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爪を隠した姉弟

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    話しも終わり、ふとした瞬間、なずなは、にこやかだった湖紗若が泣き出しそうな表情をしている事に気付く。


(楓禾姫様に、お甘えになりたくなられたのかしらね)

気を張っていたのが、解けて。楓禾姫様に逢いたいけれど……


  「湖紗若様?こちらから屋根裏部屋の様子を見にまいりませんか?」

年上である自分が、動いて差し上げねば。


「うん。いく」

 どこか、ホッとしたような表情を見せた湖紗若。二人で屋根裏部屋に向かう事にした。

--

    屋根裏部屋の様子を、扉の外で伺っていると。

「誰です?」

誰何した楓禾姫。

扉の内外で、話声など、物音はしていなかったから……かもしれない。けど……分厚い扉で遮られているはずなのに……

稜弥に、詠史、鈴は思った。

(確かに聞こえた……けど)


物音や、人の気配を感じる訓練?や、日々気を付けている自分達でも中々……まぁ、お花や、お茶、裁縫などより、体術、剣術の鍛練に瞳を輝かせるような姫様ではあるけど……


「フウ ひめ しゃま! 」

楓禾姫の声に、中に入って来た湖紗若は、嬉しそうに楓禾姫に抱き付くと。

「ごめんなさい。おはなし おわりましたか?」

気遣わし気に尋ねている湖紗若。

「大丈夫よ。遅くなりましたね。湖紗若様?寂しくなりましたか?」

楓禾姫は、少しからかい気味に。

「はい!」

楓禾姫には素直に『寂しかったです!』と、甘えて訴える湖紗若であった。

--
   
  楓禾姫と湖紗若は、二人で屋根裏部屋より下がりましょうと話をしていたのだが。

「フウ ひめしゃま の おへやに いきます。なじゅな リン にいしゃま  それでは」

(え?湖紗若様?)

楓禾姫と湖紗若は、鈴となずなを屋根裏部屋に残し、階下へ降りていってしまった……

稜弥と詠史は、呆気に取られながらも、階下の自室へ戻るしかなく……






















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