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爽から凛実の方へ
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爽の呼び掛けで、皆は、部屋の中央に集まると円を描くように座り。
「ふふ、湖紗若の幸せそうな顔」
楓菜の方の膝枕にて、本格的に眠ってしまっている湖紗若に目を細める爽の言葉に、皆も湖紗若を見て、あまりの可愛らしさに笑みがこぼれた。
「楓菜の方に、凛実の方何を熱心に話されていたのですか?」
爽の問いかけに、楓菜の方に、凛実の方は。
『うふふ』
と 目を見交わせて笑うと。
「私、楓禾姫と湖紗若が生まれた時の名前の由来を話した日の光景を、鮮明に思い出しましたの」
「それで、鈴の名前の由来は何ですか? と、いう話になりました」
「なるほど……鈴は『純粋で綺麗な心』『人に愛され心優しき人』と願いを込めて名付けたのですよね。懐かしいですね」
爽も、その時の想いを思いだしていた。幸せで嬉しくて……感情の高ぶりを抑え切れずに興奮しながら話をしたな……と。
楓禾姫が、微笑みながら、潤んでくる瞳をどうしようも出来ない自分を心配そうに見つめているのを感じて。
「お父上様? どうされました?」
労るように尋ねてきて。
(本当に楓禾姫は……)
願い通り、人を和ませる子に成長してくれて。尚且つ、人の心の機敏に聡くて、優しく寄り添う良い子に育ってくれた……
と。感慨にばかり浸っている時ではない。楓菜の方に、凛実の方に伝えなくては……
「凛実の方……」
「はい……」
和やかだった空気が。爽の声音が緊張を帯びたのを、皆感じて。
「凛実の方…… 同じ部屋でするような話ではなかったね。先ほどの話聞こえていたのであろう?」
瞬間、涙を溢れさせた凛実の方。
「……」
「外喜のせいで、貴女は色々な事を言われたり、噂されたり。 たくさん苦しめてすまなかった」
「殿様のせいでは……」
鈴となずなが、凛実の方の背中を両側からさすっている。
「凛実の方。鈴を妹、弟想いの心優しき人間に育ててくれてありがとう。貴女と同じ。純粋で綺麗な心の子だ。稜禾詠ノ国を背負って立つ事となった鈴を、 これからも見守り支えてあげて欲しい。 私も鈴を支えると約束する」
「はい。 ありがとうございます……殿様……叔父の外喜の、様々な悪事の為に……」
「違う凛実の方。六年前の事件の時に、 冷静に箝口令を出してくれてありがとう。政岡家の瑠喜殿と、奥方の凛夏様がいて下さったから、外喜に屈する事なく、桜家は今日の日を迎える事が出来たのだから。感謝している。ありがとう」
「爽様……」
「お父上、お母上に、優しい言葉を掛けて下さりありがとうございます」
「鈴は優しい子だ。 これからも、お母上を大切にしてあげて欲しい。なずなも宜しく頼みます」
「はい。殿様」
溢れる涙を止められなくなった母の背中をさする鈴の瞳にも、涙が浮かんでいた。そしてなずなの瞳にも……
「ふふ、湖紗若の幸せそうな顔」
楓菜の方の膝枕にて、本格的に眠ってしまっている湖紗若に目を細める爽の言葉に、皆も湖紗若を見て、あまりの可愛らしさに笑みがこぼれた。
「楓菜の方に、凛実の方何を熱心に話されていたのですか?」
爽の問いかけに、楓菜の方に、凛実の方は。
『うふふ』
と 目を見交わせて笑うと。
「私、楓禾姫と湖紗若が生まれた時の名前の由来を話した日の光景を、鮮明に思い出しましたの」
「それで、鈴の名前の由来は何ですか? と、いう話になりました」
「なるほど……鈴は『純粋で綺麗な心』『人に愛され心優しき人』と願いを込めて名付けたのですよね。懐かしいですね」
爽も、その時の想いを思いだしていた。幸せで嬉しくて……感情の高ぶりを抑え切れずに興奮しながら話をしたな……と。
楓禾姫が、微笑みながら、潤んでくる瞳をどうしようも出来ない自分を心配そうに見つめているのを感じて。
「お父上様? どうされました?」
労るように尋ねてきて。
(本当に楓禾姫は……)
願い通り、人を和ませる子に成長してくれて。尚且つ、人の心の機敏に聡くて、優しく寄り添う良い子に育ってくれた……
と。感慨にばかり浸っている時ではない。楓菜の方に、凛実の方に伝えなくては……
「凛実の方……」
「はい……」
和やかだった空気が。爽の声音が緊張を帯びたのを、皆感じて。
「凛実の方…… 同じ部屋でするような話ではなかったね。先ほどの話聞こえていたのであろう?」
瞬間、涙を溢れさせた凛実の方。
「……」
「外喜のせいで、貴女は色々な事を言われたり、噂されたり。 たくさん苦しめてすまなかった」
「殿様のせいでは……」
鈴となずなが、凛実の方の背中を両側からさすっている。
「凛実の方。鈴を妹、弟想いの心優しき人間に育ててくれてありがとう。貴女と同じ。純粋で綺麗な心の子だ。稜禾詠ノ国を背負って立つ事となった鈴を、 これからも見守り支えてあげて欲しい。 私も鈴を支えると約束する」
「はい。 ありがとうございます……殿様……叔父の外喜の、様々な悪事の為に……」
「違う凛実の方。六年前の事件の時に、 冷静に箝口令を出してくれてありがとう。政岡家の瑠喜殿と、奥方の凛夏様がいて下さったから、外喜に屈する事なく、桜家は今日の日を迎える事が出来たのだから。感謝している。ありがとう」
「爽様……」
「お父上、お母上に、優しい言葉を掛けて下さりありがとうございます」
「鈴は優しい子だ。 これからも、お母上を大切にしてあげて欲しい。なずなも宜しく頼みます」
「はい。殿様」
溢れる涙を止められなくなった母の背中をさする鈴の瞳にも、涙が浮かんでいた。そしてなずなの瞳にも……
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