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生涯を共にして下さいませんか?1
しおりを挟む『楓菜姫様。この、朝比奈爽と生涯を共にして下さいませんか?』
人は一瞬の間、聞こえているはずなのに、言われた言葉を処理出来ない事がある。今の 楓菜姫がまさにそれであった。
ぽかんと、爽を見つめていた楓菜姫であったが。
(なんて事。自分に都合の良い幻聴が聞こえるなんて……)
稜禾詠ノ国を治め、桜家を継ぐのであるなら……
己の想うお方と……
相手は、朝比奈爽 。一つ年上の爽以外考えられなかった。
桜家を軍事面(護衛)にて支えて来た家柄の朝比奈家。父の陽の兄、幸と、楓菜姫の乳母である、妻の早月の息子の爽 。
楓菜姫の従兄に当たる。 幼き頃より共に育った爽。ずっと慕って来た……
しかし楓菜姫は、ハタと気付いた。爽は朝比奈家の嫡男ではないか……
桜家を軍事面で支えて来た家の由緒ある家柄の嫡男。いずれ朝比奈家をまとめて行く立場の爽 。
(そうよ。私は、私事を優先してはならない。桜家の事を…… 稜禾詠ノ国の事を第一に考えねばならない立場……)
「少し、ぼんやりしてしまったわ。ごめんなさい。爽。明日、鍛練の為に……」
「楓菜姫様!」
爽は、自分の言った言葉を無かった事にしようと。又 、先に 楓菜姫が言った『無理難題』をも無かった事にしよう。とした楓菜姫の言い掛けた言葉を遮った。
「爽?」
「楓菜姫様。 私は幼き頃より 楓菜姫様をお慕いして参りました。楓菜姫様。この、朝比奈爽と生涯を共にして下さいませんか?」
みるみるうちに、楓菜姫の 美しき瞳が潤んで行く。
爽は、楓菜姫の考えている事が手に取るように分かった。
(私が、朝比奈の家を継ぐ立場であると。 お考え下さったのでしょう? 楓菜姫様)
それに……
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