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三章:龍を宿す卯月の姫君
第35話:契約
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夢の中、いつもの神社で目を覚ます。
だけどそこは少し様子が違った――神社の鏡が置かれているまでの石の道に一本の刀が刺さっていたのだ。
「こんばんは神綺、少し話さないか?」
「いいわよ貴方、話しましょう?」
テーブルが用意されていたので近くにあった椅子に座って神綺と向かい合う。
彼女は一人でお茶を飲み、いつもと違って俺の言葉を待っている。
「――神綺、俺には前世の記憶があるんだ」
「それは知ってるわ、貴方の魂は歪だもの。一人なのに二つ分、それは輪廻しても記憶を失わなかったモノの特徴だもの――でも、今語るって事はそれだけじゃないのでしょう?」
魂を見れる神綺なら気付いてると思ってたからこれは許容範囲。
だけど……次の言葉はきっと神綺でも予想できない事だろう。
「そうだな。なぁ神綺俺はこの世界の外から来たんだよ」
「……外ってどういうことかしら?」
「正確に言えば、俺はこの世界の観測者だったんだ。俺は前世で漫画としてこの世界をみてた読者だったんだ」
それから俺はこの世界の事を話した。
俺が覚えている限りの前世の事、【けもの唄】の事しか語れないけど、俺が見て来たこの世界の彼らの事を。
「そうだったのね、だから貴方は私じゃない私を見てたと」
「気付かれてたのか、ごめんな」
「別に良いわよ、貴方はそれでも私を見てくれたから触れあってくれたのだから」
そう言って神綺は俺の手を取った。
愛おしそうに大事な宝物を包むように……だからこそ、俺はそんな彼女にこう伝える。こんな俺を受け入れてくれた彼女だから、原作の神綺というキャラではなく俺と関わって言葉を交わしてくれた彼女にこう伝えた。
「なぁ神綺……俺と契約してくれ」
「……いいの?」
「覚悟はした。最後の一押しも神綺がやってくれた。だから俺はもう迷わない」
「理由を聞かせて……どうして契約する気になったのかしら? それに納得出来ないの、だって私が理由じゃないでしょう? きっとあの子の為に……」
「違うぞ、龍華のためだけじゃないんだ。これは俺自身の為でもある」
「……どういうことかしら?」
分からないのかそう聞いてくる神綺。
そんな彼女に俺ははっきりと自分の意志を伝えることにした。
「俺さ、気付いたんだよ。俺の夢はこの世界の奴らに笑っていて欲しいって事だって――だから、その夢の為に力が欲しい。俺を受け入れてくれた神綺と一緒に前に進みたい。これはその為の契約だ。全部を上げるから貴女の力を――貴女をください」
俺と一緒に未来を歩んでくれと、もはやプロポーズに近いその言葉を彼女に伝えた。俺だって恥ずかしい、だけど彼女にはそのぐらいの言葉を捧げなければいけない。ずっと俺を見守ってくれた相棒になる彼女に本心で一緒にいたいと。
「ふふふ、熱烈ね……本当に私が欲しいのね。二言はないかしら?」
「あぁ、これより先俺はお前のモノだ――そして、貴女を守り抜くと誓う。だからどうか、俺と契約してくれ女神様」
その言葉を聞いた神綺は笑った。
心の底から今まで見たことない程に綺麗な笑みを浮かべて、椅子から降りて俺に前にやってきた。
「付いてきなさい、神社の中に案内するわ」
そう言われて俺は彼女に付いていく、賽銭箱の柵を越え四季が刺さる石の庭へと。
……そして、彼女は自分の手を刺さる四季で傷付けた。
「手を器にしなさい、そこに血を垂らすわ」
原作通りの言葉、その光景を覚えてたので俺は手で器を作って彼女の血を受け入れた。これから始まる契約は術的な観点から見て最悪のモノだ。
女神の血を黄泉ツ竈食をして取り込むという、あまりにも重い契約。これを飲めば俺は四季を扱えるだろうが、それと同時に死者に近くなる。
でも、それでも――あの龍神に勝つためにこれは仕方ない事なのだ。
皆が笑って過ごせるように、俺がその未来を誇れるように……どうしても。
「十六夜刃、これが俺の名前だ。神綺」
「えぇ、覚えるわ絶対に忘れないわよ――刃、私の運命の人」
それを最後に俺は溜まった血――彼女の力を飲み込んだ。
だけどそこは少し様子が違った――神社の鏡が置かれているまでの石の道に一本の刀が刺さっていたのだ。
「こんばんは神綺、少し話さないか?」
「いいわよ貴方、話しましょう?」
テーブルが用意されていたので近くにあった椅子に座って神綺と向かい合う。
彼女は一人でお茶を飲み、いつもと違って俺の言葉を待っている。
「――神綺、俺には前世の記憶があるんだ」
「それは知ってるわ、貴方の魂は歪だもの。一人なのに二つ分、それは輪廻しても記憶を失わなかったモノの特徴だもの――でも、今語るって事はそれだけじゃないのでしょう?」
魂を見れる神綺なら気付いてると思ってたからこれは許容範囲。
だけど……次の言葉はきっと神綺でも予想できない事だろう。
「そうだな。なぁ神綺俺はこの世界の外から来たんだよ」
「……外ってどういうことかしら?」
「正確に言えば、俺はこの世界の観測者だったんだ。俺は前世で漫画としてこの世界をみてた読者だったんだ」
それから俺はこの世界の事を話した。
俺が覚えている限りの前世の事、【けもの唄】の事しか語れないけど、俺が見て来たこの世界の彼らの事を。
「そうだったのね、だから貴方は私じゃない私を見てたと」
「気付かれてたのか、ごめんな」
「別に良いわよ、貴方はそれでも私を見てくれたから触れあってくれたのだから」
そう言って神綺は俺の手を取った。
愛おしそうに大事な宝物を包むように……だからこそ、俺はそんな彼女にこう伝える。こんな俺を受け入れてくれた彼女だから、原作の神綺というキャラではなく俺と関わって言葉を交わしてくれた彼女にこう伝えた。
「なぁ神綺……俺と契約してくれ」
「……いいの?」
「覚悟はした。最後の一押しも神綺がやってくれた。だから俺はもう迷わない」
「理由を聞かせて……どうして契約する気になったのかしら? それに納得出来ないの、だって私が理由じゃないでしょう? きっとあの子の為に……」
「違うぞ、龍華のためだけじゃないんだ。これは俺自身の為でもある」
「……どういうことかしら?」
分からないのかそう聞いてくる神綺。
そんな彼女に俺ははっきりと自分の意志を伝えることにした。
「俺さ、気付いたんだよ。俺の夢はこの世界の奴らに笑っていて欲しいって事だって――だから、その夢の為に力が欲しい。俺を受け入れてくれた神綺と一緒に前に進みたい。これはその為の契約だ。全部を上げるから貴女の力を――貴女をください」
俺と一緒に未来を歩んでくれと、もはやプロポーズに近いその言葉を彼女に伝えた。俺だって恥ずかしい、だけど彼女にはそのぐらいの言葉を捧げなければいけない。ずっと俺を見守ってくれた相棒になる彼女に本心で一緒にいたいと。
「ふふふ、熱烈ね……本当に私が欲しいのね。二言はないかしら?」
「あぁ、これより先俺はお前のモノだ――そして、貴女を守り抜くと誓う。だからどうか、俺と契約してくれ女神様」
その言葉を聞いた神綺は笑った。
心の底から今まで見たことない程に綺麗な笑みを浮かべて、椅子から降りて俺に前にやってきた。
「付いてきなさい、神社の中に案内するわ」
そう言われて俺は彼女に付いていく、賽銭箱の柵を越え四季が刺さる石の庭へと。
……そして、彼女は自分の手を刺さる四季で傷付けた。
「手を器にしなさい、そこに血を垂らすわ」
原作通りの言葉、その光景を覚えてたので俺は手で器を作って彼女の血を受け入れた。これから始まる契約は術的な観点から見て最悪のモノだ。
女神の血を黄泉ツ竈食をして取り込むという、あまりにも重い契約。これを飲めば俺は四季を扱えるだろうが、それと同時に死者に近くなる。
でも、それでも――あの龍神に勝つためにこれは仕方ない事なのだ。
皆が笑って過ごせるように、俺がその未来を誇れるように……どうしても。
「十六夜刃、これが俺の名前だ。神綺」
「えぇ、覚えるわ絶対に忘れないわよ――刃、私の運命の人」
それを最後に俺は溜まった血――彼女の力を飲み込んだ。
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