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12話
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約一時間後、寛子は家に着いた。
今は八時半。この時間ならまだ父は家にいるはず。
寛子は静かに深呼吸をし、ゆっくりと玄関を開け、リビングに向かった。
「ただいま」
「寛子!どこに行ってたの!連絡もせずに!泊まる時 は連絡しなさいっていつも言ってるでしょう!もう、心配かけないで。」
母は物凄い勢いで心配の言葉を寛子に放った。
心配する母の姿を見て少し申し訳なく思った。
「うん、ごめんなさい」
誤った後、父を見ると何事も無かったかのように新聞を読んでいた。
寛子は父の方に足を進めた
「お父さん。お話しがあります」
父は新聞を閉じる事無く返事をした。
「なんだ。言ってみろ」
寛子は少し唾を飲み込み話し始めた。
「お父さんに私と彼の事認めて欲しい」
母は少し驚いた顔をしていたが、父は新聞を読み続けたまま寛子の方を見た
「彼。とはお前が公園で会ってる男のことか?お前はそんな関係ではないと言っていたが?」
「あの時は咄嗟にあんな風に言ってしまったけど、私は。私と彼は本気なの。それを認めて欲しい」
父は新聞を閉じ、飲みかけのコーヒーに手を伸ばし一口飲んだ。
「津田颯。工場勤務の17歳。幼い頃に父親を亡くし、去年母親が他界し、家賃3万円のボロアパートに住みながら画家という馬鹿げた将来性の無い夢を持ち、聞くに耐えない給料で暮らしてる彼のどこがいいんだ?」
寛子は全身に虫唾が走った。
「調…べたの。彼の事…」
「当然だ。大事な一人娘に馬鹿げた恋をしてるやつを調べるのは当然だ」
「なんで…なんでそんな事をする必要があるの?それに言ったでしょ?私たちは互いに惹かれあってるの。何も知らないくせになんでそんな事ができるわけ?」
「ああ、特に何も知らんが知る必要もない。こんな少しの情報だけですぐに判断がつく。彼は家に見合う能力を何一つ持ってはいない。絵を描いて儲ける事なんて叶うはずのない夢を持つ男には娘はやれんな」
寛子は拳を強く握った。
「百歩譲って私たちの関係に口を挟むのはいい。だけど…だけど彼の夢を馬鹿にするのは許せない!彼の絵は人を魅了する力があるの!あなたがいう馬鹿げた夢を実現させれるほどの力があるの!それに…それに…」
人生でこれほどの大声を出した事のない寛子は息を切らし、言葉に詰まっていた。
「言いたい事はそれだけか?どちらにしろ、もうお前はその男と会う事は出来ない。諦めるんだな」
顔色一つ変えずに父は淡々と話した。
「どういう事?会えない?彼に何をしたの?」
「さあな。知らなくていい事だ」
そう言って、父は鞄を持ち会社へと出かけた。
急に心臓を握り潰された様な感覚だった。
彼にどんな事をされるのかという恐怖で寛子はその場に蹲った。
今は八時半。この時間ならまだ父は家にいるはず。
寛子は静かに深呼吸をし、ゆっくりと玄関を開け、リビングに向かった。
「ただいま」
「寛子!どこに行ってたの!連絡もせずに!泊まる時 は連絡しなさいっていつも言ってるでしょう!もう、心配かけないで。」
母は物凄い勢いで心配の言葉を寛子に放った。
心配する母の姿を見て少し申し訳なく思った。
「うん、ごめんなさい」
誤った後、父を見ると何事も無かったかのように新聞を読んでいた。
寛子は父の方に足を進めた
「お父さん。お話しがあります」
父は新聞を閉じる事無く返事をした。
「なんだ。言ってみろ」
寛子は少し唾を飲み込み話し始めた。
「お父さんに私と彼の事認めて欲しい」
母は少し驚いた顔をしていたが、父は新聞を読み続けたまま寛子の方を見た
「彼。とはお前が公園で会ってる男のことか?お前はそんな関係ではないと言っていたが?」
「あの時は咄嗟にあんな風に言ってしまったけど、私は。私と彼は本気なの。それを認めて欲しい」
父は新聞を閉じ、飲みかけのコーヒーに手を伸ばし一口飲んだ。
「津田颯。工場勤務の17歳。幼い頃に父親を亡くし、去年母親が他界し、家賃3万円のボロアパートに住みながら画家という馬鹿げた将来性の無い夢を持ち、聞くに耐えない給料で暮らしてる彼のどこがいいんだ?」
寛子は全身に虫唾が走った。
「調…べたの。彼の事…」
「当然だ。大事な一人娘に馬鹿げた恋をしてるやつを調べるのは当然だ」
「なんで…なんでそんな事をする必要があるの?それに言ったでしょ?私たちは互いに惹かれあってるの。何も知らないくせになんでそんな事ができるわけ?」
「ああ、特に何も知らんが知る必要もない。こんな少しの情報だけですぐに判断がつく。彼は家に見合う能力を何一つ持ってはいない。絵を描いて儲ける事なんて叶うはずのない夢を持つ男には娘はやれんな」
寛子は拳を強く握った。
「百歩譲って私たちの関係に口を挟むのはいい。だけど…だけど彼の夢を馬鹿にするのは許せない!彼の絵は人を魅了する力があるの!あなたがいう馬鹿げた夢を実現させれるほどの力があるの!それに…それに…」
人生でこれほどの大声を出した事のない寛子は息を切らし、言葉に詰まっていた。
「言いたい事はそれだけか?どちらにしろ、もうお前はその男と会う事は出来ない。諦めるんだな」
顔色一つ変えずに父は淡々と話した。
「どういう事?会えない?彼に何をしたの?」
「さあな。知らなくていい事だ」
そう言って、父は鞄を持ち会社へと出かけた。
急に心臓を握り潰された様な感覚だった。
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