ぎゅっ。

桜花(sakura)

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補聴器

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 マミにとっては。  

もう……穴があったら入りたいって。 こういう事言うのね。って思うくらいの。話のオンパレードだった。  

 ──   

  「昨日?   スーパー?」   

(え? 助けてくれたのって……)  

 「 おっと。 大事な事 忘れてた」  

 プチパニックに陥っている、マミとは逆に。    

  再び、紙を出してサラサラと何か書いて。マミに渡してきた。彼。  

 『でづか たくま』  


「 漢字じゃ、読み方分らないでしょ」 

  それは名前のふりがなを書いた紙で。 


  促されてマミも。  

『かんざき まみ』   

  と。書いて渡して。 


 「あ、あの。で、でじゅかさん?」   

 ボッ。   

噛んでしまったマミは、頬を真っ赤に染めて。   

恥ずかしがっているマミに。  


「出塚。でづか。ムズイよね。俺でもたまに噛むもん」   


  サラッと、気にしなくていいよ。って風に、拓眞は答えて。  

「マミちゃん……マメちゃんかぁ」   

さらに、ちいちゃく呟いて。

  (ん? マ……メちゃん)  


 声がちっちゃすぎるのと。あまり、しっかりと口開けて発音してくれなかったから、マミには、ちょっと解読不可能で。  


「スーパーでは焦っていたみたいだから。っていうか。うちの図書館の常連さんじゃん、マメちゃん。だから分かるの」  

(ど、どうしよう…… 変な汗で出てきた)


   マミはが、 今度は、青くなってるのを見て。  


「本や、返却カードとか返す時。マメちゃん、 あんまり目が合わないようにしてたっぽいし。 用事がある時はメモで示してくれてたじゃん? それに無意識だろうけどさ。本に熱中してる時。髪をかきあげた時にね。ちらっと見えちゃったの……」   


  マミは、さっと。左側の横の髪をかき上げると……   

「 気づいてらしたんですね……補聴器のこと。それに……」   


*補聴器  https://www.bloomhearing.jp/ja-jp/hearingaid/structure  Wikipedia参照    
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