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幸せの国で……
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障子戸を開けて、爽が見たものは……
自分の身体の左隣に、寝かせた湖紗若が大泣きしているのを、なだめようとしているのだろうか?
うつ伏せの体勢にて寄り添いながら、左手を湖紗若の胸元に軽く乗せ……
「楓菜様っ、楓菜姫様っ」
爽は、静かに、そっと。楓菜の方を上向きにすると……
楓菜の方の両頬に涙が……スッっと伝わって……
楓菜の方が、 爽の声に反応してくれたように…… 爽には感じられて……
しかし、静かに目を閉じた楓菜の方……
「楓菜姫様?」
恐る恐る確認。かろうじて……息をされている。
「薬師を呼べ!」
──
しばらくして。
「殿様、薬師が参られました」
使い番の者の先触れに。
「薬師……?」
「爽殿。貴方様が指示なされたではありませんか……気を確かに……」
共に、楓菜の方の部屋に来た、爽の母の早月が答える。
その瞳には涙が溢れている。
──
一方、部屋に戻って来た凜実の方の見たものは……
腹心の持女達に、箝口令《かんこうれい》を敷くと、殿に知らせるべく、使いを出し。部屋の片隅にいる、こずえを隣の間に……と指示し。又、家族への使いも割り振ると……
「申し訳ございませんっ。楓菜の方様っ」
涙の止まらぬ、凛実の方。
──
「母上様……楓禾姫の傍に付いていてあげて下さいませんか? ……凛実の方……鈴を連れ、母上と一緒に……湖紗若の面倒を頼みたい……」
「はい……かしこまりました」
楓禾姫……こちらに向かう前、動揺した姿を見せてしまった……
敏感な楓禾姫は、何かを察したのだろう。
「私もまいります!」
母の所に 一緒に連れてって下さい。というように、泣き出した楓禾姫……
(許しておくれ楓禾姫……)
現実を受け止められないまま、 薬師の背中を見つめていた 爽。
「殿様、楓菜の方様がお呼びです」
「楓菜様? 良かったご無事で……」
涙に濡れた、顔にて楓菜の方に声を掛けると。
「こずえは、何も……咎め無いように……凛実の方も預かり知らぬ事です……」
(こんな時でも、ご自分の事より、他の者達の心配ですか……)
楓菜姫様らしいと、思いつつ。
「分かっております。外喜は見つけ次第……」
「外喜殿は、子供達に手を掛けないと約束致しました」
「楓菜姫様?」
「もう……楓禾姫と、湖紗若を……大人の都合に巻き込みたく無いと……好きにしたら良いと、外喜殿に申してしまいました。元は、政岡家も桜家の……鈴様が統治しても構わないのです。私は……成人するまで……外喜殿に……子供達が成人してから……」
「外喜の毒牙から守りつつ、力を付けさせて。得意になっている奴より、取り戻そう? ですね?」
「……ふふ」
「楓菜姫様? 大丈夫でございますか?」
爽は、話の出来るの楓菜方に、安堵していたのだけど……
(まるで、気力を振り絞り、言葉を残されようとしているような……)
「楓菜姫様! お、お気を確かに……」
急激に襲って来た恐怖……
「楓禾姫を。湖紗若を。爽様を。鈴様を。凛実の方も、守れたのなら……稜弥と、詠史の事にも、 気を配ってあげて下さいませね。こずえは今まで通りに……基史殿に良く謝って下さいませ……」
そこまで言うと涙を溢れさせた、楓菜の方。
「爽様と、楓禾姫、湖紗若と…… 何も煩わしい事の無い。幸せの国で暮らしとうございます……」
綺麗な微笑みを浮かべた楓菜姫は……
「楓菜姫様っ、しっかりなさいませ! 爽を一人になど…… ずっと一緒にして下さいませ!」
城内に爽の嘆きが響き渡ったのだった……
自分の身体の左隣に、寝かせた湖紗若が大泣きしているのを、なだめようとしているのだろうか?
うつ伏せの体勢にて寄り添いながら、左手を湖紗若の胸元に軽く乗せ……
「楓菜様っ、楓菜姫様っ」
爽は、静かに、そっと。楓菜の方を上向きにすると……
楓菜の方の両頬に涙が……スッっと伝わって……
楓菜の方が、 爽の声に反応してくれたように…… 爽には感じられて……
しかし、静かに目を閉じた楓菜の方……
「楓菜姫様?」
恐る恐る確認。かろうじて……息をされている。
「薬師を呼べ!」
──
しばらくして。
「殿様、薬師が参られました」
使い番の者の先触れに。
「薬師……?」
「爽殿。貴方様が指示なされたではありませんか……気を確かに……」
共に、楓菜の方の部屋に来た、爽の母の早月が答える。
その瞳には涙が溢れている。
──
一方、部屋に戻って来た凜実の方の見たものは……
腹心の持女達に、箝口令《かんこうれい》を敷くと、殿に知らせるべく、使いを出し。部屋の片隅にいる、こずえを隣の間に……と指示し。又、家族への使いも割り振ると……
「申し訳ございませんっ。楓菜の方様っ」
涙の止まらぬ、凛実の方。
──
「母上様……楓禾姫の傍に付いていてあげて下さいませんか? ……凛実の方……鈴を連れ、母上と一緒に……湖紗若の面倒を頼みたい……」
「はい……かしこまりました」
楓禾姫……こちらに向かう前、動揺した姿を見せてしまった……
敏感な楓禾姫は、何かを察したのだろう。
「私もまいります!」
母の所に 一緒に連れてって下さい。というように、泣き出した楓禾姫……
(許しておくれ楓禾姫……)
現実を受け止められないまま、 薬師の背中を見つめていた 爽。
「殿様、楓菜の方様がお呼びです」
「楓菜様? 良かったご無事で……」
涙に濡れた、顔にて楓菜の方に声を掛けると。
「こずえは、何も……咎め無いように……凛実の方も預かり知らぬ事です……」
(こんな時でも、ご自分の事より、他の者達の心配ですか……)
楓菜姫様らしいと、思いつつ。
「分かっております。外喜は見つけ次第……」
「外喜殿は、子供達に手を掛けないと約束致しました」
「楓菜姫様?」
「もう……楓禾姫と、湖紗若を……大人の都合に巻き込みたく無いと……好きにしたら良いと、外喜殿に申してしまいました。元は、政岡家も桜家の……鈴様が統治しても構わないのです。私は……成人するまで……外喜殿に……子供達が成人してから……」
「外喜の毒牙から守りつつ、力を付けさせて。得意になっている奴より、取り戻そう? ですね?」
「……ふふ」
「楓菜姫様? 大丈夫でございますか?」
爽は、話の出来るの楓菜方に、安堵していたのだけど……
(まるで、気力を振り絞り、言葉を残されようとしているような……)
「楓菜姫様! お、お気を確かに……」
急激に襲って来た恐怖……
「楓禾姫を。湖紗若を。爽様を。鈴様を。凛実の方も、守れたのなら……稜弥と、詠史の事にも、 気を配ってあげて下さいませね。こずえは今まで通りに……基史殿に良く謝って下さいませ……」
そこまで言うと涙を溢れさせた、楓菜の方。
「爽様と、楓禾姫、湖紗若と…… 何も煩わしい事の無い。幸せの国で暮らしとうございます……」
綺麗な微笑みを浮かべた楓菜姫は……
「楓菜姫様っ、しっかりなさいませ! 爽を一人になど…… ずっと一緒にして下さいませ!」
城内に爽の嘆きが響き渡ったのだった……
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