血塗れダンジョン攻略

甘党羊

文字の大きさ
上 下
131 / 146

褒美

しおりを挟む
 触り心地は手に吸いつかないブニブニで産毛が気持ち悪い、体温は生暖かい、鳴き声はギューギューって音を出す、目は見えてるのかわからないが俺を感知して追い掛けてくる、芋虫のようなあの動きはしないで滑るように移動する。

 幼虫ってこんなんだったっけ? ダンジョンやモンスターの常識がわからない。
 結論、コレに愛着が湧きようがない。

 最下級エリクサーとコレを俺に献上した女王蜂と取り巻きは残った三つの巣へと逃げるようにして帰っていった。残された俺は幼虫をその場にソッと置いて階段に行きそそくさと降りていったら、後ろからギューギューギューギュー五月蝿い鳴き声を喚き散らしながら幼虫が俺を追いかけてきたのは軽くないホラーだった。

 たくみは のろいのアイテムを てにいれた▽
 ようちゅう からは にげられない▽

 アホほど身体を食い散らかされて血を大量に失った挙句、経験値は獲得出来ずにコブ付きになるとかさぁ、踏んだり蹴ったりが過ぎるんじゃないかな。
 押し付けられたコレは、今は懐いているフリをして油断を誘い続けて、いつか俺の寝首を搔くンではないかという不安が拭いきれないから要らないんだけど。
 そう、匠の中で長い年月かけて堆積していった自分以外の知的生命体に向く深い不信感はそうそう払拭できるものではなかった。

「いっその事、あの妖精の二の舞に......」

 鬱々としていく心はそんな事を考えてしまう。
 だが、そんな中でもエキドナの子達の事も浮かんできてしまっていまいち爆散に踏み切れなかった。それにあのクズ家族も同じ様な状況になったらきっと、女王蜂と同じ様な行動をして命乞いをするだろう。その時に差し出されるのは勿論、俺一択。

 うーん......散々モンスター共を殺しまくってるヤツが今更とは思うんだけど、悔しいけどねぇ心情的にまだ、コイツを殺すに足りる理由がない。でも育てる気も世話をする気も無いんだよ。押し付けられただけだから義務も何もないけど一応同行はする......他の事はコイツが生きたければ勝手に生きる努力をするだろう。と言うかに育てられた俺に何かを育てるとか不可能だもの。

「あー......腕にぴったり張り付くのやめてくんね?」
「ギュゥゥゥ」

 追いつかれた俺は腕に幼虫を装備してしまった。強制イベントほんと嫌い。
 腕を鋭く振ってみても、どっかに吸盤でもついてるのかってくらい離れる気配がない。やっぱり呪いの装備だった。コイツあのままだと捨てられていたってわかったりしてんのかな......てか女王蜂んとこに何故戻らなかったんだよ......

「今なら帰れるから帰れよ......」
「ギュー」

 頭を振って断固拒否の姿勢を見せる幼虫。心做しか腕が締め付けられている気がする。
 というか、妖精は俺が握ってなかったら階段通れなかったのに何でコイツは通れたんだろう......そこが謎すぎて怖い。

 最後に強引に掴んで引き剥がそうとしたが、あのクソブーツ並にヌメヌメしだして握れなかった......その癖剥がれる気配はない。詰んだ。

「はぁぁぁぁぁぁぁ......」

 溜め息しか出ない。
 俺は全てを諦めて重くなった足を引き摺るように階段を降りていった。


 ◆◇原初ノ迷宮第七十六層◇◆


 降りた先は洞窟タイプで懐かしの一本道フロア。
 こういうのでいいんだよ、こういうので。荒みきった心が落ち着くのがわかる。

「ギュー♪」

 置いていこうとしないのに気付いたのか、幼虫の機嫌が良くなったのが腹立つ。コイツが油断した時に置いて逃げよう。

 出てくるモンスターは手強いんだろうけど、虫の群れなんかよりも簡単でアッサリと倒せた。やっぱり人型や四足獣タイプが正義だわ。

 この階層でレベルは2上がった。
 血は6ℓ増えた。
 次は77という縁起のいい数字。宝箱とか無いかなぁって少しワクワクしている。


 ◆◇原初ノ迷宮第七十七層◇◆


 降りた先はモンスターハウスを彷彿とさせるワンフロアぶち抜きの大部屋タイプだった。
 これまでと違ったのは、一定間隔で宝箱が鎮座するボーナスステージだった事。降りる前にちょっと期待していた通りの77階層だったわ。
 見た感じ100個くらいは宝箱があるんだけど、でもまぁこの中の大半はミミックとかだろうけど......ミミックばかりでも此処が俺にとってボーナスステージである事は変わりない。

「さて、開けていくか!!」
「ギュー?」

 テンションの上がった俺に困惑してんじゃねぇよ幼虫。ミミックに食わせんぞ。
 気を取り直して......今の俺には魔法袋も中位収納もある。片っ端から回収してやるぜぇ!


 そう意気込んで作業する事約1時間。
 大体1分に1個のペースで計60個の宝箱を開ける壊す事が出来た。
 なんと55/60がミミックという鬼畜なダンジョンの計らいに涙がちょちょぎれそうです。尚、以前の経験によりミミック攻略法は確立出来ていたので、このようなハイペースでの攻略が出来た匠であった。

 ミミックじゃないモノは......
 1、適温の皿。乗せれば丁度いい温度になるって皿だったが、ミミック判別の際の金砕棒さんによって破損したので破棄した。
 2、自動清浄付き下着。大当たり!!
 3、静銀のナイフ。沈黙効果付きナイフは触手ナイフが乱心して砕かれた後に取り込まれていった。
 4、ランダムスキルブック。大当たり!!
 5、兎を咥えた獅子の置き物。1日1回6時間だけ置き物を中心に1m魔除けの効果がある結界を出すらしい。見た目の割に素晴らしい効果。これがあったら上で虫に集られなかったのに......


 気を取り直して残りも開けていこうか。こういいモノが出るなると俄然やる気が満ちてくる。
 もう少し殺り方......いやガワの壊し方を工夫して中のモノを壊さないようにしないと、皿みたいなどうでもいいモノじゃなかった時に悔やんでも悔やみきれないからね。

 まだ宝箱は60以上あるから何が出るか楽しみだ。ざっくりと100とか言ったけどもっとあったわ。
 ところで、腕に張り付いた幼虫が時折りビクンビクンしてるけど何してんのお前? 邪魔するなら潔く死んでくれ。



 ◆◆◆◆◆



「おっしゃ! これでラストォ!!!」
「ギュー♪」

『レベルが5あがりました』

 あれから合計75個の宝箱を開けた壊した。レベルアップのアナウンスもしっかりあって全部終わったのも確定したので万々歳だ。最後にトラップ発動とかボスミミックの奇襲とか想像してたし。
 何はともあれ終わりは終わり。ヨシ! さて、内訳はミミックは70、135個あった宝箱の内125個がミミックだった。まぁこのクソ意地の悪いダンジョンの割に当たりが合計で10個もあったのが驚き。当たりが1個か2個だけ、若しくは全スカも覚悟していたもん。

「嗚呼......ダンジョン攻略している感が凄い......」

 心地よい疲れ、目の前にはお宝、血も結構復活。77もの階層を進んできて初めてゲームでよくあるダンジョンみたいになって正直めちゃくちゃ楽しめた。
 上の階層での地獄との対比がエグい。多分この階層に辿り着かせない為のアレなんだろうね。死ね。

「ふぅ......どんなのが出たかなぁ」

 思い出した嫌なモノを振り払うようにお宝チェックを始めた。


 6、祭壇に捧げる呪物。俺に強呪耐性が無かったらこれで苦しんでた気がする手にビリビリとクる黒い箱。多分下の方でコレを使う機会があるキーアイテムだと思う。
 7、破邪の矢。持った俺の手から煙が出る矢。聖女の遺骨で作った鏃と世界樹から作ったシャフト、神鳥の羽根を使った霊験あらたかな品。弓はないから多分投げて使えって事だと思う。俺みたいモンに効果はバツグンだろう。
 8、ホームダブの翼。ポイント設定した場所へ帰れる使い切りタイプの帰還アイテム。コレで外に出れるじゃんって思ったら俺が住んでた場所やらはポイントに出てこず、クソ鎧の住処や10階層毎の安全地帯しか出てこなかった。燃やしてやろうかと思ったけど一応貴重っぽいしクソ鎧のトコへの特急券だったから残しておいた。
 9、ウンディーネの遺骸。河童の木乃伊にしか見えないけどコレを穴を掘って投げこめば枯れない泉が出来るらしい。
 10、再生獣希少種革のスラックス。消滅しない限り再生して元通りになる濃紺のスラックス。これで俺の下半身は磐石になった。この階層一嬉しいお宝で見た瞬間思わず叫んでしまった。

「......これでわざわざ戦闘前にパンイチやマッパにならないでも戦える。素晴らしい......素晴らしい......」

 再生ブーツ、清潔下着、再生スラックスを履くと色んな感情が溢れてきて止まらず、涙が頬を伝った。幼虫がギョッとしていたけど仕方ないんだよコレは。しかも履き心地まで良い。神アイテム。

「やったぜ!! アハハハハハハハッ!!!」

 全力で喜びを表して恥も外聞もなくはしゃいで回った。冷静になって死にたくなったけど悔いは無い。

「よし!! おい幼虫!! お祝いしようぜ!!」

 俺から漏れ出ていた混沌を啜ってビクンビクンしていたのが発覚した幼虫とお祝いする事にした。とりあえず気分がいいから色々な事に目をつぶってしばらくお前と居てやるよ!!

 というわけで取り出したるは最下級エリクサー!!
 俺がコレを必要になって使うなんて事は今後一切無いと思うし、ローヤルゼリーと花蜜だから不味くは無いと思うからこの機会に飲んでしまえって事でドーン!!

「ギュ......ギューウ......」

 ビクビクしながらも喜んでるっぽい幼虫。

 いやー、今日は近年稀にみるいい日だな!!!




─────────────────────────────

 吉持ㅤ匠

 人化悪魔

 職業:暴狂血

 Lv:28→35

 HP:100%
 MP:100%

 物攻:300
 物防:1
 魔攻:200
 魔防:60
 敏捷:250
 幸運:30

 残SP:62→83

 魔法適性:炎

 スキル:
 ステータスチェック
 血液貯蓄ㅤ残427.8L
 不死血鳥
 部位魔化
 魔法操作
 血流操作
 漏れ出す混沌
 上位隠蔽
 中位鑑定
 中位収納
 中位修復
 空間認識
 殺戮
 状態異常耐性Lv10
 壊拳術Lv4
 鈍器(統)Lv8
 上級棒術Lv4
 小剣術Lv7
 投擲Lv8
 歩法Lv8
 崩打
 強呪耐性Lv5
 石化耐性Lv4
 病気耐性Lv4
 熱傷耐性Lv8
 耐圧Lv3
 解体・解剖
 回避Lv10
 溶解耐性Lv6
 洗濯Lv3
 アウナスの呪縛

 装備:
 壊骨砕神
 悪魔骨のヌンチャク
 肉触手ナイフ
 貫通寸鉄
 火山鼠革ローブ
 再生獣希少種革のスラックス
 再生獣革のブーツ
 貫突虫のガントレット
 聖銀の手甲
 鋼鉄虫のグリーブ
 魔鉱のブレスレット
 剛腕鬼の金棒
 圧縮鋼の短槍
 迷宮鋼の棘針×2
 魔法袋・小
 ババアの加護ㅤ残高17000

──────────────────────────────
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜 

八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。 第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。 大和型三隻は沈没した……、と思われた。 だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。 大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。 祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。 ※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています! 面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※ ※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

劣等生のハイランカー

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す! 無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。 カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。 唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。 学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。 クラスメイトは全員ライバル! 卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである! そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。 それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。 難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。 かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。 「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」 学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。 「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」 時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。 制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。 そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。 (各20話編成) 1章:ダンジョン学園【完結】 2章:ダンジョンチルドレン【完結】 3章:大罪の権能【完結】 4章:暴食の力【完結】 5章:暗躍する嫉妬【完結】 6章:奇妙な共闘【完結】 7章:最弱種族の下剋上【完結】

OLサラリーマン

廣瀬純一
ファンタジー
女性社員と体が入れ替わるサラリーマンの話

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

現代ダンジョンで成り上がり!

カメ
ファンタジー
現代ダンジョンで成り上がる! 現代の世界に大きな地震が全世界同時に起こると共に、全世界にダンジョンが現れた。 舞台はその後の世界。ダンジョンの出現とともに、ステータスが見れる様になり、多くの能力、スキルを持つ人たちが現れる。その人達は冒険者と呼ばれる様になり、ダンジョンから得られる貴重な資源のおかげで稼ぎが多い冒険者は、多くの人から憧れる職業となった。 四ノ宮翔には、いいスキルもステータスもない。ましてや呪いをその身に受ける、呪われた子の称号を持つ存在だ。そんな彼がこの世界でどう生き、成り上がるのか、その冒険が今始まる。

日本国転生

北乃大空
SF
 女神ガイアは神族と呼ばれる宇宙管理者であり、地球を含む太陽系を管理して人類の歴史を見守ってきた。  或る日、ガイアは地球上の人類未来についてのシミュレーションを実施し、その結果は22世紀まで確実に人類が滅亡するシナリオで、何度実施しても滅亡する確率は99.999%であった。  ガイアは人類滅亡シミュレーション結果を中央管理局に提出、事態を重くみた中央管理局はガイアに人類滅亡の回避指令を出した。  その指令内容は地球人類の歴史改変で、現代地球とは別のパラレルワールド上に存在するもう一つの地球に干渉して歴史改変するものであった。  ガイアが取った歴史改変方法は、国家丸ごと転移するもので転移する国家は何と現代日本であり、その転移先は太平洋戦争開戦1年前の日本で、そこに国土ごと上書きするというものであった。  その転移先で日本が世界各国と開戦し、そこで起こる様々な出来事を超人的な能力を持つ女神と天使達の手助けで日本が覇権国家になり、人類滅亡を回避させて行くのであった。

処理中です...