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鬼豚野郎
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「ッッシャオラァァ!!」
まだ敵に向かって使った事が無い悪魔ヌンチャク(棒)の初陣。ソレを豚鬼に向けて横薙ぎに思いっきり振り抜く。
全力ダッシュ&全力のスウィング。
これで決まるな......と思っていたが、なんと豚鬼はその攻撃に反応し手に持っていたマチェットのような武器でガードを試みた。
これには少し驚いたモノの、そんな単純なガードではこの一撃は防げない。
インパクトの瞬間に魔力を込めて悪魔ヌンチャクモードに移行させる。
防いだ!! とオーガオークが思った一撃。これで決まりだろ!! と吉持が思った一撃。
オーガオークがガードに使用したマチェットに伝わる衝撃は少なく、見れば敵の振った棒は丁度中間から折れてこちらの頭部へと向かってきているではないか。
「ブギィィィィィィィィイ!!!」
このままでは殺られる。あの一撃を喰らってはならない。そう直感したオーガオークは、戦闘開始早々奥の手である緊急回避手段を使わざるを得なくなった。
「......ッッ!? そんなのアリかよ!!」
なんとオーガオークは首を亀やスッポンのように体内に引っ込め、初見殺しとも言えるヌンチャクモードの攻撃を回避。そして回避だけでは飽き足らずこちらへと反撃の蹴りを繰り出してきた。
「ォォォッ!! ア゛ッ!!」
たっぷりと脂肪を体に蓄え、その脂肪の下には鍛え抜かれた筋肉を秘める相撲取りのような体格のオーガオーク。
相撲取りの張り手は一トンを超える衝撃があると言われているが、この目の前のオーガオークから繰り出される一撃はそんな生優しいモノではない。
攻撃後の隙だらけなところに飛んでくる一撃必殺の威力を込めたカウンター。これをモロに喰らってしまえば多分......というか、確実に全身がバラバラになってしまう。
避ける事は不可能......だが、強引に身体を捻り当たる箇所をズラす。無理な動きをしたせいで身体から嫌な音が聞こえるが、戦闘不能になるよりはマシだ。
オーガオークの放った蹴りは右胸から右肩にかけてを粉砕、それだけに留まらず衝撃が全身を駆け巡るが何とか回避に成功。そのまま後ろに吹き飛びオーガオークから距離を取った。
「......コイツ、こんな見た目のクセにヤバいな。勢いだけで勝てる相手じゃない。気を引き締めていかないと......」
衝撃で体が痺れてはいるが、これくらいならば動き回る以外は問題ない。腕も既に生えた......が
「ブルルルルガァァァァァ」
どうやら豚鬼も完全にこちらを強敵と認識したらしく、こちらへ殺気がビシビシ飛んでくる。
コイツからしたら人間なんてぬいぐるみのようなモノだろ? そんなにムキにならなくても......
「簡単にストレス解消できると思っていたんだけどなぁ......まぁでもガチの戦闘でもストレス解消になるよね。......ふぅ、かかってこいやァ!!」
「ブギュオオオオオオオオオオ!!!」
人外と化け物の戦い、その第二ラウンドのゴングが鳴る。
先程は先手を譲ったから今度はこちらから行くぞばかりにこちらへ駆けてくる豚鬼。まだこっちは身体が痺れているというのにせっかちな奴だ。
「......だけど反射速度とパワーはあるがスピードはだいぶ遅いっ!! カウンターと突飛な行動にさえ気をつければ被弾はかなり減らせるな」
身体を半身に、そして構えを低くして相手の攻撃が当たる面積を極力少なくする。大きい図体をしている分、小さい相手を相手取る時は苦労するはずだ。
そして身体が大きいという事はこちらの攻撃が当たる部分が多いという事。再生能力があったらかなり骨だけど、こればかりは一発当ててみないとわからないが......ってヤバイッ!!
「......初っ端から変化球かよ!!」
「ガァァァァア!!」
こちらの間合いまで侵入してきた豚鬼はあろう事かノーモーションで低めに跳躍し、そのバカでかい図体でボディプレスを敢行した。
オーガもオークも頭が良い設定の創作物は少ない。むしろマイナス方面なのが主流だろう。だけど目の前のコイツは頭が切れる。マイナスとマイナスを掛け算したらプラスになるという数学の意味不明な理論なのだろうか......
左手には金砕棒、右手は先程吹き飛んだせいで武器は持っていない。そしてコレを今避けきれるかと言われればギリギリ間に合わない。ならばどうすればいいのか――
「......打ち返してやらァ!!」
踏ん張りの利かない足でどこまで出来るかわからないが全身を犠牲にしても頭だけ守ればどうにかなる。ヤツの身体をズラせれば......それだけでいい。
大振りは必要ない。鋭く、コンパクトに振り抜く。
それだけでいい。自分のパワーならこの豚鬼を打ち返せる。
「ハァッ!!」
生えてきた右腕は痺れていない。やった事が無い左打ち。理想のスウィングは出来なかったが後は腕力でごり押す。
「ブギャッ!?」
分厚い脂肪と筋肉で覆われた豚鬼の脇腹を金砕棒が襲う。天然の緩衝材を装備していようが人知を超えた腕力から繰り出される凶悪な鉄の塊から来る衝撃は効いたらしい。若干ではあるが豚鬼にダメージを与え、且つ身体をズラす事に成功する。
「やっぱり全部は無理だったか......くそっ、重すぎなんだよお前。......まぁでも上半身を残せるくらいの成果を得られたのは大きい。それにしても衝撃からくる痺れは状態異常ではないのか......」
色々と考えさせられる結果となった今回のこの攻防。反省して次からの戦闘に活かそう。
そう考えながら身体から力を抜き仰向けに倒れ、頭と上半身をヤツの攻撃範囲外に持っていく。ついでに買ったばかりのベルトを急いで外して放り投げる。
――それからコンマ数秒後、やるべき事を終えた自分の下半身を豚鬼の巨体が圧し潰した。
─────────────────────────────
吉持ㅤ匠
悪魔闘人
Lv:67
HP:100%
MP:100%
物攻:130
物防:1
魔攻:70
魔防:1
敏捷:130
幸運:10
残SP:6
魔法適性:炎
スキル:
ステータスチェック
血液貯蓄ㅤ残176.2L
不死血鳥
部分魔化
状態異常耐性Lv8
拳闘Lv7
鈍器Lv9
棒術Lv4
小剣術Lv4
簡易鑑定
空間把握Lv8
投擲Lv7
歩法Lv5
強呪耐性
病気耐性Lv4
解体・解剖
回避Lv4
溶解耐性Lv2
■■■■■■
装備:
魔鉄の金砕棒
悪魔骨のヌンチャク
肉食ナイフ
貫通寸鉄
鬼蜘蛛糸の耐刃シャツ
快適なパンツ
再生獣革のブーツ
魔鉱のブレスレット
剛腕鬼の金棒
圧縮鋼の短槍
丈夫なリュック
厚手の肩掛け鞄
微速のベルト
ババァの店の会員証ㅤ残高220
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まだ敵に向かって使った事が無い悪魔ヌンチャク(棒)の初陣。ソレを豚鬼に向けて横薙ぎに思いっきり振り抜く。
全力ダッシュ&全力のスウィング。
これで決まるな......と思っていたが、なんと豚鬼はその攻撃に反応し手に持っていたマチェットのような武器でガードを試みた。
これには少し驚いたモノの、そんな単純なガードではこの一撃は防げない。
インパクトの瞬間に魔力を込めて悪魔ヌンチャクモードに移行させる。
防いだ!! とオーガオークが思った一撃。これで決まりだろ!! と吉持が思った一撃。
オーガオークがガードに使用したマチェットに伝わる衝撃は少なく、見れば敵の振った棒は丁度中間から折れてこちらの頭部へと向かってきているではないか。
「ブギィィィィィィィィイ!!!」
このままでは殺られる。あの一撃を喰らってはならない。そう直感したオーガオークは、戦闘開始早々奥の手である緊急回避手段を使わざるを得なくなった。
「......ッッ!? そんなのアリかよ!!」
なんとオーガオークは首を亀やスッポンのように体内に引っ込め、初見殺しとも言えるヌンチャクモードの攻撃を回避。そして回避だけでは飽き足らずこちらへと反撃の蹴りを繰り出してきた。
「ォォォッ!! ア゛ッ!!」
たっぷりと脂肪を体に蓄え、その脂肪の下には鍛え抜かれた筋肉を秘める相撲取りのような体格のオーガオーク。
相撲取りの張り手は一トンを超える衝撃があると言われているが、この目の前のオーガオークから繰り出される一撃はそんな生優しいモノではない。
攻撃後の隙だらけなところに飛んでくる一撃必殺の威力を込めたカウンター。これをモロに喰らってしまえば多分......というか、確実に全身がバラバラになってしまう。
避ける事は不可能......だが、強引に身体を捻り当たる箇所をズラす。無理な動きをしたせいで身体から嫌な音が聞こえるが、戦闘不能になるよりはマシだ。
オーガオークの放った蹴りは右胸から右肩にかけてを粉砕、それだけに留まらず衝撃が全身を駆け巡るが何とか回避に成功。そのまま後ろに吹き飛びオーガオークから距離を取った。
「......コイツ、こんな見た目のクセにヤバいな。勢いだけで勝てる相手じゃない。気を引き締めていかないと......」
衝撃で体が痺れてはいるが、これくらいならば動き回る以外は問題ない。腕も既に生えた......が
「ブルルルルガァァァァァ」
どうやら豚鬼も完全にこちらを強敵と認識したらしく、こちらへ殺気がビシビシ飛んでくる。
コイツからしたら人間なんてぬいぐるみのようなモノだろ? そんなにムキにならなくても......
「簡単にストレス解消できると思っていたんだけどなぁ......まぁでもガチの戦闘でもストレス解消になるよね。......ふぅ、かかってこいやァ!!」
「ブギュオオオオオオオオオオ!!!」
人外と化け物の戦い、その第二ラウンドのゴングが鳴る。
先程は先手を譲ったから今度はこちらから行くぞばかりにこちらへ駆けてくる豚鬼。まだこっちは身体が痺れているというのにせっかちな奴だ。
「......だけど反射速度とパワーはあるがスピードはだいぶ遅いっ!! カウンターと突飛な行動にさえ気をつければ被弾はかなり減らせるな」
身体を半身に、そして構えを低くして相手の攻撃が当たる面積を極力少なくする。大きい図体をしている分、小さい相手を相手取る時は苦労するはずだ。
そして身体が大きいという事はこちらの攻撃が当たる部分が多いという事。再生能力があったらかなり骨だけど、こればかりは一発当ててみないとわからないが......ってヤバイッ!!
「......初っ端から変化球かよ!!」
「ガァァァァア!!」
こちらの間合いまで侵入してきた豚鬼はあろう事かノーモーションで低めに跳躍し、そのバカでかい図体でボディプレスを敢行した。
オーガもオークも頭が良い設定の創作物は少ない。むしろマイナス方面なのが主流だろう。だけど目の前のコイツは頭が切れる。マイナスとマイナスを掛け算したらプラスになるという数学の意味不明な理論なのだろうか......
左手には金砕棒、右手は先程吹き飛んだせいで武器は持っていない。そしてコレを今避けきれるかと言われればギリギリ間に合わない。ならばどうすればいいのか――
「......打ち返してやらァ!!」
踏ん張りの利かない足でどこまで出来るかわからないが全身を犠牲にしても頭だけ守ればどうにかなる。ヤツの身体をズラせれば......それだけでいい。
大振りは必要ない。鋭く、コンパクトに振り抜く。
それだけでいい。自分のパワーならこの豚鬼を打ち返せる。
「ハァッ!!」
生えてきた右腕は痺れていない。やった事が無い左打ち。理想のスウィングは出来なかったが後は腕力でごり押す。
「ブギャッ!?」
分厚い脂肪と筋肉で覆われた豚鬼の脇腹を金砕棒が襲う。天然の緩衝材を装備していようが人知を超えた腕力から繰り出される凶悪な鉄の塊から来る衝撃は効いたらしい。若干ではあるが豚鬼にダメージを与え、且つ身体をズラす事に成功する。
「やっぱり全部は無理だったか......くそっ、重すぎなんだよお前。......まぁでも上半身を残せるくらいの成果を得られたのは大きい。それにしても衝撃からくる痺れは状態異常ではないのか......」
色々と考えさせられる結果となった今回のこの攻防。反省して次からの戦闘に活かそう。
そう考えながら身体から力を抜き仰向けに倒れ、頭と上半身をヤツの攻撃範囲外に持っていく。ついでに買ったばかりのベルトを急いで外して放り投げる。
――それからコンマ数秒後、やるべき事を終えた自分の下半身を豚鬼の巨体が圧し潰した。
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吉持ㅤ匠
悪魔闘人
Lv:67
HP:100%
MP:100%
物攻:130
物防:1
魔攻:70
魔防:1
敏捷:130
幸運:10
残SP:6
魔法適性:炎
スキル:
ステータスチェック
血液貯蓄ㅤ残176.2L
不死血鳥
部分魔化
状態異常耐性Lv8
拳闘Lv7
鈍器Lv9
棒術Lv4
小剣術Lv4
簡易鑑定
空間把握Lv8
投擲Lv7
歩法Lv5
強呪耐性
病気耐性Lv4
解体・解剖
回避Lv4
溶解耐性Lv2
■■■■■■
装備:
魔鉄の金砕棒
悪魔骨のヌンチャク
肉食ナイフ
貫通寸鉄
鬼蜘蛛糸の耐刃シャツ
快適なパンツ
再生獣革のブーツ
魔鉱のブレスレット
剛腕鬼の金棒
圧縮鋼の短槍
丈夫なリュック
厚手の肩掛け鞄
微速のベルト
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