ぎゅっ。

桜花(sakura)

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ぎゅっ。

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  (なんでこんな状況になってんの?)  

 頭の中? だらけなのに。


   素直に拓眞に付いて行って。気が付いたらファストフード店で、ハンバーガーのセットなんか注文しちゃってたマミ。  

 オマケに……  


「あ、あのっ。 ごめんなさいっ ! ハンバーガーの代金払いますから。それに。さっきも助けていただいて」    

  
    さっき……か……拓眞は思い返す。  

 ──-   


      マミは、ザワザワとした喧騒に表情を強張らせながら。拓眞の後ろを歩いていた。   


 拓眞が、マミに チラッと視線を向けて。 


  (緊張感漂ってるなぁ)  


 なんて、思いつつ前に向き直ると 。  


  前方から歩いてくる数人の男女のグループが…… 

おしゃべりに夢中になっていて。ほとんど前を向いて歩いてなかった。   

(たく、危ないな)  

 拓眞は。    

(大丈夫だよ)   

 安心させてあげなくちゃって思った瞬間。    

   ぎゅっ。    


  ブラックのコートの、フラップポケットに両手を入れて歩いていた拓眞の右肘。遠慮がちに左手で、ぎゅっ。ってしてきたマミがいて。    


  拓眞が振り返ると。  


  怖いよ。と言うように 表情を強張らせたマミがいた。   

  けど、マミの表情とは裏腹。拓眞は。


  (ぎゅっ。とか。可愛いすぎでしょ)  


 なんて。思ってた。    


   緩みそうな顔を引き締めると。拓眞は、庇うようにマミの目の前に立ち。若者たちが自分たちの横を通り過ぎるまで守ったのだった。  

 ──-   

  「謝らなくてくていいから。あの子たちが悪いんだし。ザワザワって人の声がしたし。昨日もさ。不安になってさ。怖かったよね?」    

  思わずマミは、ビックリして。拓眞の顔を凝視してしまっていた。   



  「だってさ。 スーパーは自分勝手な客の対応も大変だろうけどさ。接客の仕事なんだから、透明マスクを使用するとかさ。 それは俺の事でもあって。反省したんだ。 街中でだって。『自分だけが良ければ』じゃなくて。人の事をもっと気遣わなきゃって……マミちゃん、左耳が、さ?」    
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