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せつない恋に気づいて……
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仲良く手を繋ぎ、楓禾姫と湖紗若は、鈴となずなを屋根裏部屋に残して階下へ降りていってしまい……
残された稜弥と詠史は……慌てて二人を追って階下の自室へ。戻る前に……楓禾姫と湖紗若が連れだって楓禾姫の部屋に入って行ったのを見送ると。
何となく、その場から立ち去りがたい稜也と詠史。
「少し……話しでもしますか? 詠史殿?」
「そうですね。稜弥様……」
楓禾姫と湖紗若の居間空間の真ん中に、持女達の詰所がある(鈴、爽、凛実の方の部屋の隣にも詰所が、ある)
日中、交代にて見張りをし、夜は宿直の者が主に使用する部屋。
楓禾姫の部屋の左側には、稜弥の使用する部屋がある。
楓禾姫が、日中居間で過ごしている時に控え。父の勇、詠史や鈴と簡単な報告なら交わし。
(有事 《あってはならぬが》に備え……夜間も控えさせて頂こう……)
と、宿直をしたり。(家臣達の屋敷の建つ敷地内に、もちろん朝比奈家もあるのだが……)
そこにて、稜弥と詠史は顔を付き合わせていると。
『フウひめしゃま? いっしょに ねてよいで……しゅ……すか?』
そう、楓禾姫に甘えている湖紗若の声が。
湖紗若は、勉学に関しては頭も良く覚えも良い。しかし、少し小さな体格。体力の面でも風邪を引きやすく。言葉も少し……特に『さしすせそ』の『し』の発音が苦手であった。
湖紗若本人も、きちんとした発音に言い直したり、努力し。楓禾姫と鈴が共に練習したり。稜弥と詠史も気を付けている(時に注意申し上げる)為、ほぼ治っている。
(ただし。楓禾姫やなずなに甘えたい時は、意図的に使っている節あり)
『良いですよ。一緒に休みましょうね。湖紗若様』
満面の笑みで、答えているだろう楓禾姫の声も聞こえる。
「これからですね」
「はい……」
「私は、時に先走ってしまう事があって。 殿様の動きについて『何か意味があってされている事のように思います』と言ったり……」
「それは!」
詠史は、思わず強めに稜弥の言葉を遮ってしまい、慌てて声音を落とすと。
「失礼致しました……それは……稜弥様が冷静に物事を見極め。桜家の事を考えておられるから……ですよ」
(それは、稜弥様が楓禾姫をお想い、楓禾姫の事を一番に考えた視点で物事を動かし……優しく楓禾姫を見つめておられるから……)
「……ありがとう。詠史殿の穏やかさは、心が疲弊しそうな時に、安心感をくれる……」
(桜家……政岡家への私怨より、楓禾姫様への思慕が勝ったから、穏やかに楓禾姫様を見つめる事が出来るのですね……)
--
「鈴様も、交えて良く話し合わねば……殿様は、楓禾姫様と湖紗若様に。まだ話ておられない事があるようでしたし」
「楓禾姫も。殿様の動きに付いて……六年前の出来事で、まだ知らされていない事は何だろうと考えておられるようですしね」
「湖紗若様も、涙で『一人残すな! 秘密を教えろ!』と抗議されて来ましたね。今は、冴多姓を名乗ってはいるけれど……」
「はい。お小さくても『桜家をしょってたっている人間なのだ』という……」
「覚悟が見えました……」
稜弥と詠史は、言葉を揃え言うと。
(鈴様になずなも含めて)
(鈴様になずな殿も含めて)
桜家。政岡家を。外喜の好きにはさせない。と誓いを新たにして。
(楓禾姫様を守り抜く!)
(楓禾姫を守り抜く!)
──
しかし……
鈴は、きっと。堂々と『なずなを守る!』宣言をしたと思われる。あの状況の中で。
それに比べて……
(私のお想いは、伝える以前に……楓禾姫様に気がついてさえ頂けていない状況……)
(私のお想いは、伝える以前に……楓禾姫に気がついてさえもらえていない状況……)
ハァ
ハァ
思わず、ため息する稜弥と詠史であった。
残された稜弥と詠史は……慌てて二人を追って階下の自室へ。戻る前に……楓禾姫と湖紗若が連れだって楓禾姫の部屋に入って行ったのを見送ると。
何となく、その場から立ち去りがたい稜也と詠史。
「少し……話しでもしますか? 詠史殿?」
「そうですね。稜弥様……」
楓禾姫と湖紗若の居間空間の真ん中に、持女達の詰所がある(鈴、爽、凛実の方の部屋の隣にも詰所が、ある)
日中、交代にて見張りをし、夜は宿直の者が主に使用する部屋。
楓禾姫の部屋の左側には、稜弥の使用する部屋がある。
楓禾姫が、日中居間で過ごしている時に控え。父の勇、詠史や鈴と簡単な報告なら交わし。
(有事 《あってはならぬが》に備え……夜間も控えさせて頂こう……)
と、宿直をしたり。(家臣達の屋敷の建つ敷地内に、もちろん朝比奈家もあるのだが……)
そこにて、稜弥と詠史は顔を付き合わせていると。
『フウひめしゃま? いっしょに ねてよいで……しゅ……すか?』
そう、楓禾姫に甘えている湖紗若の声が。
湖紗若は、勉学に関しては頭も良く覚えも良い。しかし、少し小さな体格。体力の面でも風邪を引きやすく。言葉も少し……特に『さしすせそ』の『し』の発音が苦手であった。
湖紗若本人も、きちんとした発音に言い直したり、努力し。楓禾姫と鈴が共に練習したり。稜弥と詠史も気を付けている(時に注意申し上げる)為、ほぼ治っている。
(ただし。楓禾姫やなずなに甘えたい時は、意図的に使っている節あり)
『良いですよ。一緒に休みましょうね。湖紗若様』
満面の笑みで、答えているだろう楓禾姫の声も聞こえる。
「これからですね」
「はい……」
「私は、時に先走ってしまう事があって。 殿様の動きについて『何か意味があってされている事のように思います』と言ったり……」
「それは!」
詠史は、思わず強めに稜弥の言葉を遮ってしまい、慌てて声音を落とすと。
「失礼致しました……それは……稜弥様が冷静に物事を見極め。桜家の事を考えておられるから……ですよ」
(それは、稜弥様が楓禾姫をお想い、楓禾姫の事を一番に考えた視点で物事を動かし……優しく楓禾姫を見つめておられるから……)
「……ありがとう。詠史殿の穏やかさは、心が疲弊しそうな時に、安心感をくれる……」
(桜家……政岡家への私怨より、楓禾姫様への思慕が勝ったから、穏やかに楓禾姫様を見つめる事が出来るのですね……)
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「鈴様も、交えて良く話し合わねば……殿様は、楓禾姫様と湖紗若様に。まだ話ておられない事があるようでしたし」
「楓禾姫も。殿様の動きに付いて……六年前の出来事で、まだ知らされていない事は何だろうと考えておられるようですしね」
「湖紗若様も、涙で『一人残すな! 秘密を教えろ!』と抗議されて来ましたね。今は、冴多姓を名乗ってはいるけれど……」
「はい。お小さくても『桜家をしょってたっている人間なのだ』という……」
「覚悟が見えました……」
稜弥と詠史は、言葉を揃え言うと。
(鈴様になずなも含めて)
(鈴様になずな殿も含めて)
桜家。政岡家を。外喜の好きにはさせない。と誓いを新たにして。
(楓禾姫様を守り抜く!)
(楓禾姫を守り抜く!)
──
しかし……
鈴は、きっと。堂々と『なずなを守る!』宣言をしたと思われる。あの状況の中で。
それに比べて……
(私のお想いは、伝える以前に……楓禾姫様に気がついてさえ頂けていない状況……)
(私のお想いは、伝える以前に……楓禾姫に気がついてさえもらえていない状況……)
ハァ
ハァ
思わず、ため息する稜弥と詠史であった。
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