闇堕ち転生~転生先が主人公だと思ったら闇堕ちする方の双子の兄でしたw~

鬼怒藍落

文字の大きさ
上 下
5 / 43
第一章:闇堕ち予定の男に転生

第4話:目覚めてからの異常事態

しおりを挟む
 夢から覚める。
 彼女の世界から抜け出して、まず感じたのは異常な冷気。
 芯まで凍るっていう表現が一番正しいだろうが、部屋全体が寒く息を吐けばそれは白くなるどころか凍って落ちた。
 辛うじて周りを見渡せば、そこら中に氷で出来た蓮と曼珠沙華が咲いていて幻想的だが不気味な光景が広がっている。

「まさか、これほどの才とは思いませんでした」
「……お袋、何を刃に降ろしたんだ?」
「刃と同じ氷の属性を持つ祖霊の一人を――だからそれに準じた現象が起こるとは思ってましたが……これは本当に凄まじいですね」

 婆さんと父さんが話しているが、俺としては寒すぎて風邪を引きそうなのでなんとかしたい。何が起こってるか分からないが、赤ん坊の風邪って危険って聞くし……。

「なぁお袋、刃をどうするつもりだ? あんたが孫とは言えここまで他人に何かするのは変だぞ」
「変とは失礼ですね、刃の宿した才は暦の一族が欲して止まなかった神降ろしの才。利用価値なら幾らでもあります。ですので、器として今のうちに磨いておこうかと」
「……ふざけてるのか?」
「至って真面目ですよ? この子は特異点にすらなり得る星の生まれ、力をつけなければ死にます――それに私としてもこの子が何を成すかも気になりますしね」

 空気が最悪な気がする。
 俺の事を話されてるのだろうが実感がないし、何よりこんな怖い父さん初めて見た。いつも見てるのは母さんにデレデレしてる姿だけだったからこそ怖い。

「お袋の星詠みの力は信用している――だけどな、刃を利用するのだけは許せない」
「利用とは心外ですね、貴方はこの子の価値を分かっていないでしょう?」
「理解はしている――だから隠してたんだよ」
「あれだけ日に日に増す霊力、隠せるわけ無かったんですよ。でもよかったですね、まだ気付いているのは私だけです。口封じでもしますか?」
「……無理なの知ってて言ってるだろ」

 ゴメン父さん、俺いまいちそこら辺分かってなかったけど多分バレたの瞑想続けた俺が原因だから何も言えない。え、どうしようこの場を収めるためにも泣き出しそうか? 普通に婆さんが怖くて泣く自信があるから泣けるぞ?
 え、プライド? そんなもの前世の意識取り戻してから失ったわ。

「……昴知ってるとは思いますが暦の一族の子供はブランド品と言ってもいいのですよ? それに暦の一族の者達は才を――何より血を薄めることを忌避し、才を高めるためにより濃い血を掛け合わせ素晴らしい作品才能を作る芸術家とも言っていいでしょうね」
「――よく知ってるよ、でも今のあんたを見る限りそれだけじゃないだろ」
「えぇ私にも少なからず婆心はありますので――これは忠告です。隠すならちゃんと隠しなさい。そして才を磨かなければ堕ちた神に狙われるので気を付けなさい、きっかけは渡しました。だから後は貴方達夫婦次第です」
「忠告どうも、でも言われるまでもない。この子は何より剣も俺達が全力で守るぞ。大事な子供なんだお袋に言われなくても守り切る」

 よし泣こう。
 その前にくしゃみが出そうだが、それが終わったら全力で泣いてやる。
 これ絶対子供にする話じゃないって、知りたくなかったよそんな未来、この場の空気最悪だし、和ませるというか終わらせる為に泣き喚いてやる。

「あら、泣いてしまいましたか。というか起きていたのですね」
「――刃も起きたし話は終わりだ。凜も待ってるし帰らせて貰うぞ」
「はい貴方達の兄妹の未来が吉になると願ってますよ」

 ……なんか違和感あったが、そこで俺は父さんに抱えられそのまま部屋を出て行くことになった。一刻も早くこの寒い部屋から出たかったし別にいいんだが、やっぱり泣くのは辛い。赤ん坊は泣いて笑った方がいいと聞くが、普通に前世二十代近くで泣き続けるのはメンタルが……。
 帰りの車の空気は重かった。険しい顔をする父さんと、それに何も聞けずじまいの母さん、弟は完全爆睡し俺は思考を巡らせる。
 朝日が昇り始める山を降りていく車の中で、今日起こった事を振り返る。
 現れた神綺という少女に婆さんがいう俺の利用価値、それに特異点という本来なら剣に言われていた単語。
 かなりの情報量に混乱しそうだが、今俺はどうすればいいのだろうか? 強くならなければ利用されるというのは分かったし、何より未来がヤバいと言うことも。
 これからの怖いことはいっぱいだし、何よりいつか俺の家は襲撃される。
 それまでに出来る事は限られているかもしれないが、闇堕ちするまで何より闇堕ち後の展開を一般人メンタルの俺が耐えられるわけないので少しでも今は出来る事をしよう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

男女比がおかしい世界に来たのでVtuberになろうかと思う

月乃糸
大衆娯楽
男女比が1:720という世界に転生主人公、都道幸一改め天野大知。 男に生まれたという事で悠々自適な生活を送ろうとしていたが、ふとVtuberを思い出しVtuberになろうと考えだす。 ブラコンの姉妹に囲まれながら楽しく活動!

クールな生徒会長のオンとオフが違いすぎるっ!?

ブレイブ
恋愛
政治家、資産家の子供だけが通える高校。上流高校がある。上流高校の一年生にして生徒会長。神童燐は普段は冷静に動き、正確な指示を出すが、家族と、恋人、新の前では

処理中です...