ぎゅっ。

桜花(sakura)

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有意義な時間を過ごしたのは

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  「あのね。ブロックの上に自転車とかおいてあると。困っちゃうんだ」

  
 いつもの、道。 

 
「あそこには、お花のプランター。こっちには、お店の看板」  



 目印になるモノを決めて杖で叩いて確認しているからって。

  

「道の別れ道や、段差。道が伸びているよ。って。目印なんだよ」  


 って。  



 目が見えにくい子や、見えない子。それぞれにたくさん教えてくれて。

  

 信号も。



  「音のちがいを聞き分けて。わたっているの」   

    って。 

 

「ホチョウキ外すとね。うしろに人が歩いている。とか、車の音がしないからね。ちょっとこわいの」  


   補聴器をして、音を拾いすぎても。補聴器を外して音の確認が出来なくても。 

  
 「不安な時があるよ」  

 って。耳の聞こえずらい子が教えてくれて。   
  けどね。


  「耳が聞こえなくても、目が人よりよく見えるからだいじょうぶなの」 


 「メがおミミのかわりもしてくれるの」

   って。

 
    目の見えない子も笑って教えてくれて。  



 かえって。拓眞に、マミ、愛朱実、朔弥の方が。 



 「元気をたくさんもらえて。皆に逢えて良かった」 



  って、心から思ったのだった。


 

 「車椅子も、少しでも段差があると一人じゃ超えられないから、声をかけてくれるとうれしいです」  

 

  車椅子に乗っている子も、そう笑ってくれて。    

  

  しかし……


   「お風邪でね、お店がお休みになっちゃった時は 。ラーメン屋さんの音とか、におい、とかが消えちゃって。いつもの道を歩くのにこわかったよ」



   「お店とか休みになってね。静かすぎて。あまり人も歩かなくなったでしょ? だから、 いつも以上に音が聞こえなくなって 。でも信号の音がいつもより大きく聞こえたりしてコワかったよ」


  「みんながマスクしてるから、なにを、おはなし、してるかわからなくて、さみしかった」   


  「おウチからでちゃいけないからって。 ボクのおじいちゃん。お昼におフロとか、ゴハンとかたべに行くところに、いけなくなっちゃったんだ」   


  「私のおばあちゃんね。いつも、おさんぽのおてつだいをね、してくれる人がお休みして。車いすでお外におさんぽにいけなくなって。さみしそうだった」  


  みんな。自分のことばかりじゃなくて。


    あの風邪が流行ってから、自分の祖父母が、デイサービスに行けなくなったり、散歩に行けなくなったりして。 



   「すごい、かわいそう」  

 
   「 はやく、おカゼがおわるといいね」  

  って。  


   涙ぐんだのが。切なくて。苦しくて…… 

   子供たちを笑顔にしたい。   

 
     って始めた。紙芝居プロジェクトだったけど。   

  

     大人の方がいっぱい勉強させられて。 癒されて。  


   「凄い、有意義な時間になったな」 

  って。  


 拓眞に、マミ、愛朱実、朔弥。 そしてナミに。病院関係者 の先生方や、看護師たち。介護職員。大人が。  

 幸せを感じる一日となったのだった。
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