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攻略
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全身全霊、今自分の出せる全力で隙だらけな後頭部にフルスイングを叩き込んだ。
金砕棒を叩き込まれた頭部はトマトのように潰れ、赤い染みをダンジョンの床に作った。
「アハハッ......殺った!」
大層なレベルの割に大した事が無かった。
──────────────────────────────
マスターグール
レベル:48
──────────────────────────────
こんなヤツが相手だったから、強化もしっかり行って今自分が出せる全力を用いて事に当たった。その結果、拍子抜けとも思える事態になってしまい困惑している。
「......いや、ちょっとおかしい。簡単すぎる......そして、これだけのレベル差があったんだからアナウンスが起きないと変だ......」
まさか、倒せていない?
もしかして......コイツは、自分と同じ系統のスキルを持っている......ッッ!?
背後でグジュリ......と、さっきまで静かだった死体から不快な音が鳴った。
まだ生きていた事に驚いてしまったが、自分もコイツと同類だからわかる。
自分達みたいなヤツを相手取るならば、先ずは頭を潰す事だ。自分なら頭が潰されてしまえばしばらくの間行動出来なくなる訳だから......そして今、頭は潰してある。後はただ、コイツが復活出来なくなるまで潰すだけだ。
初見殺しもいいとこだよな。
似たようなスキルがあって、更にその事を知っていたのでコチラは冷静に対応できるが。
それでもなんとなく、本当になんとなくだけど......同類がいた事にイライラしてしまった。
「腐った死体如きがッッ!! 体を潰されても動けるからって!! 調子にッッ!! 乗るなァァァ!!」
腐敗した肉体を穿つ金砕棒が、聴く者を不快な気分に誘う旋律を奏でていく。
グシャッ......グシャッ......ズチュッ......
グールのパーツや肉片が散らばるも、頭部以外の損壊は瞬きするような僅かな時間で即再生していく。
グールを殴る手は止めずに、どうすれば早くコイツを殺せるのかを考えていく。
自分の場合は部位ごとに、そして損壊の度合いにより、血液の使用量は増えていった。
コイツが自分と同じ物をスキルで消費しているのか、違う物を消費しているのかはわからない。
ただ、この程度のヤツが無限に残機を持っているなんて事はないはずだ。
「指、手首、肘から先、腕一本......一瞬、指、足首、膝から下、足一本......これも一瞬、股間......三秒くらい、腹......十五秒くらい、鳩尾付近......十五秒くらい、右胸......三秒くらい、左胸......二十秒くらい、右半身......二十秒くらい、左半身......一分くらい」
試しに大まかな部位ごとに別けて潰していくと、興味深い発見があった。
治るスピードに違いがあった。生きる為に重要な部位になるほど治るのが遅く、重要でない部位、末端に近い部位ほど回復が早くなる。
自分の場合は頭以外は一瞬で治っているから、再生スピードは参考にならないけど、この時間の掛かり方を見てみると......ゾンビ系と不死鳥の元々のスペックの違いがよくわかる。
血を使っての再生と、ナニかを使っての再生を一緒に考えるのはおかしいけど、かなり参考になった......後はなるべく早く殺しきる事だけを考えよう。
再生に時間の掛かる部位を重点的に攻撃......攻撃......攻撃......攻撃......攻撃......
五分ほど殴り続けたくらいだろうか、ようやくヤツの再生スピードに翳りが見えてくる。
しかし、体の方に注意を向けすぎていたのが災いし、グールの頭の再生が一気に進んでいたのを見逃していた。
それでも圧倒的優位なのは変わらず、片手を自由にして炎魔法で焼かれるとどうなるのかを試してみようとしていた。
――グールは無意識下で......生への執着とも言えるだろうか。
己が気を失っている間に、死にかける寸前にまで追い込まれていた事で発動した奇跡。
胸や腹の部位再生を後回しにしてまで頭を復活させて意識を回復させた。
相手は己を倒したと思って油断していると断定したグールは、己をここまで追い詰めた敵に襲いかかろうとして振り返ると......
「おあぁっ」
炎の玉をなるべく大きなサイズにしようと四苦八苦していた時に、グールが不意に動き出したことに驚いてしまい......
制御が不十分なままの炎魔法が、飛び起きたグールに向かって放たれてしまう。
なるべく大きくしようと作られていた炎の玉は、術者の制御から離れて......尚、大きくなろうと動き出していた。
魔法のある世界では、火が燃える仕組み等は理論建てて説明される事は無い。
なぜなら、不可解な事象は全て「魔法だから」、「魔力の大きさの違い」、「魔法の才能」で片付けられるからだ。
しかし日本では、学校に行っていれば頭がどんなに悪くても、最低限の火が燃える仕組みくらいは頭に残るだろう。
火種は無くても魔力で火は出せる。後、火が強く燃えるのに必要なのは何か......
それは酸素。
酸素を取り込ませれば大きくなるのではないかと、そう試行錯誤している最中に放たれた炎の玉は、自ら大きくなろうと周囲の酸素を取り込み始めた。
「アハハハハッ......これはやばいぞっ」
グールに着弾するまでコンマ何秒か。その僅かな時間でも酸素を取り込み、着々と大きさを増している炎の玉を見て危険と判断。
すぐさまその場から飛び退き、自分が入ってきた入口に向かってダイブ......
普通では絶対に間に合わないタイミングだろう。だが、そこまで動けたのは偏に敏捷を上げていたからだろう。
ダイブした直後、周囲が白く照らされ、続いて凄まじい轟音と爆風がダンジョンを揺らした。
金砕棒を叩き込まれた頭部はトマトのように潰れ、赤い染みをダンジョンの床に作った。
「アハハッ......殺った!」
大層なレベルの割に大した事が無かった。
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マスターグール
レベル:48
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こんなヤツが相手だったから、強化もしっかり行って今自分が出せる全力を用いて事に当たった。その結果、拍子抜けとも思える事態になってしまい困惑している。
「......いや、ちょっとおかしい。簡単すぎる......そして、これだけのレベル差があったんだからアナウンスが起きないと変だ......」
まさか、倒せていない?
もしかして......コイツは、自分と同じ系統のスキルを持っている......ッッ!?
背後でグジュリ......と、さっきまで静かだった死体から不快な音が鳴った。
まだ生きていた事に驚いてしまったが、自分もコイツと同類だからわかる。
自分達みたいなヤツを相手取るならば、先ずは頭を潰す事だ。自分なら頭が潰されてしまえばしばらくの間行動出来なくなる訳だから......そして今、頭は潰してある。後はただ、コイツが復活出来なくなるまで潰すだけだ。
初見殺しもいいとこだよな。
似たようなスキルがあって、更にその事を知っていたのでコチラは冷静に対応できるが。
それでもなんとなく、本当になんとなくだけど......同類がいた事にイライラしてしまった。
「腐った死体如きがッッ!! 体を潰されても動けるからって!! 調子にッッ!! 乗るなァァァ!!」
腐敗した肉体を穿つ金砕棒が、聴く者を不快な気分に誘う旋律を奏でていく。
グシャッ......グシャッ......ズチュッ......
グールのパーツや肉片が散らばるも、頭部以外の損壊は瞬きするような僅かな時間で即再生していく。
グールを殴る手は止めずに、どうすれば早くコイツを殺せるのかを考えていく。
自分の場合は部位ごとに、そして損壊の度合いにより、血液の使用量は増えていった。
コイツが自分と同じ物をスキルで消費しているのか、違う物を消費しているのかはわからない。
ただ、この程度のヤツが無限に残機を持っているなんて事はないはずだ。
「指、手首、肘から先、腕一本......一瞬、指、足首、膝から下、足一本......これも一瞬、股間......三秒くらい、腹......十五秒くらい、鳩尾付近......十五秒くらい、右胸......三秒くらい、左胸......二十秒くらい、右半身......二十秒くらい、左半身......一分くらい」
試しに大まかな部位ごとに別けて潰していくと、興味深い発見があった。
治るスピードに違いがあった。生きる為に重要な部位になるほど治るのが遅く、重要でない部位、末端に近い部位ほど回復が早くなる。
自分の場合は頭以外は一瞬で治っているから、再生スピードは参考にならないけど、この時間の掛かり方を見てみると......ゾンビ系と不死鳥の元々のスペックの違いがよくわかる。
血を使っての再生と、ナニかを使っての再生を一緒に考えるのはおかしいけど、かなり参考になった......後はなるべく早く殺しきる事だけを考えよう。
再生に時間の掛かる部位を重点的に攻撃......攻撃......攻撃......攻撃......攻撃......
五分ほど殴り続けたくらいだろうか、ようやくヤツの再生スピードに翳りが見えてくる。
しかし、体の方に注意を向けすぎていたのが災いし、グールの頭の再生が一気に進んでいたのを見逃していた。
それでも圧倒的優位なのは変わらず、片手を自由にして炎魔法で焼かれるとどうなるのかを試してみようとしていた。
――グールは無意識下で......生への執着とも言えるだろうか。
己が気を失っている間に、死にかける寸前にまで追い込まれていた事で発動した奇跡。
胸や腹の部位再生を後回しにしてまで頭を復活させて意識を回復させた。
相手は己を倒したと思って油断していると断定したグールは、己をここまで追い詰めた敵に襲いかかろうとして振り返ると......
「おあぁっ」
炎の玉をなるべく大きなサイズにしようと四苦八苦していた時に、グールが不意に動き出したことに驚いてしまい......
制御が不十分なままの炎魔法が、飛び起きたグールに向かって放たれてしまう。
なるべく大きくしようと作られていた炎の玉は、術者の制御から離れて......尚、大きくなろうと動き出していた。
魔法のある世界では、火が燃える仕組み等は理論建てて説明される事は無い。
なぜなら、不可解な事象は全て「魔法だから」、「魔力の大きさの違い」、「魔法の才能」で片付けられるからだ。
しかし日本では、学校に行っていれば頭がどんなに悪くても、最低限の火が燃える仕組みくらいは頭に残るだろう。
火種は無くても魔力で火は出せる。後、火が強く燃えるのに必要なのは何か......
それは酸素。
酸素を取り込ませれば大きくなるのではないかと、そう試行錯誤している最中に放たれた炎の玉は、自ら大きくなろうと周囲の酸素を取り込み始めた。
「アハハハハッ......これはやばいぞっ」
グールに着弾するまでコンマ何秒か。その僅かな時間でも酸素を取り込み、着々と大きさを増している炎の玉を見て危険と判断。
すぐさまその場から飛び退き、自分が入ってきた入口に向かってダイブ......
普通では絶対に間に合わないタイミングだろう。だが、そこまで動けたのは偏に敏捷を上げていたからだろう。
ダイブした直後、周囲が白く照らされ、続いて凄まじい轟音と爆風がダンジョンを揺らした。
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