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リベンジ
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ダンジョンに入ってから初めて完膚なきまでに負けた相手へのリベンジ。
そして一撃でも攻撃を食らえばゲームオーバーというひりつく展開。
ここに来るまでは、このダンジョンはリアルと認識しつつも、どうせダメージを受けても回復するからという思考と、物凄くリアルなVRゲームをやっているような感覚が混在していた。
だが、一度体を全損した事によりそんな甘えた感情も全て消え去り、生きるか死ぬかの血で血を洗う毎日に飛び込む覚悟が決まった。
「アハハハハッ......返してもらうよ。お前が持っているその武器は、お前なんかには似合わない......んだよっっ!!」
話し掛けている最中にナイトトロルが体を消し、背後から金砕棒を横薙ぎに振るう。
それを新しく入手した空間把握で察知し、ナイトトロルが使っていた棍棒で金砕棒を叩き落とす。
先程と同様にこの一撃で決まると思っていたナイトトロルは驚いた表情をして後退る。
「アハハハハッ!! 残念だったね。何の対策も無くリベンジなんてしないよ。これからお前は自分の糧になるんだから大人しく死んでくれ」
まだ混乱しているナイトトロルに近付き棍棒を叩き付ける。ナイトトロルの予想よりも早い動きと膂力によってますます混乱する様が手に取るようにわかる。
一つだけ気に食わないのはナイトトロルが持つ金砕棒。お気に入りであるあの武器を壊すわけにもいかないので、それに配慮して戦わなくてはいかないのが面倒でならない。
「面倒すぎる......狙うのは腕だな、金砕棒さえなくなれば何の憂いもなくアイツを叩き潰せる......アハハハハッ!! 事故らないようにしないとねっ」
狙うは上段からの振り落ろし、そこから振り下ろしをキャンセルして肘の付近を狙った横薙ぎ。ただ自分の体が重い棍棒での攻撃をキャンセル出来るのかは賭けになる。
止められそうになければそのまま叩き付けてから手首狙いのパンチ、カウンターを狙っていそうならそれを避けて手首破壊。
簡単にいけばいいけど......
「オッラァァァァァァ!!」
ナイトトロルの懐まで踏み込み、気合いを込めて握った棍棒を振り下ろす。
狙い通りにナイトトロルが金砕棒を盾にして棍棒の一撃を防ごうと防御体勢を取る。
防いでから蹴りをいれようとしているのか、単純に踏ん張ろうとしているのかわからないが、ナイトトロルの体勢が怪しいのでそちらへ多少意識を向けておく。
そんな事よりもまずはフェイントだ。もってくれよ自分の腕。
ミシッ......ブチッ......
骨が軋み、筋繊維が千切れる音がする。
残り少ない血液が消費されていき、凄まじい倦怠感が襲ってくる。
今すぐ蹲ってしまいたいという気持ちに駆られるが、それをしてしまえば死ぬだけ。
それをするのならば目の前のコイツを叩き潰してからだ。
あぁ......気持ち悪い......
体が重い......
だがそれよりも、自分の事を叩き潰して武器を奪って悦に浸っていたコイツが許せない......
「......ァァァァア!! 死ねぇぇぇぇ!!」
振り下ろした重量のある武器を止める時に傷付き、即座に回復された骨や繊維が、再び無理矢理稼働させられて嫌な音を立てる。
それと同時に襲ってくる先程とは比べ物にならない程の強烈な倦怠感。連続して襲ってきた吐き気に今度は耐えきれずに口から胃液を吐き出すが、動きは止めない。
棍棒から伝わってくる肉を潰した感触、骨が砕ける音とナイトトロルの悲鳴が耳に聞こえてきて、戦闘の興奮が再び湧き上がる。
「ゲホッ......アハハハハッ......もう武器は持てないな。残った手で落とした武器を拾おうとした瞬間殺してやるよ」
痛みに蹲り、口から涎を垂らしながらこちらを睨むナイトトロルを無視して金砕棒を蹴ってヤツから遠ざける。
「残る手段はカウンターくらいか? まぁお前らの手札は無駄に同士討ちしてる最中に見せてもらったから、こっちにはもう通じないよ」
言葉が通じているのかはわからないが、そう告げた瞬間にトロルの目から戦意が消失した。
「死体は有効に活用してやるから安心して死ね」
頭を垂れたナイトトロルの頭を棍棒で叩き潰し、初めて全損を味わった戦闘は終わった。
『レベルが2上がりました』
今すぐそのまま横になりたい気分だったが、最後の力を振り絞ってナイトトロルの首から血を全て吸収しながら、血と死体と吐瀉物で汚れた床の上で気を失うように眠りについた。
◆◆◆
胸のムカムカで眠りから覚めた。
コンディションは最悪。頭は上手く働かずに熱が出て寝込んでいる時のようにフワフワしていた。
「アハハハッ......この体が風邪を引くのかはわからないけど、血が足りない状態で全裸で寝ればこうなるのは仕方ないか......」
万全ではない体に鞭を打ち、置いてきた荷物や武器を回収。服を着て人らしさを取り戻し、他のナイトトロルの死体から血液を回収。
時間が経っていたせいで余り血液が残っていなかったが、今は少しでも血が欲しい。
先程よりもマシになったが、次の獲物を求めて先に進んでも体調不良で満足に動けなそうなので、このままもう一眠りする事に決める。
「......すっごい痛いしキツいけど、生きてるって実感する......あのままだったらこんな楽しい事に気付かないで死んでいただろうし、ここに来られてよかった......」
これまでに無い充実感を味わいながら、体を休める為に目を閉じた。
──────────────────────────────
吉持ㅤ匠
Lv:53→55
HP:100%
MP:100%
物攻:40
物防:1
魔攻:10
魔防:1
敏捷:50
幸運:10
残SP:4
魔法適性:炎
スキル:
ステータスチェック
血液貯蓄ㅤ残5.5L
不死血鳥
状態異常耐性Lv3
拳闘Lv4
鈍器Lv5
簡易鑑定
空間把握Lv3
■■■■■■
装備:
魔鉄の金砕棒
肉食ナイフ
布のシャツ
丈夫なズボン
再生獣革のブーツ
魔鉱のブレスレット
丈夫なリュック
鱗皮のナイフホルダー
ババァの店の会員証ㅤ残高135
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そして一撃でも攻撃を食らえばゲームオーバーというひりつく展開。
ここに来るまでは、このダンジョンはリアルと認識しつつも、どうせダメージを受けても回復するからという思考と、物凄くリアルなVRゲームをやっているような感覚が混在していた。
だが、一度体を全損した事によりそんな甘えた感情も全て消え去り、生きるか死ぬかの血で血を洗う毎日に飛び込む覚悟が決まった。
「アハハハハッ......返してもらうよ。お前が持っているその武器は、お前なんかには似合わない......んだよっっ!!」
話し掛けている最中にナイトトロルが体を消し、背後から金砕棒を横薙ぎに振るう。
それを新しく入手した空間把握で察知し、ナイトトロルが使っていた棍棒で金砕棒を叩き落とす。
先程と同様にこの一撃で決まると思っていたナイトトロルは驚いた表情をして後退る。
「アハハハハッ!! 残念だったね。何の対策も無くリベンジなんてしないよ。これからお前は自分の糧になるんだから大人しく死んでくれ」
まだ混乱しているナイトトロルに近付き棍棒を叩き付ける。ナイトトロルの予想よりも早い動きと膂力によってますます混乱する様が手に取るようにわかる。
一つだけ気に食わないのはナイトトロルが持つ金砕棒。お気に入りであるあの武器を壊すわけにもいかないので、それに配慮して戦わなくてはいかないのが面倒でならない。
「面倒すぎる......狙うのは腕だな、金砕棒さえなくなれば何の憂いもなくアイツを叩き潰せる......アハハハハッ!! 事故らないようにしないとねっ」
狙うは上段からの振り落ろし、そこから振り下ろしをキャンセルして肘の付近を狙った横薙ぎ。ただ自分の体が重い棍棒での攻撃をキャンセル出来るのかは賭けになる。
止められそうになければそのまま叩き付けてから手首狙いのパンチ、カウンターを狙っていそうならそれを避けて手首破壊。
簡単にいけばいいけど......
「オッラァァァァァァ!!」
ナイトトロルの懐まで踏み込み、気合いを込めて握った棍棒を振り下ろす。
狙い通りにナイトトロルが金砕棒を盾にして棍棒の一撃を防ごうと防御体勢を取る。
防いでから蹴りをいれようとしているのか、単純に踏ん張ろうとしているのかわからないが、ナイトトロルの体勢が怪しいのでそちらへ多少意識を向けておく。
そんな事よりもまずはフェイントだ。もってくれよ自分の腕。
ミシッ......ブチッ......
骨が軋み、筋繊維が千切れる音がする。
残り少ない血液が消費されていき、凄まじい倦怠感が襲ってくる。
今すぐ蹲ってしまいたいという気持ちに駆られるが、それをしてしまえば死ぬだけ。
それをするのならば目の前のコイツを叩き潰してからだ。
あぁ......気持ち悪い......
体が重い......
だがそれよりも、自分の事を叩き潰して武器を奪って悦に浸っていたコイツが許せない......
「......ァァァァア!! 死ねぇぇぇぇ!!」
振り下ろした重量のある武器を止める時に傷付き、即座に回復された骨や繊維が、再び無理矢理稼働させられて嫌な音を立てる。
それと同時に襲ってくる先程とは比べ物にならない程の強烈な倦怠感。連続して襲ってきた吐き気に今度は耐えきれずに口から胃液を吐き出すが、動きは止めない。
棍棒から伝わってくる肉を潰した感触、骨が砕ける音とナイトトロルの悲鳴が耳に聞こえてきて、戦闘の興奮が再び湧き上がる。
「ゲホッ......アハハハハッ......もう武器は持てないな。残った手で落とした武器を拾おうとした瞬間殺してやるよ」
痛みに蹲り、口から涎を垂らしながらこちらを睨むナイトトロルを無視して金砕棒を蹴ってヤツから遠ざける。
「残る手段はカウンターくらいか? まぁお前らの手札は無駄に同士討ちしてる最中に見せてもらったから、こっちにはもう通じないよ」
言葉が通じているのかはわからないが、そう告げた瞬間にトロルの目から戦意が消失した。
「死体は有効に活用してやるから安心して死ね」
頭を垂れたナイトトロルの頭を棍棒で叩き潰し、初めて全損を味わった戦闘は終わった。
『レベルが2上がりました』
今すぐそのまま横になりたい気分だったが、最後の力を振り絞ってナイトトロルの首から血を全て吸収しながら、血と死体と吐瀉物で汚れた床の上で気を失うように眠りについた。
◆◆◆
胸のムカムカで眠りから覚めた。
コンディションは最悪。頭は上手く働かずに熱が出て寝込んでいる時のようにフワフワしていた。
「アハハハッ......この体が風邪を引くのかはわからないけど、血が足りない状態で全裸で寝ればこうなるのは仕方ないか......」
万全ではない体に鞭を打ち、置いてきた荷物や武器を回収。服を着て人らしさを取り戻し、他のナイトトロルの死体から血液を回収。
時間が経っていたせいで余り血液が残っていなかったが、今は少しでも血が欲しい。
先程よりもマシになったが、次の獲物を求めて先に進んでも体調不良で満足に動けなそうなので、このままもう一眠りする事に決める。
「......すっごい痛いしキツいけど、生きてるって実感する......あのままだったらこんな楽しい事に気付かないで死んでいただろうし、ここに来られてよかった......」
これまでに無い充実感を味わいながら、体を休める為に目を閉じた。
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吉持ㅤ匠
Lv:53→55
HP:100%
MP:100%
物攻:40
物防:1
魔攻:10
魔防:1
敏捷:50
幸運:10
残SP:4
魔法適性:炎
スキル:
ステータスチェック
血液貯蓄ㅤ残5.5L
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状態異常耐性Lv3
拳闘Lv4
鈍器Lv5
簡易鑑定
空間把握Lv3
■■■■■■
装備:
魔鉄の金砕棒
肉食ナイフ
布のシャツ
丈夫なズボン
再生獣革のブーツ
魔鉱のブレスレット
丈夫なリュック
鱗皮のナイフホルダー
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