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番外編 記念日(1)
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今日は何の日?
1年365日、毎日何かしらの日が制定されているが、今日10月10日は特にそれが多い。
検索してみると、例えば「ふとんの日」というのが出てくる。2つの10という語呂だ。有名なのでは「目の愛護デー」があるが、こちらは10月10日の形から取ったものである。
他には「缶詰の日」というのがあり、これは語呂や形ではなく、百年以上前の今日、初めて缶詰が作られたそうだ。
10月10日と言えば、古くは体育の日だったが、私が生まれるより前に移動祝日になった。元々東京オリンピックの開会式の日だったので、意味のある祝日は日にちを変えない方がいい気はするが、土曜日と重なって休みが消滅してしまうよりはいい。
今日は何の日かというのは、春に一度遊びに繋げられないか考えたことがあったが、ザリガニくらいしか出て来なくて諦めた。しかし、何十もの記念日の並んだ今日ならどうか。
例えば今日は「いいおでんの日」であり、「ちくわぶ」の日でもある。ちくわぶのおでんを食べたら、2枚抜き達成だ。ちなみにちくわとちくわぶは名前は似ているが、まったく別の食べ物である。奈都と千夏さんくらい違う。
今日は絢音が塾で、涼夏と過ごす予定の日だ。もちろんこの企画は誰とでも出来るが、金銭的制約の少ない涼夏との方が色々と実現しやすいだろう。
昼過ぎに企画が煮詰まったので、5時間目の放課にお披露目すると、絢音は「楽しそうだね」と手を叩いたが、肝心の涼夏はどこか浮かない顔で曖昧に頷いた。
微妙だったかと覗き込むと、涼夏は静かに首を振った。
「いや、企画自体は楽しそうだ。昨日の私なら喜んで乗っただろう」
「今日の涼夏は?」
「実はちょっと調子が悪い」
そう言いながら軽く腹部を押さえる。それだけで突っ込んで聞く必要はない。
女3人で遊んでいるので、全員が万全という日は実は少ない。幸いにも奈都も含めて4人とも重くはないので、活動に支障を来してはいないが、時々調子が優れない時もある。私も活動を断念して、帰って薬を飲んで寝ている日もある。
「ティーを一杯飲んで帰るくらいはって思ってたけど、せっかく千紗都がそんな企画を思い付いたなら、是非それを完遂して欲しい」
「いや、それなら企画はゴミ箱に移動して、ティーを一杯飲みに行くけど」
企画は自分でも面白そうと思うが、それを一人でやるか、涼夏とお茶をするかと言われたら後者だ。何をするかより誰とするかを重視しているので、これがちくわぶではなく、海外旅行だったとしても涼夏とお茶を選ぶだろう。
真顔でそう言うと、涼夏が「重いから」と苦笑した。
「逐一報告してくれ。私は部屋でホットココアでも飲みながら、一人で10月10日を楽しんでる千紗都を堪能する」
表情と口振りからすると、そもそもお茶もそれほど乗り気ではなかったようだ。涼夏に無理をさせることも、これ以上断らせて罪悪感を抱かせることも望んでいないので、私は心得たと頷いた。
「じゃあ、わたしの卓越した10月10日力を見せつける」
「経過はグループに流してね。私も見たい」
絢音が明るい声でそう言ったので、私はもちろんだと頷いた。一人で回るのはいささか寂しいが、二人が見てくれるのなら、リポーターみたいなものだとポジティブに考えられる。
まだ何の日があるかじっくり見てはいないが、二人が羨ましがるような帰宅に挑戦しよう。
1年365日、毎日何かしらの日が制定されているが、今日10月10日は特にそれが多い。
検索してみると、例えば「ふとんの日」というのが出てくる。2つの10という語呂だ。有名なのでは「目の愛護デー」があるが、こちらは10月10日の形から取ったものである。
他には「缶詰の日」というのがあり、これは語呂や形ではなく、百年以上前の今日、初めて缶詰が作られたそうだ。
10月10日と言えば、古くは体育の日だったが、私が生まれるより前に移動祝日になった。元々東京オリンピックの開会式の日だったので、意味のある祝日は日にちを変えない方がいい気はするが、土曜日と重なって休みが消滅してしまうよりはいい。
今日は何の日かというのは、春に一度遊びに繋げられないか考えたことがあったが、ザリガニくらいしか出て来なくて諦めた。しかし、何十もの記念日の並んだ今日ならどうか。
例えば今日は「いいおでんの日」であり、「ちくわぶ」の日でもある。ちくわぶのおでんを食べたら、2枚抜き達成だ。ちなみにちくわとちくわぶは名前は似ているが、まったく別の食べ物である。奈都と千夏さんくらい違う。
今日は絢音が塾で、涼夏と過ごす予定の日だ。もちろんこの企画は誰とでも出来るが、金銭的制約の少ない涼夏との方が色々と実現しやすいだろう。
昼過ぎに企画が煮詰まったので、5時間目の放課にお披露目すると、絢音は「楽しそうだね」と手を叩いたが、肝心の涼夏はどこか浮かない顔で曖昧に頷いた。
微妙だったかと覗き込むと、涼夏は静かに首を振った。
「いや、企画自体は楽しそうだ。昨日の私なら喜んで乗っただろう」
「今日の涼夏は?」
「実はちょっと調子が悪い」
そう言いながら軽く腹部を押さえる。それだけで突っ込んで聞く必要はない。
女3人で遊んでいるので、全員が万全という日は実は少ない。幸いにも奈都も含めて4人とも重くはないので、活動に支障を来してはいないが、時々調子が優れない時もある。私も活動を断念して、帰って薬を飲んで寝ている日もある。
「ティーを一杯飲んで帰るくらいはって思ってたけど、せっかく千紗都がそんな企画を思い付いたなら、是非それを完遂して欲しい」
「いや、それなら企画はゴミ箱に移動して、ティーを一杯飲みに行くけど」
企画は自分でも面白そうと思うが、それを一人でやるか、涼夏とお茶をするかと言われたら後者だ。何をするかより誰とするかを重視しているので、これがちくわぶではなく、海外旅行だったとしても涼夏とお茶を選ぶだろう。
真顔でそう言うと、涼夏が「重いから」と苦笑した。
「逐一報告してくれ。私は部屋でホットココアでも飲みながら、一人で10月10日を楽しんでる千紗都を堪能する」
表情と口振りからすると、そもそもお茶もそれほど乗り気ではなかったようだ。涼夏に無理をさせることも、これ以上断らせて罪悪感を抱かせることも望んでいないので、私は心得たと頷いた。
「じゃあ、わたしの卓越した10月10日力を見せつける」
「経過はグループに流してね。私も見たい」
絢音が明るい声でそう言ったので、私はもちろんだと頷いた。一人で回るのはいささか寂しいが、二人が見てくれるのなら、リポーターみたいなものだとポジティブに考えられる。
まだ何の日があるかじっくり見てはいないが、二人が羨ましがるような帰宅に挑戦しよう。
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