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番外編 世界旅行2(4)
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3ゲーム目を始める前に、隣に座っていた子から、何をしているのかと話しかけられた。
「私の思った海外の知見と、ちょっと違った」
「場所を当てるゲームだよ」
ゲームの部分は声を潜めて、絢音が答える。公式ルールではないが、制限時間は10分とか検索1回などの独自の縛りでプレイしている。これがあると、10分の間に地名らしきものを見つけ出して検索するだけになってしまうが、無いと大雑把な感覚勝負になってしまう。
例えば1回目も、適当にフィンランドくらいをポイントして、低い得点になっていただろう。台湾くらいなら私たちでも特定できるが、ポーランドを特定するのは難しいし、位置ともなるとなおさらだ。
面白そうだから少し見ていたいと言われて、観客一人で3回目をスタートする。
先程とは打って変わって、雄大な自然だった。目の前に横たわる山脈には木々はなく、半分くらいは地面が見える状態になっている。周囲は牧草地帯で、かなりの間隔を空けて背の低い家が建っている。
牧草地帯を切り裂くように真っ直ぐ延びる道は舗装されているが、車がギリギリすれ違えるくらいの幅で、両側には先程ポーランドで見たような白い破線が引かれていた。
「かなり高い場所だね。森林限界を超えてそうな」
「カナダとかスイスとか、そんな印象だけど、フランスとかノルウェーって言われても、そうだねって思う」
つまりは、まったくわからないということだ。大真面目に言った絢音の言葉に、観客がくすっと笑った。感想を聞くと、「全然わからないけど、面白いのはわかった」と笑顔で言った。ちなみに、咄嗟に名前が思い出せなかったが、絢音が小西さんと呼んで思い出した。
先へ先へ進めてみたが、景色はまったく変わらず、文字はおろか、標識の一つもなかった。
「あ、国旗」
不意に絢音がそう言って、私はマウスをクリックする手を止めた。農家に国旗が立っていたが、風になびいてよく見えない。上から赤、白、青、白、赤だが、タイではない。赤が太くて、白が細い。
「どこだこれ。小西さん、わかる?」
振り返ってそう聞くと、小西さんはふるふると首を横に振った。
国旗は最大の情報だが、知らなければどうにもならない。見覚えがないし、国旗ではない可能性まである。
「州旗とか。アイダホ州とか」
「そんなのあるの?」
「知らない」
絢音が首を振る。自分で言い出しておいて、テキトーな女だ。
行けども行けども文字の一つも出て来ない。民家は増えてきたが、綺麗な牧草地帯と、それを囲む山脈という景色は一切変わらなかった。遥か向こうに鬼の頭のような変な形の山があるが、進んでも進んでも近付かない。
一度スタート地点に戻って山の方に行くと、道は続いているが、ストリートビューはそこで終わってしまった。この先車やバイクは通行できないという看板があり、その下に文字らしきものがあるが、そこまで近付けず、拡大しても見えなかった。手がかりなしの行き止まりというやつだ。
実質行けるのは一方向で、しかも一本道なので、時間の許す限り先へ進む。旗の家を過ぎ、どんどん進むと、ようやく対向車が来て、右側通行だとわかった。制限速度の看板もあったが、30という数字しか情報がなかった。もちろん、プロなら看板のデザインで国がわかるのだろうが、私たちには無理だ。
ロスタイムに入ると、再び同じ旗のある家があり、この村の中心と思われる場所に、ようやく文字の書かれた建物を3つ発見した。
1つは「VAEROY KOMMUNE」だが、AとEはくっついており、Oにはスラッシュが入っている。KOMMUNEはコミュニティー的な意味だろう。
もう1つは「VAEROY IDRETTSLAG」で、VAEROYは先程と同じ。VAEROYは地名のようだが、アルファベットでこう打って出て来るかは怪しい。
最後の1つは「KIOIOSKEN」で、キオスク的なものだろう。
「マルイかと思った」
冗談でそう言うと、二人がくすくすと笑った。
実質情報はVAEROYしかないが、厳密に言えばスペルが違う。しかも、地球をどの辺りに回して検索すればいいかわからなかったので、とりあえずヨーロッパくらいに持ってきた上で、検索窓に「VAEROY」と打ち込んだら、ノルウェーの島がヒットした。切り立った崖の写真が表示され、標高も高そうだ。
「行き止まりとか一本道とか、条件は合致するね。さっきノルウェーって言ったし」
ということで、ノルウェーの読めない島の、行き止まりに近い場所をプロットしたら、355メートルで4999点獲得した。
小西さんが、「おー」と手を叩いた。
「基本的には、地名を探して検索するんだね?」
「今の縛りだとそうだね。検索ゼロでやってもいいとは思う」
もしそれだと、たぶんスイスくらいをプロットして、「ノルウェーか」と二人で顔を見合わせて終わっていただろう。
ちなみにノルウェーの国旗を調べたら、確かに赤、白、青、白、赤だった。はためいていて十字の部分が見えなかったのだ。
「これは当てたかった」
絢音が残念そうに言ったが、生憎私ははためいていなくてもノルウェーだとわからなかった。
「私の思った海外の知見と、ちょっと違った」
「場所を当てるゲームだよ」
ゲームの部分は声を潜めて、絢音が答える。公式ルールではないが、制限時間は10分とか検索1回などの独自の縛りでプレイしている。これがあると、10分の間に地名らしきものを見つけ出して検索するだけになってしまうが、無いと大雑把な感覚勝負になってしまう。
例えば1回目も、適当にフィンランドくらいをポイントして、低い得点になっていただろう。台湾くらいなら私たちでも特定できるが、ポーランドを特定するのは難しいし、位置ともなるとなおさらだ。
面白そうだから少し見ていたいと言われて、観客一人で3回目をスタートする。
先程とは打って変わって、雄大な自然だった。目の前に横たわる山脈には木々はなく、半分くらいは地面が見える状態になっている。周囲は牧草地帯で、かなりの間隔を空けて背の低い家が建っている。
牧草地帯を切り裂くように真っ直ぐ延びる道は舗装されているが、車がギリギリすれ違えるくらいの幅で、両側には先程ポーランドで見たような白い破線が引かれていた。
「かなり高い場所だね。森林限界を超えてそうな」
「カナダとかスイスとか、そんな印象だけど、フランスとかノルウェーって言われても、そうだねって思う」
つまりは、まったくわからないということだ。大真面目に言った絢音の言葉に、観客がくすっと笑った。感想を聞くと、「全然わからないけど、面白いのはわかった」と笑顔で言った。ちなみに、咄嗟に名前が思い出せなかったが、絢音が小西さんと呼んで思い出した。
先へ先へ進めてみたが、景色はまったく変わらず、文字はおろか、標識の一つもなかった。
「あ、国旗」
不意に絢音がそう言って、私はマウスをクリックする手を止めた。農家に国旗が立っていたが、風になびいてよく見えない。上から赤、白、青、白、赤だが、タイではない。赤が太くて、白が細い。
「どこだこれ。小西さん、わかる?」
振り返ってそう聞くと、小西さんはふるふると首を横に振った。
国旗は最大の情報だが、知らなければどうにもならない。見覚えがないし、国旗ではない可能性まである。
「州旗とか。アイダホ州とか」
「そんなのあるの?」
「知らない」
絢音が首を振る。自分で言い出しておいて、テキトーな女だ。
行けども行けども文字の一つも出て来ない。民家は増えてきたが、綺麗な牧草地帯と、それを囲む山脈という景色は一切変わらなかった。遥か向こうに鬼の頭のような変な形の山があるが、進んでも進んでも近付かない。
一度スタート地点に戻って山の方に行くと、道は続いているが、ストリートビューはそこで終わってしまった。この先車やバイクは通行できないという看板があり、その下に文字らしきものがあるが、そこまで近付けず、拡大しても見えなかった。手がかりなしの行き止まりというやつだ。
実質行けるのは一方向で、しかも一本道なので、時間の許す限り先へ進む。旗の家を過ぎ、どんどん進むと、ようやく対向車が来て、右側通行だとわかった。制限速度の看板もあったが、30という数字しか情報がなかった。もちろん、プロなら看板のデザインで国がわかるのだろうが、私たちには無理だ。
ロスタイムに入ると、再び同じ旗のある家があり、この村の中心と思われる場所に、ようやく文字の書かれた建物を3つ発見した。
1つは「VAEROY KOMMUNE」だが、AとEはくっついており、Oにはスラッシュが入っている。KOMMUNEはコミュニティー的な意味だろう。
もう1つは「VAEROY IDRETTSLAG」で、VAEROYは先程と同じ。VAEROYは地名のようだが、アルファベットでこう打って出て来るかは怪しい。
最後の1つは「KIOIOSKEN」で、キオスク的なものだろう。
「マルイかと思った」
冗談でそう言うと、二人がくすくすと笑った。
実質情報はVAEROYしかないが、厳密に言えばスペルが違う。しかも、地球をどの辺りに回して検索すればいいかわからなかったので、とりあえずヨーロッパくらいに持ってきた上で、検索窓に「VAEROY」と打ち込んだら、ノルウェーの島がヒットした。切り立った崖の写真が表示され、標高も高そうだ。
「行き止まりとか一本道とか、条件は合致するね。さっきノルウェーって言ったし」
ということで、ノルウェーの読めない島の、行き止まりに近い場所をプロットしたら、355メートルで4999点獲得した。
小西さんが、「おー」と手を叩いた。
「基本的には、地名を探して検索するんだね?」
「今の縛りだとそうだね。検索ゼロでやってもいいとは思う」
もしそれだと、たぶんスイスくらいをプロットして、「ノルウェーか」と二人で顔を見合わせて終わっていただろう。
ちなみにノルウェーの国旗を調べたら、確かに赤、白、青、白、赤だった。はためいていて十字の部分が見えなかったのだ。
「これは当てたかった」
絢音が残念そうに言ったが、生憎私ははためいていなくてもノルウェーだとわからなかった。
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