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 鈴の戦い

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 鈴の視点
 
   なずなを背負い、桜桃城の左側。渡り廊下の先に建つ西櫓から、前方右斜め前の三の丸庭園内に建つ外喜の屋敷に向かいながら。


「見張りがいないな」


 呟いてしまった。

「詠史か……」

 きっと、詠史の仲間、お庭番達が暗躍したんだな。

 なずなは、 多分捻挫をしているし。本丸御殿(桜桃城の裏にある)に残して行こうと思ったけど。

 一人で気を揉んで待っているなんて無理! 楓禾姫と湖紗若の所に早く行きたい! 


 その想いが凄い伝わって来て。その気持ちも良く分かるからね。 一緒に行く事にしたんだ。


 だけど一言、言ってやんなくちゃ。


「なずな! 『私がいたら鈴様は、 自由に動けないんじゃないか。足手纏いなんじゃ』 なんて事を考えてんだったら、私は怒るからな!」

「……」


 図星か……


「分かるよ。なずなも、楓禾姫も 人に甘えるってのが苦手で、何でか自分に自信がなくて。 自己評価が低すぎるんだもん」


「そんな事は……鈴様も、甘えるのが苦手ではありませんか」


「 甘え下手か……湖紗若も、稜弥も。詠史もだよな。って!」

「皆、って事ですね?」


「うん(笑)。まぁ、とにかく! 背負い投げをして敵をやっつけたのは誰だ? なずなは、役にたってんだよ!」


「はい……」


 なんて……私となずなは、どこかのんびりとした会話をしてたんだ。


 外喜の屋敷の居室の前の、障子戸の前には、部屋の中の様子を伺っている稜弥がいて。一気に緊張感が高まった。なずなも同じ。感じ身体が強張っている。


 出来れば、部屋の中を確認したいと思ったんだ 。と、なずなが極々小さな声で『降ろして下さい』って。


 こういうね。気配りの出来る所が私には…… 好ましいと思う所な訳で。


 悪いけど、お言葉に甘えて。なずなをゆっくりと床に降ろすと。稜弥が場所を開けてくれて。私は慎重に音を立てないように中を確認した。

 上座に楓禾姫と。湖紗若。下座に外喜。障子戸の近くに、ゆずなと、おゆり。


(ん? 気配がする)

 天井を見上げると詠史……

 楓禾姫の右斜め後方の、襖の奥には……

  (母上様?)

 母上様まで、いらした事に私は動揺してしまって。

 饅頭とお茶を目にして、なずなが小刻みに震え出して。私も二重に怖くなって……

(そんな……)

「フウ ひめしゃ……さま わたしに おおきいほう くだ……さ……い」

 その時、湖紗若の健気な決意が……


 それを合図に。詠史が私に。

『 湖紗若の耳を塞いで』

 そう合図を送って来て。

 私は頷くと、障子戸を音を立てないようにもう少し開けると。楓禾姫に湖紗若の両耳を塞ぐよう、しぐさと口の動きで伝えた。

その隙に、稜弥が楓禾姫と湖紗若に、より近い襖の入り口前へ。母上のいる場所に移動して行ったんだ。


 楓禾姫は、湖紗若を戸喜の視界から隠すようにして。 湖紗若の両手で 耳を塞がせると。自身は湖紗若をぎゅっと抱きしめて……


 -バァン!-

 バァンと、 音がして次の瞬間、煙幕に包まれて……








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