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鬼ごっこ
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食らうべきなのは麻痺か毒か。
ラスト一匹にさせるべきは手下かボスか。
考えている時間は無い。
もう決断しないと、一撃どころじゃなくなる。間に合わなくなる前に決めろ......
敏捷のステータスを伸ばすと思考速度も早くなるのだろうか。本当に敏捷のステータスって偉大......伸ばしてよかった。
空中にいる相手だから今武器を振るえば二匹は確実に殺れる――
後方から襲って来る個体は確実に仕留めなくてはならない。賢いモンスターは厄介だ。
残りは二匹......他二匹を倒した後はちょこまかと逃げ回られそうな二匹目から仕留めた方がいいかな。残り一匹になっても最後まで勇敢に戦いを挑んできそうな、最初にこちらへ飛びかかってきたヤツを残そう。
「死ね!! アハハハハハッ!!」
最初に殺すと決めた対象と二番目に飛び込んでくる対象へ向けて、気合いと共に棍棒と金砕棒を振るう。
一々相手を目視しなくても空間把握で距離感と位置はわかっている。
だいぶ化け物染みた芸当が出来るようになってきた。
後方に向けて放った金砕棒に伝わる肉を殴った感触、それとほぼ同時に胴に向けて飛びかかってきているネズミに向けて振るった棍棒にも同じ感触が伝わる。
「ピギュッ」
「ジュッ」
短い悲鳴を聞き届け、回避が不能な位置にまで来ているネズミに意識を向ける。
「やっぱ避けるのは無理だね。状態異常耐性......仕事してね、頼んだよ」
肩に鋭い痛みが二度走り、飛びかかってきていたネズミが背後に着地する。
やられた肩を見てみると大きく抉られ、切り裂かれていた。噛み付きと引っ掻きをあの一瞬で行われたんだろう。
──────────────────────────────
グレイトパライズラット
レベル:98
──────────────────────────────
残ったのは麻痺ネズミ。体の痺れは今の所問題は無い。即効性が無くてよかった。
一撃を加えたネズミはこちらと一定の距離をキープし、チョロチョロ走り回りながらこちらの様子を伺っている。毒が全身に回るのを待っているのか......頭の良い敵は面倒。基本自分は攻めるタイプだから待つのが苦じゃないタイプとは噛み合わない。
「アハハハハ......」
自分の肉を目の前で咀嚼されるのを見るのは気持ち悪いなぁ。せめて見えないように食べてほしいんだけど。
手を開閉したり、足を動かしてみてもまだ麻痺が回る気配はなし、いつ体が鈍くなるかわからないから早いとこ終わらせないと。
「ふぅぅぅぅ......」
呼吸を整え、グチュグチュ音を立てながらチョロチョロしている目障りなネズミに向かって走り、一気に距離を縮める。
予想していたのかネズミも一気にトップスピードまで持っていき、バックステップ。
再びこちらと距離を空け、右に左にちょこまかと動き回るネズミ。動く方向を悟らせない為か、後ろ脚を絶対に見せないように立ち回りやがる。
四足獣特有の動きと体勢の低さに加え、小狡い思考、毒が回るまでは逃げに徹しようとする姿勢を崩さない。
スピードはこちらが上回っているのに、逃げ回るという事に対しての経験値の多さで全然捕まえられそうな気配がない。
「動き回ってかなり時間経つ。麻痺する兆候はない......相手はまだ待ちの姿勢を崩さない。それなら今は逃げ回る敵の追い方の勉強をするべきかな」
小さめの投擲武器があれば楽に捉えられると思うが、無いものは無い。現状では敵から奪うかババアの店の品揃えが頼り。
「正攻法で絶対に捕まえてやる......」
◆◆◆
スタミナと根気の勝負だった。
途中からネズミは毒が効いていない事と傷が回復している事に気付き、行動のパターンを変えてきた。
機を逃さない為にずっとこちらの姿を伺える立ち位置にいたのが、遮蔽物や転がっているモノを利用しながらの何をしてでも逃げ切って、スタミナ切れまで耐え抜いてやるという行動に変化した。
それによって余計に追うのが難しくなり、自分の動きを見直す事を余儀なくされてしまった。
目線や手足を使ってのフェイント、方向転換時の体の使い方、スタミナ消費の少ない動き方、一気に0から100にするスピード、100から0への急停止など、思い付く限り試して試して試して......
何度も試してようやくネズミはフェイントに引っ掛かり、敢えなく御用となった。どれくらいの時間を使ったかはわからない。
もう二度とこんな事はやりたくない。
『レベルが1あがりました』
戦闘終了を告げるアナウンスを聞き、血を回収した所でようやく、張り詰めていた気を緩める事が出来た。ここまで頭も体もフル回転させたのは、生まれて初めてかもしれない......
「アハハハハ......ステータス差は有利だけど絶対に覆らないとは言えないな......あーもう、疲れたぁぁぁぁぁ!!」
ネズミなんかに翻弄されるという屈辱とストレス、脳が疲れきるという事への驚き、そこまでやっても大して血を得られなかった事へのどうしようもない感情で声を荒らげてしまった。
ここまでやって得た物は少しだけの血液以外には何も無しではなかったのが救いか、新しいスキルが一つ生えていた。
「すぐには動きたくないや......アハハッ......ちょっと寝よう」
声を出すのも億劫になってきたので、寝転がったままリュックを枕にして仮眠を取る事に決めた。
――自分でも把握できない精神の奥の方......過酷な環境と厭らしい敵によって知らないうちにストレスが精神を蝕んでいく。本人は楽しいと思っていても......
真綿で首を絞めるように――じわり、じわりと......緩やかに......だが、確実に......
──────────────────────────────
吉持ㅤ匠
闘人
Lv:0→1
HP:100%
MP:100%
物攻:80
物防:1
魔攻:40
魔防:1
敏捷:80
幸運:10
残SP:2→4
魔法適性:炎
スキル:
ステータスチェック
血液貯蓄ㅤ残59.2L
不死血鳥
状態異常耐性Lv6
拳闘Lv4
鈍器Lv6
小剣術Lv1
簡易鑑定
空間把握Lv5
投擲Lv5
歩法Lv1
■■■■■■
装備:
魔鉄の金砕棒
肉食ナイフ
布のシャツ
悪魔大土蜘蛛の反物
再生獣革のブーツ→八割再生
魔鉱のブレスレット
悪夢の棍棒
焦げた悪夢の棍棒
丈夫なリュック
厚手の肩掛け鞄
鱗皮のナイフホルダー
ババァの店の会員証ㅤ残高530
魔石多数
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ラスト一匹にさせるべきは手下かボスか。
考えている時間は無い。
もう決断しないと、一撃どころじゃなくなる。間に合わなくなる前に決めろ......
敏捷のステータスを伸ばすと思考速度も早くなるのだろうか。本当に敏捷のステータスって偉大......伸ばしてよかった。
空中にいる相手だから今武器を振るえば二匹は確実に殺れる――
後方から襲って来る個体は確実に仕留めなくてはならない。賢いモンスターは厄介だ。
残りは二匹......他二匹を倒した後はちょこまかと逃げ回られそうな二匹目から仕留めた方がいいかな。残り一匹になっても最後まで勇敢に戦いを挑んできそうな、最初にこちらへ飛びかかってきたヤツを残そう。
「死ね!! アハハハハハッ!!」
最初に殺すと決めた対象と二番目に飛び込んでくる対象へ向けて、気合いと共に棍棒と金砕棒を振るう。
一々相手を目視しなくても空間把握で距離感と位置はわかっている。
だいぶ化け物染みた芸当が出来るようになってきた。
後方に向けて放った金砕棒に伝わる肉を殴った感触、それとほぼ同時に胴に向けて飛びかかってきているネズミに向けて振るった棍棒にも同じ感触が伝わる。
「ピギュッ」
「ジュッ」
短い悲鳴を聞き届け、回避が不能な位置にまで来ているネズミに意識を向ける。
「やっぱ避けるのは無理だね。状態異常耐性......仕事してね、頼んだよ」
肩に鋭い痛みが二度走り、飛びかかってきていたネズミが背後に着地する。
やられた肩を見てみると大きく抉られ、切り裂かれていた。噛み付きと引っ掻きをあの一瞬で行われたんだろう。
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グレイトパライズラット
レベル:98
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残ったのは麻痺ネズミ。体の痺れは今の所問題は無い。即効性が無くてよかった。
一撃を加えたネズミはこちらと一定の距離をキープし、チョロチョロ走り回りながらこちらの様子を伺っている。毒が全身に回るのを待っているのか......頭の良い敵は面倒。基本自分は攻めるタイプだから待つのが苦じゃないタイプとは噛み合わない。
「アハハハハ......」
自分の肉を目の前で咀嚼されるのを見るのは気持ち悪いなぁ。せめて見えないように食べてほしいんだけど。
手を開閉したり、足を動かしてみてもまだ麻痺が回る気配はなし、いつ体が鈍くなるかわからないから早いとこ終わらせないと。
「ふぅぅぅぅ......」
呼吸を整え、グチュグチュ音を立てながらチョロチョロしている目障りなネズミに向かって走り、一気に距離を縮める。
予想していたのかネズミも一気にトップスピードまで持っていき、バックステップ。
再びこちらと距離を空け、右に左にちょこまかと動き回るネズミ。動く方向を悟らせない為か、後ろ脚を絶対に見せないように立ち回りやがる。
四足獣特有の動きと体勢の低さに加え、小狡い思考、毒が回るまでは逃げに徹しようとする姿勢を崩さない。
スピードはこちらが上回っているのに、逃げ回るという事に対しての経験値の多さで全然捕まえられそうな気配がない。
「動き回ってかなり時間経つ。麻痺する兆候はない......相手はまだ待ちの姿勢を崩さない。それなら今は逃げ回る敵の追い方の勉強をするべきかな」
小さめの投擲武器があれば楽に捉えられると思うが、無いものは無い。現状では敵から奪うかババアの店の品揃えが頼り。
「正攻法で絶対に捕まえてやる......」
◆◆◆
スタミナと根気の勝負だった。
途中からネズミは毒が効いていない事と傷が回復している事に気付き、行動のパターンを変えてきた。
機を逃さない為にずっとこちらの姿を伺える立ち位置にいたのが、遮蔽物や転がっているモノを利用しながらの何をしてでも逃げ切って、スタミナ切れまで耐え抜いてやるという行動に変化した。
それによって余計に追うのが難しくなり、自分の動きを見直す事を余儀なくされてしまった。
目線や手足を使ってのフェイント、方向転換時の体の使い方、スタミナ消費の少ない動き方、一気に0から100にするスピード、100から0への急停止など、思い付く限り試して試して試して......
何度も試してようやくネズミはフェイントに引っ掛かり、敢えなく御用となった。どれくらいの時間を使ったかはわからない。
もう二度とこんな事はやりたくない。
『レベルが1あがりました』
戦闘終了を告げるアナウンスを聞き、血を回収した所でようやく、張り詰めていた気を緩める事が出来た。ここまで頭も体もフル回転させたのは、生まれて初めてかもしれない......
「アハハハハ......ステータス差は有利だけど絶対に覆らないとは言えないな......あーもう、疲れたぁぁぁぁぁ!!」
ネズミなんかに翻弄されるという屈辱とストレス、脳が疲れきるという事への驚き、そこまでやっても大して血を得られなかった事へのどうしようもない感情で声を荒らげてしまった。
ここまでやって得た物は少しだけの血液以外には何も無しではなかったのが救いか、新しいスキルが一つ生えていた。
「すぐには動きたくないや......アハハッ......ちょっと寝よう」
声を出すのも億劫になってきたので、寝転がったままリュックを枕にして仮眠を取る事に決めた。
――自分でも把握できない精神の奥の方......過酷な環境と厭らしい敵によって知らないうちにストレスが精神を蝕んでいく。本人は楽しいと思っていても......
真綿で首を絞めるように――じわり、じわりと......緩やかに......だが、確実に......
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吉持ㅤ匠
闘人
Lv:0→1
HP:100%
MP:100%
物攻:80
物防:1
魔攻:40
魔防:1
敏捷:80
幸運:10
残SP:2→4
魔法適性:炎
スキル:
ステータスチェック
血液貯蓄ㅤ残59.2L
不死血鳥
状態異常耐性Lv6
拳闘Lv4
鈍器Lv6
小剣術Lv1
簡易鑑定
空間把握Lv5
投擲Lv5
歩法Lv1
■■■■■■
装備:
魔鉄の金砕棒
肉食ナイフ
布のシャツ
悪魔大土蜘蛛の反物
再生獣革のブーツ→八割再生
魔鉱のブレスレット
悪夢の棍棒
焦げた悪夢の棍棒
丈夫なリュック
厚手の肩掛け鞄
鱗皮のナイフホルダー
ババァの店の会員証ㅤ残高530
魔石多数
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