ぎゅっ。

桜花(sakura)

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黄昏どき  

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   黄昏どき《たそがれ》   

   借りていた本を返却して。 

 
(ほんのちょっとだけ……)   


   と。気になってしまった本を手に取り、読書コーナーにて、ページをめくった、神咲 マミかんざき まみは。   


  時がたつのも忘れて、本の世界に引き込まれてしまい。熱中して、目を輝かせていた。  

 
      そんな時。   にゅっ……  

(ひっ)   

  熱中していた、マミの目の前。軽く握られた右手のこぶしが。小さく机を叩いて来て……   

怖すぎて、声も出ないマミ。恐る恐る顔をあげると。透明アクリル板の向こう側。   

  マミの目の前の椅子に腰掛けた、若い男性がいて。   

  さらに、マミを驚かせたのは。男性が透明なマスクをしていた事。   


   そのマスクは。鼻とアゴのラインを、しっかりと保護する形の。ホコリの一つまでしっかりと防ぐ、より本格的なマスクで……   


  目が合ってしまったマミが、動揺して固まっているのと対照的に。男性はニコリと微笑んで……    

「あ、そうだ!」  
 
   と。男性は言うと、おもむろに席を立つと、カウンターへ向かって行って。   

    マミは。  

(ビックリした……)    

   右手で、胸を軽く抑え。 

 

  (落ち着かなくちゃ)   


   (フッ~)   

    っと。目をつむり、深呼吸をした。   
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