上 下
23 / 96

生涯を共にして下さいませんか?1

しおりを挟む

『楓菜姫様。この、朝比奈爽と生涯を共にして下さいませんか?』

 人は一瞬の間、聞こえているはずなのに、言われた言葉を処理出来ない事がある。今の 楓菜姫がまさにそれであった。

 ぽかんと、爽を見つめていた楓菜姫であったが。

(なんて事。自分に都合の良い幻聴が聞こえるなんて……)

 稜禾詠ノ国を治め、桜家を継ぐのであるなら……

 己の想うお方と……

 相手は、朝比奈爽 。一つ年上の爽以外考えられなかった。

 桜家を軍事面(護衛)にて支えて来た家柄の朝比奈家。父の陽の兄、こうと、楓菜姫の乳母である、妻の早月さつきの息子の爽 。



 楓菜姫の従兄に当たる。 幼き頃より共に育った爽。ずっと慕って来た……


 しかし楓菜姫は、ハタと気付いた。爽は朝比奈家の嫡男ではないか……

 桜家を軍事面で支えて来た家の由緒ある家柄の嫡男。いずれ朝比奈家をまとめて行く立場の爽 。


(そうよ。私は、私事を優先してはならない。桜家の事を……  稜禾詠ノ国の事を第一に考えねばならない立場……)



「少し、ぼんやりしてしまったわ。ごめんなさい。爽。明日、鍛練の為に……」

「楓菜姫様!」

 爽は、自分の言った言葉を無かった事にしようと。又 、先に 楓菜姫が言った『無理難題』をも無かった事にしよう。とした楓菜姫の言い掛けた言葉を遮った。

「爽?」

「楓菜姫様。 私は幼き頃より 楓菜姫様をお慕いして参りました。楓菜姫様。この、朝比奈爽と生涯を共にして下さいませんか?」

 みるみるうちに、楓菜姫の 美しき瞳が潤んで行く。


 爽は、楓菜姫の考えている事が手に取るように分かった。


(私が、朝比奈の家を継ぐ立場であると。 お考え下さったのでしょう? 楓菜姫様)


 それに……
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

Garnet 真恋 〈ホントの恋を掴みたい〉~初恋と宝石~

桜花(sakura)
恋愛
遅咲きの初恋.咲かせたい 初恋と宝石シリーズ3弾  打算的な生き方を選んだ彼…「後悔したんだ」   彼女は今の状況にいた方が…「諦らめなきゃ」 どうにもならないよ…って思っていた だけどやはり諦めたくない!  真恋(シンコイ)~ホントの恋…Garnet 永遠の愛を貴女に イタリア料理のシェフ×児童指導員の女の子 傷付いた4人の恋愛ストーリー  彼女達を溺愛する彼彼氏達 トラウマや心に傷を抱えた人(子供達)が日々頑張って生きています

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます

おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」 そう書き残してエアリーはいなくなった…… 緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。 そう思っていたのに。 エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて…… ※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。

Orange Topaz~初恋と宝石~

桜花(sakura)
恋愛
 切ない初恋 初恋と宝石シリーズ 再会した幼馴染みの親友の妹…綺麗になったね…ずっと俺が、キミを守るから…初恋…子供の頃一度だけ会った兄の親友、心の片隅に今も…チョッとイジワルだけど優しい彼と少し内気な彼女の恋 エリートサラリーマン×内向的な女の子 真実の愛.君の悲しみを一緒に背負ってあげる 希望、喜び勇気の石純粋な愛で永遠の愛をキミに… 彼と彼女の愛.彼と友達の友情.彼女と友達の友情.妹を溺愛する二人の兄(双子)の愛.兄's達を思う彼女の友達の初恋 宝石の様に心の綺麗な幼馴染みの女の子達3人と彼女姫達を溺愛し守る騎士達幼馴染み3人、6人の恋物語

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

お飾りの侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
今宵もあの方は帰ってきてくださらない… フリーアイコン あままつ様のを使用させて頂いています。

あなたの妻はもう辞めます

hana
恋愛
感情希薄な公爵令嬢レイは、同じ公爵家であるアーサーと結婚をした。しかしアーサーは男爵令嬢ロザーナを家に連れ込み、堂々と不倫をする。

不倫をしている私ですが、妻を愛しています。

ふまさ
恋愛
「──それをあなたが言うの?」

私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです

こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。 まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。 幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。 「子供が欲しいの」 「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」 それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。

処理中です...