ぎゅっ。

桜花(sakura)

文字の大きさ
上 下
10 / 43

二人の共通点?

しおりを挟む
  「補聴器外すと、本当に近くで話ししていただかないと聞こえないんです。でも、母が将来、私が苦労しないように。って、小さい時から。発音、言語の先生をつけてくれて。手話も。でも、手話より『マミは、聞こえるんだもの。言葉の練習をしましょうね』って、発音の方に力を入れてくれて」  

「うん……」 

  マミは、一生懸命伝えようと、拓眞の涼しげな目元を見つめ。 

  拓眞は、マミの言葉を受け止めようと、綺麗な目元を見つめ。 

  互いが互いを思いやっていた。  

「でも、どうしても『さしすせそ』のさ行の発音が苦手で……さっき、で、出塚さんのお名前を噛んじゃって。うまく発音できなくて。何回もごめんなさいっ」

  (そんな事。気にしなくていいのに)  

 拓眞は、思わず口元に笑みを浮かべてしまった。  

 だけど、真剣なマミが傷つかないよう、何とか踏みとどまると。  

「マジ、出塚って、難しいのよ。俺だって噛むもん。それも、面接とかさ。大事な時噛みそうにさ。勘弁してよ! って感じ? 朝仕事初めて直ぐにさ。お客様に名前の読み方、聞かれてさ『でじゅか』って思いっきり噛んじゃった事あるしね(笑)」

   未だ、瞳には涙が見えるけど。

   クスッて笑ってくれたマミに拓眞も、今度は、大笑いして。


  「私も『かんじゃき まみ でしゅ』って『子供のころは、可愛かったわ~』って母にからかわれます。いまだに(笑)」 

  そう、返す事が出来たマミ。 

 「分かるっ。母親ってさ。何で昔の事蒸し返すのかね? 喧嘩するとさ『『でじゅか たくま でしゅ』って可愛かったのに~』とかさ。訳分かんない事叫んでさ!」  

 二人には、共通点があるみたい。  

   なんだか嬉しくて、気がつけば笑い合っていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

お飾りの侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
今宵もあの方は帰ってきてくださらない… フリーアイコン あままつ様のを使用させて頂いています。

私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。

火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。 王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。 そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。 エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。 それがこの国の終わりの始まりだった。

Ruby キミの涙 ~初恋と宝石~Ⅴ

桜花(sakura)
恋愛
Ruby キミの涙 ~初恋と宝石~Ⅴ https://estar.jp/novels/25960145  初恋と宝石シリーズ第5弾 ライターの彼氏×心に傷を追った女の子 〈正義はどこに… 〉  思う様な記事を書けず書かせてもらえず、日々理不尽に、イライラが…  そんな彼    正義が正義ではないと言われた 彼女…  キミは深く傷ついたはずなのに… いつも慈愛に満ちた瞳をしているね   キミのその涙を  笑顔に変えてあげるから…

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

処理中です...