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第53話 ビーチ(1)
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引き続き夏である。何の続きかと言われると感覚的な話だが、私たちの夏は序盤に行った沖縄旅行で終わってしまった感がある。
もちろん、それ以降も十分に夏休みを満喫しているが、大きなイベントはない。去年のようにLSパークに行くお金もないし、泊まりで遊ぶ時間もない。残念ながら、この先全員が空いている日は一日もない。
それでも、夏は続いている。結局去年買った水着も1回しか着ていないし、このままでいいのだろうか。
夏と水着から連想されるものと言えば海だ。我がプリフェクチャーは綺麗な海こそないが、比較的近くに海水浴場があり、中央駅から電車で1本、1時間もかからずに行ける。そんな距離だから、交通費も大して高くない。そして、行ってしまえば更衣室もシャワーも無料だ。
すなわち、海水浴という遊びは、実は遊びの中でも特にお金をかけずに特別な体験が出来るものなのではないか。ベッドの上に水着を広げながら、私は去年の秋のことを思い出した。
去年、私は退屈のあまりチェアリングに挑戦した。自然の中で椅子に座ってのんびりするという高尚な遊びだが、場所が悪かったのか、数時間で飽きて、結局涼夏と二人で遊んでいた。
あの時も、海へ行ったらどうだろうと思ったが、今やそれを実践する時が来たと言っていい。
『各位 チェアリング・オン・ザ・ビーチを開催します』
日にちは私が空いていて、しかもまだ予定の決まっていない日を2日ほど挙げたが、どちらも涼夏はバイトだし、絢音も片方は予定が入っている。
奈都の予定はバイト以外は把握していないがどうだろうか。少なくとも、絢音が空いている日は奈都はバイトだ。
つまり、各位と言いながら絢音を狙い撃ちしたわけだが、案の定奈都は乗って来ず、絢音は謎の参加スタンプを投げてきた。涼夏からは、「参加できないから、30分に1回、二人の水着の写真を送って」というメッセージが来た。
とりあえずベッドに広げた水着の写真を撮って送ると、「そういう意味ではない」と冷静に返された。頭の中で声まで忠実に再現される。
それはそれとして、チェアリングだが、もちろんまだ高校生の私たちは電車で行くことになる。今更ながら、あの椅子を海まで担いで行くのだろうか。
個別メッセージで絢音に意見を求めると、絢音は「私はレジャーシートにクッションくらいでいいけど、千紗都は椅子を持ってきて」と返ってきた。
『大きくはないけど、小さくもない』
『去年涼夏が見た千紗都を、私も見たいけど』
『結構大変』
『チェアリング・オン・ザ・ビーチとは』
絢音が考える絵文字と一緒にそう送ってきて、私は思わず頭を抱えた。確かに、そもそも椅子に座ってのんびりするのが目的だったはずが、絢音と遊べるなら何でもいい、むしろ椅子は邪魔なのではないかという考えになっていた。
『頑張って持っていくから、レジャーシートとか遊び道具は任せたい』
『わかった。浮き輪はいる?』
『邪魔じゃなければあるに越したことはない』
『膨らまさずに持っていけば大したことないね』
文章から、大真面目に冗談を言う絢音の様子が伝わってくる。小さな子供じゃあるまいし、膨らませた浮き輪を持って電車に乗っていたら、だいぶはしゃぎ過ぎだろう。
とにかくこうして、チェアリング・オン・ザ・ビーチの開催が決まった。もちろん、4人で遊べたらそれに越したことはないが、みんな忙しいし仕方ない。一人ずつじっくりと親睦を深めるのも大事だと自分に言い聞かせて、当日を楽しみに待つことにした。
もちろん、それ以降も十分に夏休みを満喫しているが、大きなイベントはない。去年のようにLSパークに行くお金もないし、泊まりで遊ぶ時間もない。残念ながら、この先全員が空いている日は一日もない。
それでも、夏は続いている。結局去年買った水着も1回しか着ていないし、このままでいいのだろうか。
夏と水着から連想されるものと言えば海だ。我がプリフェクチャーは綺麗な海こそないが、比較的近くに海水浴場があり、中央駅から電車で1本、1時間もかからずに行ける。そんな距離だから、交通費も大して高くない。そして、行ってしまえば更衣室もシャワーも無料だ。
すなわち、海水浴という遊びは、実は遊びの中でも特にお金をかけずに特別な体験が出来るものなのではないか。ベッドの上に水着を広げながら、私は去年の秋のことを思い出した。
去年、私は退屈のあまりチェアリングに挑戦した。自然の中で椅子に座ってのんびりするという高尚な遊びだが、場所が悪かったのか、数時間で飽きて、結局涼夏と二人で遊んでいた。
あの時も、海へ行ったらどうだろうと思ったが、今やそれを実践する時が来たと言っていい。
『各位 チェアリング・オン・ザ・ビーチを開催します』
日にちは私が空いていて、しかもまだ予定の決まっていない日を2日ほど挙げたが、どちらも涼夏はバイトだし、絢音も片方は予定が入っている。
奈都の予定はバイト以外は把握していないがどうだろうか。少なくとも、絢音が空いている日は奈都はバイトだ。
つまり、各位と言いながら絢音を狙い撃ちしたわけだが、案の定奈都は乗って来ず、絢音は謎の参加スタンプを投げてきた。涼夏からは、「参加できないから、30分に1回、二人の水着の写真を送って」というメッセージが来た。
とりあえずベッドに広げた水着の写真を撮って送ると、「そういう意味ではない」と冷静に返された。頭の中で声まで忠実に再現される。
それはそれとして、チェアリングだが、もちろんまだ高校生の私たちは電車で行くことになる。今更ながら、あの椅子を海まで担いで行くのだろうか。
個別メッセージで絢音に意見を求めると、絢音は「私はレジャーシートにクッションくらいでいいけど、千紗都は椅子を持ってきて」と返ってきた。
『大きくはないけど、小さくもない』
『去年涼夏が見た千紗都を、私も見たいけど』
『結構大変』
『チェアリング・オン・ザ・ビーチとは』
絢音が考える絵文字と一緒にそう送ってきて、私は思わず頭を抱えた。確かに、そもそも椅子に座ってのんびりするのが目的だったはずが、絢音と遊べるなら何でもいい、むしろ椅子は邪魔なのではないかという考えになっていた。
『頑張って持っていくから、レジャーシートとか遊び道具は任せたい』
『わかった。浮き輪はいる?』
『邪魔じゃなければあるに越したことはない』
『膨らまさずに持っていけば大したことないね』
文章から、大真面目に冗談を言う絢音の様子が伝わってくる。小さな子供じゃあるまいし、膨らませた浮き輪を持って電車に乗っていたら、だいぶはしゃぎ過ぎだろう。
とにかくこうして、チェアリング・オン・ザ・ビーチの開催が決まった。もちろん、4人で遊べたらそれに越したことはないが、みんな忙しいし仕方ない。一人ずつじっくりと親睦を深めるのも大事だと自分に言い聞かせて、当日を楽しみに待つことにした。
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