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第58話 対決 4(2)
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一日遊んですっかり夜になったので、打ち上げは別の日にやることになった。遊びの打ち上げとは何かという感じはするが、遊ぶ理由が欲しかったのだろう。
プライエメンバーが私や涼夏と遊びたいかはわからないが、バンド仲間の絢音や同級生だった奈都と遊びたがるのは自然である。特に絢音は四六時中私たちといるから、中学時代はずっと一緒にいた豊山さんとしては寂しい気持ちもあるだろう。
コンビニにだけ寄って、私と涼夏で合わせて300円拠出すると、優勝者たちはアイスを買っていた。結局アイスかよと突っ込むと、奈都が「アイスと決められてるのと、自らアイスを選ぶのの差は大きい」と得意げに言った。わからないでもないが、わからない振りをしておいた。
パラパラと人数が減っていき、例のごとく奈都と涼夏の3人になる。改めて涼夏が、「もっと動けると思ったのになぁ」と残念そうに言って、奈都が小さく肩をすくめた。
「他のみんながもっと動けただけだよ」
「それはねー」
「走り込みする?」
奈都が両手を前後に振ると、涼夏がうんざりだと首を振った。
「それは文明人のすることじゃないな」
まあまたやろうと言って、涼夏は乗り換え駅で降りて行った。とても楽しかったし、またやりたいのはやまやまだが、高校生には少々厳しいお値段だ。
「次はチサと同じチームでやりたいな」
奈都がそう言いながら甘えるように寄りかかってきた。髪の毛が頬をくすぐったので、せっかくなので全力で嗅いでみると、奈都が悲鳴を上げて顔を離した。
「すぐ嗅ぐ!」
「いつも涼夏と絢音とばかり遊んでるから、たまにはこうして他のメンバーで遊ぶのも新鮮」
奈都の非難をスルーしてそう言うと、奈都が血相を変えて「おかしいから!」と声を上げた。
「なんで私、『他のメンバー』の方に入ってるの!?」
「なんとなく。涼夏じゃないけど、私ももうちょっと動けると思った」
「アヤも似たようなものだったよ。細いし髪の毛縛ってるから、すごいスポーツ少女に見えるけど」
要するに、帰宅部は全員、もっと運動しろと奈都がまとめた。確かに、絢音も体を動かすのは好きだが、動かしているわけではない。中学時代も勉強しているかギターを弾いているだけの3年間だったと言っていたので、身体能力は私や涼夏と大差ない。ダイエットのために定期的に動いている私が一番運動量が多そうだ。
だからこそ、もっと動けると思ったのだが、体力があるのとボールを蹴ったり投げたりする技術はまったく別物だ。
「奈都は予想通り、一番動けてたね。さすが私の使い魔。誇らしい」
「魔になった覚えはないから」
「使い人」
「召使いじゃん。千紗都お嬢様、お背中をお流しいたします」
どうでもいい話をしていたら最寄り駅まで帰ってきたので電車を降りた。とりあえずハグしてみると、全体的にしっとりしていた。たくさん汗をかいたので仕方ない。
「今日は予定を空けてくれてありがとね」
耳元でそう囁くと、奈都がせわしなく私の背中を撫でながら「覚えてたんだ」と口走った。
「優先度は見誤らない女だから」
「よく言う! どれだけ日頃誘いを断られてるか。あっ、優先度が低いから!」
「そういう意味じゃないから!」
大袈裟に反応した私を、奈都が早口に否定する。では一体どういう意味なのかよくわからないが、掘り下げるほどの内容でもない。
「今後も、くれぐれも優先度を見誤らないように付き合ってください」
体を離して軽くキスをすると、奈都がもじもじしながら頷いた。随分としおらしいが、どうせ変わらないだろう。奈都としては不本意だろうが、その点に関してはもう、あまり期待していない。
一応奈都の肩を持つと、私が遊びたがりすぎているだけで、別にそこまで付き合いが悪いわけではない。愛友が3人いるので、分散すればいいのだが、毎回全員に声をかけるポリシーだ。そういう意味では、3回に1回付き合ってくれたら十分とも言える。何せ私は毎週土日暇している。
一人になると、若干筋肉痛を感じた。父親などは、1日か2日経ってからしか痛みが来ないと言っているので、若い証拠だろう。結果はボロボロだったが、私なりには頑張ったので、冷蔵庫にシュークリームでも入っていることを期待して帰ることにしよう。
プライエメンバーが私や涼夏と遊びたいかはわからないが、バンド仲間の絢音や同級生だった奈都と遊びたがるのは自然である。特に絢音は四六時中私たちといるから、中学時代はずっと一緒にいた豊山さんとしては寂しい気持ちもあるだろう。
コンビニにだけ寄って、私と涼夏で合わせて300円拠出すると、優勝者たちはアイスを買っていた。結局アイスかよと突っ込むと、奈都が「アイスと決められてるのと、自らアイスを選ぶのの差は大きい」と得意げに言った。わからないでもないが、わからない振りをしておいた。
パラパラと人数が減っていき、例のごとく奈都と涼夏の3人になる。改めて涼夏が、「もっと動けると思ったのになぁ」と残念そうに言って、奈都が小さく肩をすくめた。
「他のみんながもっと動けただけだよ」
「それはねー」
「走り込みする?」
奈都が両手を前後に振ると、涼夏がうんざりだと首を振った。
「それは文明人のすることじゃないな」
まあまたやろうと言って、涼夏は乗り換え駅で降りて行った。とても楽しかったし、またやりたいのはやまやまだが、高校生には少々厳しいお値段だ。
「次はチサと同じチームでやりたいな」
奈都がそう言いながら甘えるように寄りかかってきた。髪の毛が頬をくすぐったので、せっかくなので全力で嗅いでみると、奈都が悲鳴を上げて顔を離した。
「すぐ嗅ぐ!」
「いつも涼夏と絢音とばかり遊んでるから、たまにはこうして他のメンバーで遊ぶのも新鮮」
奈都の非難をスルーしてそう言うと、奈都が血相を変えて「おかしいから!」と声を上げた。
「なんで私、『他のメンバー』の方に入ってるの!?」
「なんとなく。涼夏じゃないけど、私ももうちょっと動けると思った」
「アヤも似たようなものだったよ。細いし髪の毛縛ってるから、すごいスポーツ少女に見えるけど」
要するに、帰宅部は全員、もっと運動しろと奈都がまとめた。確かに、絢音も体を動かすのは好きだが、動かしているわけではない。中学時代も勉強しているかギターを弾いているだけの3年間だったと言っていたので、身体能力は私や涼夏と大差ない。ダイエットのために定期的に動いている私が一番運動量が多そうだ。
だからこそ、もっと動けると思ったのだが、体力があるのとボールを蹴ったり投げたりする技術はまったく別物だ。
「奈都は予想通り、一番動けてたね。さすが私の使い魔。誇らしい」
「魔になった覚えはないから」
「使い人」
「召使いじゃん。千紗都お嬢様、お背中をお流しいたします」
どうでもいい話をしていたら最寄り駅まで帰ってきたので電車を降りた。とりあえずハグしてみると、全体的にしっとりしていた。たくさん汗をかいたので仕方ない。
「今日は予定を空けてくれてありがとね」
耳元でそう囁くと、奈都がせわしなく私の背中を撫でながら「覚えてたんだ」と口走った。
「優先度は見誤らない女だから」
「よく言う! どれだけ日頃誘いを断られてるか。あっ、優先度が低いから!」
「そういう意味じゃないから!」
大袈裟に反応した私を、奈都が早口に否定する。では一体どういう意味なのかよくわからないが、掘り下げるほどの内容でもない。
「今後も、くれぐれも優先度を見誤らないように付き合ってください」
体を離して軽くキスをすると、奈都がもじもじしながら頷いた。随分としおらしいが、どうせ変わらないだろう。奈都としては不本意だろうが、その点に関してはもう、あまり期待していない。
一応奈都の肩を持つと、私が遊びたがりすぎているだけで、別にそこまで付き合いが悪いわけではない。愛友が3人いるので、分散すればいいのだが、毎回全員に声をかけるポリシーだ。そういう意味では、3回に1回付き合ってくれたら十分とも言える。何せ私は毎週土日暇している。
一人になると、若干筋肉痛を感じた。父親などは、1日か2日経ってからしか痛みが来ないと言っているので、若い証拠だろう。結果はボロボロだったが、私なりには頑張ったので、冷蔵庫にシュークリームでも入っていることを期待して帰ることにしよう。
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