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三章:龍を宿す卯月の姫君
第28話:ケモノを狩る日
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夜の森を数人で駆けていく。
今は二月であり雪が降りかなり積もったあとであり少し歩きにくいが、前を進む大人達は気にした素振りがない。そこに関して年齢による差を感じてしまい、はやく成長したいなとそんな事を思った。
「……今回は高千穂の龍穴を狙ったケモノの討伐だ。結界によると数は三、どれもが中位だから警戒を怠るなよ」
前を進む逢魔さんが確認するかのようにそう言いえば、一緒にいる大人達が頷いた。そんな中で俺は龍華に歩幅を合わせて進み、軽く耳打ちをする。
「ここの龍穴も狙われるのか?」
「そうね、ケモノは力を求めるモノ……力の奔流とも言える龍穴を狙うのは当然よ」
「……へぇそうなんだな」
十六夜家が守る富士の龍穴もかなり狙われていたし、やっぱりケモノは力を求めるモノなんだろう。あっちの場合は三日に一度は襲撃に遭うし、定期的な狩りが必要だったが卯月家もそうなんだろうな。
そんなこんなで進みながら、俺は周囲に冷気を張り巡らす。
最近出来るようになった事の一つに冷気による敵感知があり、俺が操る冷気の範囲に何かが来れば分かるようになったのだ。
霊力を感知できる俺からするとあまりいらないように見えるが、ケモノの中には霊力ではなく瘴気のみで構成されたモノもいるからこれは将来的に使える筈だ。
「逢魔さん、反応ありました。何かいます」
「便利だなそれ……お前等気を引き締めろ一匹目だ」
皆が武器を構えたので俺も氷刀を作り構えた。
――感知できる大きさと形的に相手は猿のような姿をしているだろう。
どんな攻撃をしてくるか分からないが、警戒するに超したことない……。
「作戦はいつものだ。刃は初めてだから今回は見学だな」
接近する頃にそう言って、相手の姿が見えた瞬間に一人の女性が煙を放出し、そしてそれが辺りに充満する頃相手の猿が縛られていた。
「キ――!?」
瞬く間に縛られた猿のケモノ、中位だから仕方ないと思うがその拘束を破ることが出来ず暴れるのみだ。
「終わりッス!」
「やるわ」
そして最後に最後の一人が刀で龍華が岩剣で攻撃し猿の命を刈り取った。
それで終わり――完璧な連携により敵のケモノは狩られ、その場には何も残らなかった。
「速いですね」
「まぁな、ここ数年はこの狩り方でやってる。龍華が戦えるようになってから火力が上がったからな。中位なら簡単に狩れるぞ」
中位レベルって原作一巻のボスだったはずなんだけどなぁ。
仕方ないとはいえそれが簡単に狩られる光景は普通に衝撃的だ――今の俺なら一人でも狩れはするが、大技が必要だし避けられる可能性を考慮すると孤蝶のサポートが必要になるから。
「でだ刃、次のケモノを探ってくれるか? うちの結界は入ってきた事は分かるが、場所までは分からないんだよ」
「了解です。それなら範囲広げてみますね」
頼まれたので三割の霊力を冷気に変換し広い範囲に放出する。
タダでさえ冬で寒い夜の森の温度が一気に変わるのを感じながらも、俺は蛇の様なケモノを見つける事が出来た。
「いました、かなり近くに蛇のケモノが」
「ん――じゃあ刃、一人でそいつ狩ってこい」
「はい――はい? え、俺がですか?」
「あぁ、お前なら行けるだろ?」
「えぇ……」
何言ってんだこの人、流石に一人で中位のケモノとか無理だろう。
逢魔さんの事は信頼しているが、普通に聞き返す位には頭おかしいこと言われた気がする。
「いや、お前が前に狩った牛頭はただの中位より強いんだぞ? ならいけるだろ」
「私は反対よお父様、やるなら私も手伝うわ」
「いや駄目だ。俺も改めて刃の実力を見てみたいからな」
「…………でも、二人なら連携も学べると思うの。だから私に手伝わせて」
「……まぁ、それならいいぞ。だけど龍華、お前がやるのはサポートだ。やりすぎるなよ」
こくり……そう龍華が頷いたことで、俺達は二人で蛇のケモノに挑むことになった。やはりそこで感じる違和感、前のコイツだったら俺が一人で戦うのを見て楽しむぐらいのことはしそうなのに、まじでどうしてなのだろうか?
だけど、戦闘の前にそれを気にしてる余裕はないので俺は意識を切り替えて蛇のケモノと対峙した。
「じゃあ龍華、俺が前張るから何かあったら守ってくれ」
「えぇ、任せて頂戴」
とても巨大な蛇のケモノ。
一見するとそういう龍に見えるようなそいつが俺達の存在に気付くと咆哮し襲いかかってくる。
鼓膜に直接響く大咆哮、出方を窺えば相手が鱗を飛ばしてきた。
鋭利なその鱗、それを冷気で防いだのだが――直後爆発する。熱があるせいか、完全に防ぎきれず鱗の破片が俺の体を傷付けた。
「ッめんどくさいなこいつ」
術に近いモノを使えるという事は中位の中でも強い類いのモノになる。
逢魔さん達に見られてる以上、下手な姿は晒せないしここはかなり力を出していいだろう。
攻撃は相手から、その巨体を生かして突撃してくる。
それを俺は避けようとしたのだが、それより先に地面から木が生えてきて蛇の突撃が防がれた。避けて反撃する気だったけど、まぁ隙が出来るならいいかと思いながら怯む蛇を俺は斬りつけた。
「――硬った。鱗が鎧みたいになってるな――ならこうするか……いくぞ白雪」
刀を作り替える事で霊力を消費し、そのまま追撃。
マーキングしたことにより、今から冷気全てがこいつの敵になる。
冷気を出せる範囲が増えた事により、必然的に武器も増え相手のことをより追い詰めることが出来るだろう。
最初は爆発する鱗で対処していた蛇だったが、冷気を出しているだけで増える武器に対処が出来なくなり最終的に無数の武器に串刺しにされた。
それから数秒、事切れた筈の蛇の鱗が赤く染まり始め――嫌な予感がした瞬間にどこからともなく巨大な岩剣が作り出され相手を押しつぶした。
「助かった龍華、多分あのままじゃ爆発してた」
「嫌な予感がしたもの……それより傷はないかしら? 防いでたから無傷よね」
「いや、ちょっと怪我した。まぁかすり傷だからすぐ治るだろうけど」
「……怪我したの? どこ」
「肩に掠った程度だぞ? 気にするなって」
「駄目よ、お父様に霊薬貰いましょう? それに今日は帰るように言うわ」
龍華はそのまま逢魔さん達の元に戻り、俺に今言った事を伝えたようだ。
何か変な感じがして、俺もすぐにそっちに向かったんだがそこでは言い合いが行われていた。
「駄目だ龍華、帰るのは許可できん」
「なんで? あと一匹程度のならお父様達で狩れるでしょう? 私達がいなくてもいいはずよ」
「今回は刃の見学も兼ねて来てるんだぞ……怪我したのなら休ませるが、見学ぐらいはまで出来るだろ」
「――分かったわ。それならはやく帰れるように私が狩ってくる。いいわよね」
「いや、ちょっと待て龍華――おいお前等、龍華を追うぞ!」
様子がおかしい龍華は、逢魔さんの言葉を無視してそのまま森の奥に行ってしまった。流石に不味いので俺も彼女の気配を探りながら追って見れば、遠くから大きな音と断末魔が響く。
「ねぇ、これで帰れるわよね――刃」
音のした方に辿り着きそこで見たのは、巨大なケモノを何十本もの岩剣で串刺しにして笑顔でいた龍華の姿だった。
今は二月であり雪が降りかなり積もったあとであり少し歩きにくいが、前を進む大人達は気にした素振りがない。そこに関して年齢による差を感じてしまい、はやく成長したいなとそんな事を思った。
「……今回は高千穂の龍穴を狙ったケモノの討伐だ。結界によると数は三、どれもが中位だから警戒を怠るなよ」
前を進む逢魔さんが確認するかのようにそう言いえば、一緒にいる大人達が頷いた。そんな中で俺は龍華に歩幅を合わせて進み、軽く耳打ちをする。
「ここの龍穴も狙われるのか?」
「そうね、ケモノは力を求めるモノ……力の奔流とも言える龍穴を狙うのは当然よ」
「……へぇそうなんだな」
十六夜家が守る富士の龍穴もかなり狙われていたし、やっぱりケモノは力を求めるモノなんだろう。あっちの場合は三日に一度は襲撃に遭うし、定期的な狩りが必要だったが卯月家もそうなんだろうな。
そんなこんなで進みながら、俺は周囲に冷気を張り巡らす。
最近出来るようになった事の一つに冷気による敵感知があり、俺が操る冷気の範囲に何かが来れば分かるようになったのだ。
霊力を感知できる俺からするとあまりいらないように見えるが、ケモノの中には霊力ではなく瘴気のみで構成されたモノもいるからこれは将来的に使える筈だ。
「逢魔さん、反応ありました。何かいます」
「便利だなそれ……お前等気を引き締めろ一匹目だ」
皆が武器を構えたので俺も氷刀を作り構えた。
――感知できる大きさと形的に相手は猿のような姿をしているだろう。
どんな攻撃をしてくるか分からないが、警戒するに超したことない……。
「作戦はいつものだ。刃は初めてだから今回は見学だな」
接近する頃にそう言って、相手の姿が見えた瞬間に一人の女性が煙を放出し、そしてそれが辺りに充満する頃相手の猿が縛られていた。
「キ――!?」
瞬く間に縛られた猿のケモノ、中位だから仕方ないと思うがその拘束を破ることが出来ず暴れるのみだ。
「終わりッス!」
「やるわ」
そして最後に最後の一人が刀で龍華が岩剣で攻撃し猿の命を刈り取った。
それで終わり――完璧な連携により敵のケモノは狩られ、その場には何も残らなかった。
「速いですね」
「まぁな、ここ数年はこの狩り方でやってる。龍華が戦えるようになってから火力が上がったからな。中位なら簡単に狩れるぞ」
中位レベルって原作一巻のボスだったはずなんだけどなぁ。
仕方ないとはいえそれが簡単に狩られる光景は普通に衝撃的だ――今の俺なら一人でも狩れはするが、大技が必要だし避けられる可能性を考慮すると孤蝶のサポートが必要になるから。
「でだ刃、次のケモノを探ってくれるか? うちの結界は入ってきた事は分かるが、場所までは分からないんだよ」
「了解です。それなら範囲広げてみますね」
頼まれたので三割の霊力を冷気に変換し広い範囲に放出する。
タダでさえ冬で寒い夜の森の温度が一気に変わるのを感じながらも、俺は蛇の様なケモノを見つける事が出来た。
「いました、かなり近くに蛇のケモノが」
「ん――じゃあ刃、一人でそいつ狩ってこい」
「はい――はい? え、俺がですか?」
「あぁ、お前なら行けるだろ?」
「えぇ……」
何言ってんだこの人、流石に一人で中位のケモノとか無理だろう。
逢魔さんの事は信頼しているが、普通に聞き返す位には頭おかしいこと言われた気がする。
「いや、お前が前に狩った牛頭はただの中位より強いんだぞ? ならいけるだろ」
「私は反対よお父様、やるなら私も手伝うわ」
「いや駄目だ。俺も改めて刃の実力を見てみたいからな」
「…………でも、二人なら連携も学べると思うの。だから私に手伝わせて」
「……まぁ、それならいいぞ。だけど龍華、お前がやるのはサポートだ。やりすぎるなよ」
こくり……そう龍華が頷いたことで、俺達は二人で蛇のケモノに挑むことになった。やはりそこで感じる違和感、前のコイツだったら俺が一人で戦うのを見て楽しむぐらいのことはしそうなのに、まじでどうしてなのだろうか?
だけど、戦闘の前にそれを気にしてる余裕はないので俺は意識を切り替えて蛇のケモノと対峙した。
「じゃあ龍華、俺が前張るから何かあったら守ってくれ」
「えぇ、任せて頂戴」
とても巨大な蛇のケモノ。
一見するとそういう龍に見えるようなそいつが俺達の存在に気付くと咆哮し襲いかかってくる。
鼓膜に直接響く大咆哮、出方を窺えば相手が鱗を飛ばしてきた。
鋭利なその鱗、それを冷気で防いだのだが――直後爆発する。熱があるせいか、完全に防ぎきれず鱗の破片が俺の体を傷付けた。
「ッめんどくさいなこいつ」
術に近いモノを使えるという事は中位の中でも強い類いのモノになる。
逢魔さん達に見られてる以上、下手な姿は晒せないしここはかなり力を出していいだろう。
攻撃は相手から、その巨体を生かして突撃してくる。
それを俺は避けようとしたのだが、それより先に地面から木が生えてきて蛇の突撃が防がれた。避けて反撃する気だったけど、まぁ隙が出来るならいいかと思いながら怯む蛇を俺は斬りつけた。
「――硬った。鱗が鎧みたいになってるな――ならこうするか……いくぞ白雪」
刀を作り替える事で霊力を消費し、そのまま追撃。
マーキングしたことにより、今から冷気全てがこいつの敵になる。
冷気を出せる範囲が増えた事により、必然的に武器も増え相手のことをより追い詰めることが出来るだろう。
最初は爆発する鱗で対処していた蛇だったが、冷気を出しているだけで増える武器に対処が出来なくなり最終的に無数の武器に串刺しにされた。
それから数秒、事切れた筈の蛇の鱗が赤く染まり始め――嫌な予感がした瞬間にどこからともなく巨大な岩剣が作り出され相手を押しつぶした。
「助かった龍華、多分あのままじゃ爆発してた」
「嫌な予感がしたもの……それより傷はないかしら? 防いでたから無傷よね」
「いや、ちょっと怪我した。まぁかすり傷だからすぐ治るだろうけど」
「……怪我したの? どこ」
「肩に掠った程度だぞ? 気にするなって」
「駄目よ、お父様に霊薬貰いましょう? それに今日は帰るように言うわ」
龍華はそのまま逢魔さん達の元に戻り、俺に今言った事を伝えたようだ。
何か変な感じがして、俺もすぐにそっちに向かったんだがそこでは言い合いが行われていた。
「駄目だ龍華、帰るのは許可できん」
「なんで? あと一匹程度のならお父様達で狩れるでしょう? 私達がいなくてもいいはずよ」
「今回は刃の見学も兼ねて来てるんだぞ……怪我したのなら休ませるが、見学ぐらいはまで出来るだろ」
「――分かったわ。それならはやく帰れるように私が狩ってくる。いいわよね」
「いや、ちょっと待て龍華――おいお前等、龍華を追うぞ!」
様子がおかしい龍華は、逢魔さんの言葉を無視してそのまま森の奥に行ってしまった。流石に不味いので俺も彼女の気配を探りながら追って見れば、遠くから大きな音と断末魔が響く。
「ねぇ、これで帰れるわよね――刃」
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