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第55話 誕生日2 3(1)

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 ファッションというのは面白くて難しい。自分の好きなものと似合うものが違うというのはよくあるが、店員さんのオススメをそのまま着るとかでもない限り、基本的には好きなものしか買わない。
 マンネリを打破するためにも、敢えて違う服を着てみるのはとても良いアプローチだが、そんな挑戦に使うお金はないし、店で延々と試着するのも落ち着かない。
 そこで、4人の個性を集結させて、新しい服装にチャレンジしようというのがこの試みである。そういう主旨なので、なるべく自分では選ばないものが良いだろうと、とりあえず涼夏が時々着ているサロペットを試してみることにした。
 1着も持っていない上、絶対に似合わないと思っているアイテムの一つだ。丈が短いので、上もそれに合わせて半袖のTシャツを着る。鏡で見てみたら、案の定とても子供っぽく、違和感しかなかった。
「千紗都は優しい感じの美人だから、そういう元気なアイテムは似合わないな」
 涼夏が笑いながらスマホを向けた。確実に奈都の方が似合いそうだが、そもそも奈都はこういうアイテムを持っている。今回の趣旨をしっかりと理解してくれているのか、奈都は絢音の持ってきた膝丈のワンピースを着て、涼夏のベルトを腰の高い位置に着けた。
 肩周りが寂しいからと、大人びたカーディガンを羽織ったら、案の定大人の女性のシルエットになった。似合わないわけではないが、元々ボーイッシュ寄りの子なので、違和感が強い。本人もそうらしく、いつも涼夏が雑に来ているパーカーを着たら、幾分ましになった。
「見たことのない組み合わせだ」
 涼夏が笑いながら写真を撮ると、絢音がピンクのスカートを奈都に押し付けた。
「次はこれで。今日はナツを女の子にしよう」
「いや、割と昔から女だから」
 奈都が半眼でそう言いながら着替える。スカートと厚手のパーカーを着たら、適当な格好で通学する大学生みたいになった。
「パーカーとスカートの組み合わせが悪いんじゃない? 私と奈都みたいに」
「それ、相性最高だから。90%だから」
 奈都が心外だと首を振る。涼夏が私の持ってきたミニを手に取った。
「短いのなら大丈夫だと思うけど」
 私のスカートと絢音の持ってきた存在感の強いベルト、それに涼夏の雑なパーカーを合わせたら、普通の女子高生になった。これに白のソックスにスニーカーでも履けば完璧だ。
「涼夏のなんでも似合う感、すごいね」
「いや、ロングは似合わんと思う」
 試しに先程奈都が轟沈したワンピースを着てみたが、言うほど悪くはなかった。やや格好に対して顔立ちが幼いが、この人はメイクでどうにでも出来る。
 私は涼夏のジーンズに変なTシャツ、奈都のジャケットを羽織って、絢音のキャップをかぶったら、何も考えていない男の子みたいになった。
「ジーンズにジージャンはないな」
 涼夏が絢音の持ってきた黄色のパンツを押し付けてきたので、それを穿いてみる。上もTシャツから襟付きのシャツにしてみたら、悪くはないがだいぶ年上っぽい感じになった。
「大体、このパンツが若者向けじゃない」
「めちゃくちゃ難しいのはわかる。そもそも絢音がそれを穿いてるのを見た覚えがない」
 涼夏が冷静にそう指摘すると、絢音が苦笑いを浮かべた。
「黄色で安かったから買ってみたけど、どうしていいかわかんない。今日何か活路を見出して」
 とりあえず奈都に穿かせて、上を取っ替え引っ替えした結果、上はシンプルな白か、さらにその上にロング丈のアイテムを羽織れば見れなくもないという結論に至った。いずれにせよ、色の主張が強すぎて、穿きこなすのが難しい。
「私は逆にあんまりズボン穿かないから、ナツジーンズを試そう」
 絢音がそう言いながら、奈都のジーンズに私のニットを合わせた。何も悪くなかった。下を涼夏のサロペットに変えてみたが、これもまるで持ち主のような安定感だった。
「絢音は幼いのも大人びたのもいけるし、髪型も変えれるからオールマイティーだな」
 涼夏が白のトートバッグを渡すと、子供っぽいサロペットがお姉さんアイテムのような様相になった。絢音は「でも胸がない」とため息をついたが、そこはあまり関係ないと思う。
「つまり、私も髪を縛ればいい?」
 髪を低い位置で束ねて、厚手のトップスにボアのベスト、自分の持ってきたロングスカートを穿くと、高校生らしい雰囲気になった。ちなみに、髪を下ろすと大学生っぽくなった。
「ポニチサ可愛い」
「可愛いな」
 奈都と涼夏が頷き合っているが、出来たら服を見て欲しい。
 何にしろ、これは楽しい遊びだ。写真も撮りまくっているし、また夜にでもインスタに載せよう。知らない他人の目はどうでもいいが、自分の記録として残しておくのも大事である。
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