様。
この歳まで受けて来たご恩は、決して忘れてはならないんだ。誓いも新たに、心して生きて行こうと決心したんだ。
「稜弥」
「は、はい」
唐突な呼びかけに驚いでしまった。
「 すまない。驚かせて。稜弥の名前の由来はあるのか?」
(殿様?)
「はい。ございます『穏やかで人の和を大切にする人』『何かしらの際立った才能を持った人』になるようにと、 両親が名付けてくれました」
「そうか…… 様々な事を器用にこなす才能の持ち主だし。 人との距離の詰め方も上手いしな。稜弥は……楓禾姫を好いていてくれているのだろう?」
唐突な殿様の言葉に緊張する……けど、分かりますね。湖紗若様からの……い抜くような強い視線を感じるのを……
「はい」
この想いは隠せないのだから……正直に答えさせて頂きす。
「この瑠璃ノ島に付いてきたのは、楓禾姫を追いかけてであろう?」
「はい」
「正直でよろしい! 鈴には、勇の妻の弟を付けるとするか。楓禾姫は瑠璃ノ島に行くと報告に来た際『稜弥様と詠史殿なら、鈴兄上様を。稜禾詠ノ国を。民を。幸せにする為力を尽くしてくれます』と、申したのだがな……『私』を優先してばかり…… そう言っている側から……親バカを許してくれ。私は、楓禾姫と湖紗若の幸せを、心から願っているんだ。楓禾姫を心より思ってくれている稜弥に。お願いしたい。楓禾姫をこれからも、支えてやって欲しい。よろしくお願いします」
涙と共に、私に頭を下られた殿様……一国のご領主であられるのに……
「はい。 お誓い致します。この先も楓禾姫様を 支え守り抜くと」
「どうかな? 湖紗若。稜弥は楓禾姫を任せるに足る男かな?」
先ほどの涙どこいったのですか? どこか、面白そうに湖紗若様に尋ねられた殿様。
「はい。リョウヤも フウひめさまを まかせられます けど エイシも どうなるの でしょう?」
大真面目な湖紗若様……
「ふ、ふふ……アハハハハ!」
殿様……大爆笑されている。けど。
満足そうに笑っている湖紗若様。しかし。
「稜弥も、湖紗若のお眼鏡に叶ったようだぞ! 良かったな!」
殿様と湖紗若様は、満足でしょうが……
『も』って……詠史殿……も……って事ですよね……
けど、楓禾姫様への想いは諦めませんから……
浜辺にて、物語の構想を練りながら、館での様子を思い返してた。
休日には、 物語から日記的な物まで、書き記すのが私の息抜きなんです。
視界の隅に、海辺にて釣りをしておられる詠史殿が見えているのですが……
(気にしないようにしましょう)
楓禾姫様と湖紗若様の母としての表情にて、再会の喜びを噛みしめていらした楓菜の方様。
楓希の方様と、大殿様の娘として……
楓希の方様にしがみつき号泣されている楓菜の方様を、優しく抱きしめて同じく号泣されている楓希の方様。更に、お二人を包み込むように静かに涙されていた大殿様。
少し離れた場所にて、楓禾姫様と湖紗若様はお三方を見つめておられ。湖紗若がヒックヒックとしゃくりあげているのを、楓禾姫様が優しく声を掛けながら、頬に伝う涙を襟元から取り出した、四角く縫った綺麗な布にて拭って差しあげながら。楓禾姫様も涙されていた。
その様子に私も、涙溢れて。それは、凛実の方様も、鈴様 なずなも、詠史殿に、早月殿も同じ。
殿様は、涙は見えないけど潤んだ瞳にて……泣いておられる凛実の方様の背中をさすりながら、楓菜の方様達の様子を見つめておられた。
「稜弥様、失礼致します。殿様より、館の客室にて話しをしたい。との事でございます。案内致しますゆえお願いします」
と、館の使用人なのでしょう。呼びに来てくれて。
「ありがとうございます」
私は、急ぎ客間に向かう事に。
さて、 客間に着くと上座に殿様が。下座に私は腰を卸したのですけどね……私の左隣に、湖紗若様が座っておられるのはどういう事なのでしょうね?
殿様は、苦笑されながらも面白いというように何もおっしゃる気はないようですし。
(なずな殿大好きな若君ですからね。監視の為に、おられるのですよね?)
本当に侮れないお方ですね……
「稜弥よ。 常々そなたには、聞きたいと思っている事があるのだが」
(殿様……)
湖紗若様の存在で、 どこか、和やかだった空気が引き締まりましたね……
「勇共々、桜家の護衛という立場で使う事に 、良いのだろうか? と逡巡してしまうのだ。もっと、表での執務を増やすとか。その才覚を活かす部署に移りたいとは思わないか?」
「殿様。幼き時より楓禾姫様と共に勉学だけでなく、稜禾詠ノ国の者として生きる心得や、必要な事をお教え下さった事感謝しても仕切れません。基史殿や父から『殿が、体術や剣術などを学ばせるのは、楓禾姫様や湖紗若様を守るという、目的以外に。自分自身。稜弥を守る為なのですよ』と教えてくれました。代々朝比奈家が、桜家の護衛を務めて来たから選んだ道ではありません。護衛として楓禾姫様と湖紗若様を見守りながら、時に諜報活動もする。御庭番に混じって大勢で動いてみたり。一人、 対象に悟られないように探る。とか。 奥深い役割ですからね。 私は満足しております」
「稜弥……全く……そなたと来たら……」
そう言って呆れた様子の殿様。
この歳まで受けて来たご恩は、決して忘れてはならないんだ。誓いも新たに、心して生きて行こうと決心したんだ。
「稜弥」
「は、はい」
唐突な呼びかけに驚いでしまった。
「 すまない。驚かせて。稜弥の名前の由来はあるのか?」
(殿様?)
「はい。ございます『穏やかで人の和を大切にする人』『何かしらの際立った才能を持った人』になるようにと、 両親が名付けてくれました」
「そうか…… 様々な事を器用にこなす才能の持ち主だし。 人との距離の詰め方も上手いしな。稜弥は……楓禾姫を好いていてくれているのだろう?」
唐突な殿様の言葉に緊張する……けど、分かりますね。湖紗若様からの……い抜くような強い視線を感じるのを……
「はい」
この想いは隠せないのだから……正直に答えさせて頂きす。
「この瑠璃ノ島に付いてきたのは、楓禾姫を追いかけてであろう?」
「はい」
「正直でよろしい! 鈴には、勇の妻の弟を付けるとするか。楓禾姫は瑠璃ノ島に行くと報告に来た際『稜弥様と詠史殿なら、鈴兄上様を。稜禾詠ノ国を。民を。幸せにする為力を尽くしてくれます』と、申したのだがな……『私』を優先してばかり…… そう言っている側から……親バカを許してくれ。私は、楓禾姫と湖紗若の幸せを、心から願っているんだ。楓禾姫を心より思ってくれている稜弥に。お願いしたい。楓禾姫をこれからも、支えてやって欲しい。よろしくお願いします」
涙と共に、私に頭を下られた殿様……一国のご領主であられるのに……
「はい。 お誓い致します。この先も楓禾姫様を 支え守り抜くと」
「どうかな? 湖紗若。稜弥は楓禾姫を任せるに足る男かな?」
先ほどの涙どこいったのですか? どこか、面白そうに湖紗若様に尋ねられた殿様。
「はい。リョウヤも フウひめさまを まかせられます けど エイシも どうなるの でしょう?」
大真面目な湖紗若様……
「ふ、ふふ……アハハハハ!」
殿様……大爆笑されている。けど。
満足そうに笑っている湖紗若様。しかし。
「稜弥も、湖紗若のお眼鏡に叶ったようだぞ! 良かったな!」
殿様と湖紗若様は、満足でしょうが……
『も』って……詠史殿……も……って事ですよね……
けど、楓禾姫様への想いは諦めませんから……
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