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守るべき家族の為に……
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五年後。*卯月《うづき》
楓菜の方の部屋-
「凛実の方様、お呼び立てして申し訳ありません」
「いえ……」
「殿が、数日前より体調を崩されて、床に臥せっておりますの」
楓菜の方は、自ら立てたお茶を凛実の方に差し出すと。
「と、殿様はどうなされたのですか? どこがお悪いのですか?」
瞬間、楓菜の方は、 相手を探るような問い掛けをしたのを恥じた。凛実の方は 関わってはいないのだ。と確信し、安堵して。
「殿が、一月程前に外喜殿に『商人より 買付けたお茶』を頂いたのです。 身内の者達に相談した所、飲まない方が良いと…… 数日前今度は『 相談したき義がある』との事で『 心配ないと』 仰せられて…… お茶を出された際に飲んでしまわれたのです」
「そんな……」
「 頂いたお茶を薬師に確認させた所、ほんの微量の…… しかし毎日飲み続ければ体調を崩してしまわれるだろうから、決して飲まないように。と言われていたのですが」
「叔父上は、お茶に? ……」
あまりの衝撃に凛実の方は震えている。
「ごめんなさいね 。貴女を責めているのではないのです。 貴女も政岡家も関わりないと分かっていますから。 殿は外喜殿の野心には、決してして屈しったりはしない! ……との思いから。 万が一の事を考えて薬師が処方してくれていた中和剤、利尿剤などを服用してから外喜殿の所に行きましたから。 やはりお茶の匂いが、封を開けた時に匂った、薬の香りがしたから。一口。口に含んだだけにしたそうです。ですから、体調崩した。というよりも、家臣を最後まで信じたい。という思いが打ち砕かれた事に…… 精神的に参ってしまって体調崩されたのではないか? と言う薬師の話でした」
「 楓菜の方様、本当に申し訳ございません。叔父が……」
(怒るべきは外喜殿……己れの感情を……凛実の方にぶつけてはならぬ……)
「凛実の方様…… 大切なお方をと守りたいがゆえに我を忘れてしまう所でした。 実は、私、懐妊致しましたの。 まだ、 殿に話してないのですけどね。 殿と共に守るべき家族が増えたのに壊されてしまうかもしれない……という恐怖に……『私』を優先してしまいました。凛実の方様。外喜殿は、貴女と鈴様の為と動いてるようで、自分の野心の為に動かれている。これでは、鈴様がいつ傷付いてしまわれます。私は、楓禾姫と生まれて来る子供を守ります。凛実の方様は、鈴様を守って下さい」
「はい……」
「 凛実の方様、お互いに力を合わせて子供達を守り、桜家を守もって行きましょうね」
「はい、楓菜の方様」
「凛実の方様、 泣いている場合じゃございませんよ。私、少し悪阻がきつくて……爽様が 早く回復されるように看病の方を任せてよろしいですか?」
凛実の方は、楓菜の方の言葉に、楓菜の方や、爽への申し訳なさ。叔父に対する怒りの涙。とは違う……表現し難い、別の涙が溢れて止まらなくなって。
「はい。 心を込めて……爽様を看病させて頂きます」
そう答えたのだった。
──
-夫婦の部屋-
爽が、凛実の方の看病により回復後。
「懐妊? ま、誠ですか? 楓菜の方!」
「はい…… ですからもう。一人で無茶をしないで。爽」
「申し訳ございませんでした」
「凛実の方にも謝って下さいませ。爽。貴方は、楓禾姫、鈴様。 生まれてくる子供を守る責任があるのですよ。お命は大切にして下くださいませ!」
自分に抱きついて泣いている楓菜の方……
愛しくて。
献身的に看病してくれた凛実の方……
愛しくて。
九つになった楓禾姫の笑顔……
愛しくて。
大切な家族の為に……爽は頑張らねばと誓うのだった……
*卯月《四月》
楓菜の方の部屋-
「凛実の方様、お呼び立てして申し訳ありません」
「いえ……」
「殿が、数日前より体調を崩されて、床に臥せっておりますの」
楓菜の方は、自ら立てたお茶を凛実の方に差し出すと。
「と、殿様はどうなされたのですか? どこがお悪いのですか?」
瞬間、楓菜の方は、 相手を探るような問い掛けをしたのを恥じた。凛実の方は 関わってはいないのだ。と確信し、安堵して。
「殿が、一月程前に外喜殿に『商人より 買付けたお茶』を頂いたのです。 身内の者達に相談した所、飲まない方が良いと…… 数日前今度は『 相談したき義がある』との事で『 心配ないと』 仰せられて…… お茶を出された際に飲んでしまわれたのです」
「そんな……」
「 頂いたお茶を薬師に確認させた所、ほんの微量の…… しかし毎日飲み続ければ体調を崩してしまわれるだろうから、決して飲まないように。と言われていたのですが」
「叔父上は、お茶に? ……」
あまりの衝撃に凛実の方は震えている。
「ごめんなさいね 。貴女を責めているのではないのです。 貴女も政岡家も関わりないと分かっていますから。 殿は外喜殿の野心には、決してして屈しったりはしない! ……との思いから。 万が一の事を考えて薬師が処方してくれていた中和剤、利尿剤などを服用してから外喜殿の所に行きましたから。 やはりお茶の匂いが、封を開けた時に匂った、薬の香りがしたから。一口。口に含んだだけにしたそうです。ですから、体調崩した。というよりも、家臣を最後まで信じたい。という思いが打ち砕かれた事に…… 精神的に参ってしまって体調崩されたのではないか? と言う薬師の話でした」
「 楓菜の方様、本当に申し訳ございません。叔父が……」
(怒るべきは外喜殿……己れの感情を……凛実の方にぶつけてはならぬ……)
「凛実の方様…… 大切なお方をと守りたいがゆえに我を忘れてしまう所でした。 実は、私、懐妊致しましたの。 まだ、 殿に話してないのですけどね。 殿と共に守るべき家族が増えたのに壊されてしまうかもしれない……という恐怖に……『私』を優先してしまいました。凛実の方様。外喜殿は、貴女と鈴様の為と動いてるようで、自分の野心の為に動かれている。これでは、鈴様がいつ傷付いてしまわれます。私は、楓禾姫と生まれて来る子供を守ります。凛実の方様は、鈴様を守って下さい」
「はい……」
「 凛実の方様、お互いに力を合わせて子供達を守り、桜家を守もって行きましょうね」
「はい、楓菜の方様」
「凛実の方様、 泣いている場合じゃございませんよ。私、少し悪阻がきつくて……爽様が 早く回復されるように看病の方を任せてよろしいですか?」
凛実の方は、楓菜の方の言葉に、楓菜の方や、爽への申し訳なさ。叔父に対する怒りの涙。とは違う……表現し難い、別の涙が溢れて止まらなくなって。
「はい。 心を込めて……爽様を看病させて頂きます」
そう答えたのだった。
──
-夫婦の部屋-
爽が、凛実の方の看病により回復後。
「懐妊? ま、誠ですか? 楓菜の方!」
「はい…… ですからもう。一人で無茶をしないで。爽」
「申し訳ございませんでした」
「凛実の方にも謝って下さいませ。爽。貴方は、楓禾姫、鈴様。 生まれてくる子供を守る責任があるのですよ。お命は大切にして下くださいませ!」
自分に抱きついて泣いている楓菜の方……
愛しくて。
献身的に看病してくれた凛実の方……
愛しくて。
九つになった楓禾姫の笑顔……
愛しくて。
大切な家族の為に……爽は頑張らねばと誓うのだった……
*卯月《四月》
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