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ストレス
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無惨にも地に落ちた頭。
その閉じられていた目が開く。
白目と黒目が反転した瞳がギョロギョロと忙しなく動く。まるで何かを探しているように。
暫くその場で瞳を動かしていたが探し物が見当たらない事に苛立ったのか舌打ちをした後、反転して逆方向を探し始め......
漸くお目当てのモノを見つけた。
目的のモノの惨状を見てソレは一度目を見開いた後、現状を理解し深く嘆息。不愉快さに歯が砕けんばかりに噛み締める。そして口を開け―――
◆◆◆
「..................っっ」
ゆっくりと意識が浮上してくる。
目を開けると、最初に視界へ飛び込んで来たのは地面だったので賭けには勝てたのだと安堵する。
あのまま突き刺さったままの胴体に頭部が再生していたら完全に詰みだった。
「......それにしてもどう云う原理で身体は再生しているんだろうか。刺さったままの胴体は残っているんだろうし......って、おい! どうなってる!?」
自分に死を覚悟させた忌々しい針山の方に目を移す。
憂鬱な気分で穴だらけの......それも自分の首なし死体から服を回収する為に、胴体を確認しようとしたのだが......視線の先には遺体はもちろん、血や肉片、臓物なども残っておらず、ただ穴の空いた服や下着が針に引っ掛かっているだけだった。
これまで何度も腕や脚を飛ばした経験から、今回も残った自分の亡骸から死体漁りのように服を剥ぐんだろう。自分の身体から追い剥ぎとか頭がおかしくなりそう。そんな事を思っていた。
「......なんで肉体が消えているんだ? これまでは腕や胴体、下半身とかでも切り離された所は全部残っていたのに......
えっと......そういう事なの? まさか、あの針山って......食虫植物のように消化吸収する系のヤツだったりするのか!? ......うわぁ、ダンジョンって怖ぇ」
革とかは吸収されていなかったので無機物は大丈夫なのだろう。残った物資類はリサイクルされてドロップアイテムか宝物に再利用されるとかそんな所か。
荷物類はボロボロになってしまったが、まだ大部分は使える。生き残れたとしても荷物を全ロストしてしまえばかなり精神がヤられてしまっていた。
今更最初期の頃のように腰布オンリーの蛮族スタイルでダンジョンを徘徊なんて絶対にやりたくない。ボロボロだが使えないわけではないから最悪一歩手前で止まってくれた。本当に良かった......
「......はぁ、とりあえず回収しようか。その後は素人作業になるけど簡単な補修をしなきゃなぁ」
下手に体勢を崩して再び針に捕らわれてしまわないよう慎重に一つずつ針から刺さっている私物を外していく。針をよく見てみれば自分に刺さっていた針と刺さっていなかった針の形状が若干変わっている。
この針は一度獲物を捕らえたら決して逃がさないように返しが体内で開くようになっていたんだろう。改めて思う......クソダンジョンと。
針から外した穴の空いてしまったリュックから魔石が溢れているのを見ているのが何故か無性に悲しくて悲しくて......ちょっとだけ泣きそうになってしまったのは内緒だ。
「武器類は破損無し、細かい欠けとかも無し。普通の刃物だったらこうはいかなかったな......やっぱり鈍器は最高だな。一番脆そうな肉食ナイフが無事なのが納得いかんけど......まぁコレもレアドロップぽいから謎鉱物って事なのかな」
武器類、布製品、防具、アイテムといった順番でチェックしていく。やはり布製品は無事なのは無く、防具類も同様。アイテム類は入れていたリュックや袋が破損、魔石は何個かが損壊。被害は甚大だった。
まだ未使用だった穴の空いた下着や服を、リュックやカバンの穴を塞ぐ布として再活用してアイテムが自動でドロップしてしまうのを防ぐ。
針や糸なんてないので熱した寸鉄を使って強引に圧着させた。適当な知識と腕力頼みの方法で下手したらもっと破損させてしまう危険があったがなんとか上手くいったので一安心。ババアの店は次の階層なのでそこまで保てばいい。
「なかなかファンキーなスタイルになってしまったけど、まだギリギリ文明的だからセーフ。さてと......この憎き針山の針、絶対手に入れてやる」
これは首を落とす前から考えていた事だ。生還出来たら是非ともこの針を手に入れたいと思っていた。
自分の全力金砕棒アタックをノーダメで弾いたコレはこの先絶対に役に立ってくれる。そんな気がした。
「アハハハッ! その針寄越せやァ!!!」
金砕棒より細いが殴り続けても折れる気がしない悪魔骨ヌンチャク棒で針を叩き折りに掛かる。とりあえず全力で殴り続けていれば、いくら頑丈でも摩耗して折れてくれるだろう。
......あ、そうだ。この際余ってるSPを全部物攻に振っておこう。スキルレベルアップと早く叩き折れたらいいなって事で、決してストレス発散の為に力強化しようとしてるわけではないよ。うん。
ステ振りしている時に見えた残存血液。頑張って貯めていた血液がゴッソリ減り、何故かMPまでも減っているのが気に障ったとか違うからね。
「一刻も早くッ!! バッキバキにッ!! 折れてッッ!! 禿山になっちまえやァ!! このクソ針山がァァァァァァ!!」
理不尽な悪意や事態の連続でストレスが溜まったとかそんなんじゃない。決してそんなことは無いヨ。
─────────────────────────────
吉持ㅤ匠
半悪魔
職業:血狂い
Lv:15
HP:100%
MP:42%
物攻:170→200
物防:1
魔攻:100
魔防:1
敏捷:170
幸運:10
残SP:30→0
魔法適性:炎
スキル:
ステータスチェック
血液貯蓄ㅤ残147.4L
不死血鳥
部分魔化
血流操作
簡易鑑定
状態異常耐性Lv8
拳闘Lv8
鈍器(統)Lv4
上級棒術Lv1
小剣術Lv4
空間把握Lv10
投擲Lv7
歩法Lv7
強呪耐性
病気耐性Lv4
解体・解剖
回避Lv8
溶解耐性Lv2
洗濯Lv1
■■■■■■
装備:
魔鉄の金砕棒
悪魔骨のヌンチャク
肉食ナイフ
貫通寸鉄
普通のボロボロシャツ
快適なダメージパンツ
再生獣革のブーツ
魔鉱のブレスレット
剛腕鬼の金棒
圧縮鋼の短槍
丈夫なリュック(破損)
厚手の肩掛け鞄(破損)
元微速のボロボロベルト
ババァの店の会員証ㅤ残高220
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その閉じられていた目が開く。
白目と黒目が反転した瞳がギョロギョロと忙しなく動く。まるで何かを探しているように。
暫くその場で瞳を動かしていたが探し物が見当たらない事に苛立ったのか舌打ちをした後、反転して逆方向を探し始め......
漸くお目当てのモノを見つけた。
目的のモノの惨状を見てソレは一度目を見開いた後、現状を理解し深く嘆息。不愉快さに歯が砕けんばかりに噛み締める。そして口を開け―――
◆◆◆
「..................っっ」
ゆっくりと意識が浮上してくる。
目を開けると、最初に視界へ飛び込んで来たのは地面だったので賭けには勝てたのだと安堵する。
あのまま突き刺さったままの胴体に頭部が再生していたら完全に詰みだった。
「......それにしてもどう云う原理で身体は再生しているんだろうか。刺さったままの胴体は残っているんだろうし......って、おい! どうなってる!?」
自分に死を覚悟させた忌々しい針山の方に目を移す。
憂鬱な気分で穴だらけの......それも自分の首なし死体から服を回収する為に、胴体を確認しようとしたのだが......視線の先には遺体はもちろん、血や肉片、臓物なども残っておらず、ただ穴の空いた服や下着が針に引っ掛かっているだけだった。
これまで何度も腕や脚を飛ばした経験から、今回も残った自分の亡骸から死体漁りのように服を剥ぐんだろう。自分の身体から追い剥ぎとか頭がおかしくなりそう。そんな事を思っていた。
「......なんで肉体が消えているんだ? これまでは腕や胴体、下半身とかでも切り離された所は全部残っていたのに......
えっと......そういう事なの? まさか、あの針山って......食虫植物のように消化吸収する系のヤツだったりするのか!? ......うわぁ、ダンジョンって怖ぇ」
革とかは吸収されていなかったので無機物は大丈夫なのだろう。残った物資類はリサイクルされてドロップアイテムか宝物に再利用されるとかそんな所か。
荷物類はボロボロになってしまったが、まだ大部分は使える。生き残れたとしても荷物を全ロストしてしまえばかなり精神がヤられてしまっていた。
今更最初期の頃のように腰布オンリーの蛮族スタイルでダンジョンを徘徊なんて絶対にやりたくない。ボロボロだが使えないわけではないから最悪一歩手前で止まってくれた。本当に良かった......
「......はぁ、とりあえず回収しようか。その後は素人作業になるけど簡単な補修をしなきゃなぁ」
下手に体勢を崩して再び針に捕らわれてしまわないよう慎重に一つずつ針から刺さっている私物を外していく。針をよく見てみれば自分に刺さっていた針と刺さっていなかった針の形状が若干変わっている。
この針は一度獲物を捕らえたら決して逃がさないように返しが体内で開くようになっていたんだろう。改めて思う......クソダンジョンと。
針から外した穴の空いてしまったリュックから魔石が溢れているのを見ているのが何故か無性に悲しくて悲しくて......ちょっとだけ泣きそうになってしまったのは内緒だ。
「武器類は破損無し、細かい欠けとかも無し。普通の刃物だったらこうはいかなかったな......やっぱり鈍器は最高だな。一番脆そうな肉食ナイフが無事なのが納得いかんけど......まぁコレもレアドロップぽいから謎鉱物って事なのかな」
武器類、布製品、防具、アイテムといった順番でチェックしていく。やはり布製品は無事なのは無く、防具類も同様。アイテム類は入れていたリュックや袋が破損、魔石は何個かが損壊。被害は甚大だった。
まだ未使用だった穴の空いた下着や服を、リュックやカバンの穴を塞ぐ布として再活用してアイテムが自動でドロップしてしまうのを防ぐ。
針や糸なんてないので熱した寸鉄を使って強引に圧着させた。適当な知識と腕力頼みの方法で下手したらもっと破損させてしまう危険があったがなんとか上手くいったので一安心。ババアの店は次の階層なのでそこまで保てばいい。
「なかなかファンキーなスタイルになってしまったけど、まだギリギリ文明的だからセーフ。さてと......この憎き針山の針、絶対手に入れてやる」
これは首を落とす前から考えていた事だ。生還出来たら是非ともこの針を手に入れたいと思っていた。
自分の全力金砕棒アタックをノーダメで弾いたコレはこの先絶対に役に立ってくれる。そんな気がした。
「アハハハッ! その針寄越せやァ!!!」
金砕棒より細いが殴り続けても折れる気がしない悪魔骨ヌンチャク棒で針を叩き折りに掛かる。とりあえず全力で殴り続けていれば、いくら頑丈でも摩耗して折れてくれるだろう。
......あ、そうだ。この際余ってるSPを全部物攻に振っておこう。スキルレベルアップと早く叩き折れたらいいなって事で、決してストレス発散の為に力強化しようとしてるわけではないよ。うん。
ステ振りしている時に見えた残存血液。頑張って貯めていた血液がゴッソリ減り、何故かMPまでも減っているのが気に障ったとか違うからね。
「一刻も早くッ!! バッキバキにッ!! 折れてッッ!! 禿山になっちまえやァ!! このクソ針山がァァァァァァ!!」
理不尽な悪意や事態の連続でストレスが溜まったとかそんなんじゃない。決してそんなことは無いヨ。
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吉持ㅤ匠
半悪魔
職業:血狂い
Lv:15
HP:100%
MP:42%
物攻:170→200
物防:1
魔攻:100
魔防:1
敏捷:170
幸運:10
残SP:30→0
魔法適性:炎
スキル:
ステータスチェック
血液貯蓄ㅤ残147.4L
不死血鳥
部分魔化
血流操作
簡易鑑定
状態異常耐性Lv8
拳闘Lv8
鈍器(統)Lv4
上級棒術Lv1
小剣術Lv4
空間把握Lv10
投擲Lv7
歩法Lv7
強呪耐性
病気耐性Lv4
解体・解剖
回避Lv8
溶解耐性Lv2
洗濯Lv1
■■■■■■
装備:
魔鉄の金砕棒
悪魔骨のヌンチャク
肉食ナイフ
貫通寸鉄
普通のボロボロシャツ
快適なダメージパンツ
再生獣革のブーツ
魔鉱のブレスレット
剛腕鬼の金棒
圧縮鋼の短槍
丈夫なリュック(破損)
厚手の肩掛け鞄(破損)
元微速のボロボロベルト
ババァの店の会員証ㅤ残高220
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