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第49話 沖縄 5
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明治橋を渡るとすぐに左に折れて、港の方に自転車を走らせた。海で一度クールダウンした体は再び熱を帯び、汗がダラダラと首筋を伝う。
しばらく走るとホテルが見えてきた。事前にホームページで見て外観は知っていたが、実物は想像よりもだいぶ大きかった。
「これはリゾートホテル級なのでは?」
私がそう言うと、涼夏が満足そうに頷いた。
「ナッちゃん的にはどう? グアムのホテルと比べて」
「覚えてないよ。それに、小さかったから、何でも大きく見えた」
「哲学的な話だな」
涼夏が感心したようにそう言ったが、そうだろうか。
ホテルの裏に自転車を駐めて中に入った。広々としたロビーに、土産物屋とカフェとレストランがある。外にはプールと庭園があるはずだが、ロビーからは見えなかった。
チェックインをして、部屋の鍵を二つもらう。部屋は階は同じだが隣同士ではなかった。念のために部屋割を確認すると、やはり初日は私と涼夏で、二日目は絢音と替わるという。
「本当にそれでいいの? 奈都、後悔しない?」
エレベーターの中でギュッと手を握って問いかけると、奈都は困ったように微笑んだ。
「別にいいけど。なんていうか、そこはあんまり今回の旅行で重要じゃない」
「どこが重要なの?」
「アクティビティ?」
奈都がそう言うのなら構わない。私は単に、私経由で知り合ったメンバーが、私抜きで泊まることに抵抗がないか心配しただけだ。きっかけは私だったが、もう一年以上の付き合いだし、そういう心配はしなくていいのかもしれない。実際、絢音と奈都は時々私抜きで遊んでいる。
シャワーも浴びたいし少し休みたいので、三十分後くらいにまた適当に連絡しようと約束してそれぞれの部屋に入った。一番スタンダードな部屋なので、ベッドの上以外にくつろぐスペースはないが、全然構わない。
リュックをテーブルの上に放り投げて、ベッドにダイブした。エアコンがよく効いていて気持ちいい。少し寒いくらいだが、温度の調整はできないようだ。夜は寒いかもしれない。
ぐったりとうつ伏せで突っ伏していると、頭上で涼夏の声がした。
「シャワー浴びないの?」
「お先にどうぞ」
初めての飛行機に初めての沖縄、炎天下に加えて久しぶりの自転車、そして海ではしゃいで、思ったよりも疲れている。死んだように倒れていたら、上から涼夏が覆いかぶさってきた。背中に胸やお腹の柔らかな感触がする。
抱きしめるように私の体に手を這わせながら、涼夏が耳元で囁いた。
「調子悪い? 大丈夫?」
「ちょっと眠いだけ。元気。でも、今夜は早く寝る」
「寝かさないよ?」
「今夜は早く寝る」
二回繰り返すと、涼夏は「つれないなぁ」とため息をついて、跨るようにお尻の上に座った。そして、何を思ったのか、いきなり私の服を脱がせ始めた。
「ダメだ。犯される」
「人聞きが悪い。疲れてると思って、手伝ってあげてるのに」
そう言いながら、嬉々として服を剥ぎ取ると、私の背中に顔を押し付けた。そのまま肌に舌を這わせて、かすれる声で言った。
「しょっぱい。汗の味がする」
「マジレスすると、海水だと思うよ?」
「そう言えばそうだった。千紗都の味ってことにしておこう。魚介類の香りがする」
「臭そう。せめて潮の香りって言って」
強く抗議すると、涼夏はくすっと笑って、私の体をごろんと転がした。上は何も着けていないので恥ずかしかったが、胸を隠すより先に涼夏に抱きしめられて、肩を引き寄せられた。
キスをしながら抱き合ってごろごろしていると、涼夏が少しだけ体を起こして私の胸に手を這わせた。
「興奮してきた」
「いや、順番にシャワーを浴びた方がいいと思う」
「もう少し……」
熱にうなされるようにそう言って、涼夏がとろんとした顔のまま、私の胸を口に含んだ。相変わらず頭がおかしい。
しばらく髪を撫でながら好きなようにさせていたが、絢音と奈都を待たせてはいけないので、涼夏を押し退けて起き上がった。
涼夏はぺたんとベットの上に座ったまま、ぼんやりした顔で私を見上げている。相手をすると長くなりそうなので、ベッドから下りて下着を脱いだ。
先にシャワーを浴びる。汗と海水でベタベタしていた体が洗い流される。日焼け止めは塗っていたが、肩が少し焼けていた。沖縄に来て白いままで帰るのは諦めた方がよさそうだ。ずっと自転車を漕いでいたせいで、脚もだいぶ焼けている。
体を洗っていたら、ドアの向こうから「一緒にいい?」と涼夏の声がした。
「狭いよ?」
シャワーを止めてそう言ったが、もちろんそれで「じゃあ、やめておく」などと言うはずがない。
狭い浴槽で二人でシャワーを浴びたが、涼夏は私に抱き付いているだけだったので、仕方なく体を洗ってあげた。
体を拭いて部屋に戻ると、涼夏が全裸のままベッドに突っ伏して長い息を吐いた。
「千紗都がいっぱい触ってくれた」
「体洗ってあげただけだから」
「隅々まで触られた。もうお嫁にしか行けない」
「全然意味がわからない」
服を着ながらベッドを見下ろすと、腰からお尻のラインが綺麗だった。一年の時は幼さの残る体型をしていたが、随分大人びたように見える。ただでさえとんでもなく可愛いのに、体型まで完璧になられたらもう、太刀打ちできない。
「腰が細くなった気がする」
両手で腰とお尻を撫で回すと、涼夏が変な悲鳴を上げた。
「くすぐったい」
「早く服を着ないと、いっぱい触るよ?」
「じゃあ、着ない。千紗都とイチャイチャする」
「そんなの帰ってからいくらでもできるから、沖縄を楽しもう」
お尻をピシャリと叩くと、涼夏が諦めたように体を起こした。要するに、奈都が言っていたのはそういうことだろう。ごろごろするのは、帰ってからいくらでもできる。沖縄まで来て、優先すべきはそれではない。
窓から外を見下ろすと、遥か眼下にホテルのプールが見えた。思ったより小さいが、プールサイドにビーチチェアが置いてあって、何人か利用していた。もう十八時だが、まだ外は明るいし、気温は言うまでもない。
二人でメイクしていると絢音からメッセージが飛んできたので、部屋に呼んだ。四人揃って夕食の会議をした結果、とりあえず国際通りまで行って、気になった店に入ることにした。
「ゴーヤチャンプルー食べないとね」
「後はなんだろう。もずくとか、海ぶどうとか?」
「サーターアンダギー」
「それはお菓子だから」
名物の話で盛り上がる。そろそろお腹も空いてきた。夕ご飯も楽しみだ。
しばらく走るとホテルが見えてきた。事前にホームページで見て外観は知っていたが、実物は想像よりもだいぶ大きかった。
「これはリゾートホテル級なのでは?」
私がそう言うと、涼夏が満足そうに頷いた。
「ナッちゃん的にはどう? グアムのホテルと比べて」
「覚えてないよ。それに、小さかったから、何でも大きく見えた」
「哲学的な話だな」
涼夏が感心したようにそう言ったが、そうだろうか。
ホテルの裏に自転車を駐めて中に入った。広々としたロビーに、土産物屋とカフェとレストランがある。外にはプールと庭園があるはずだが、ロビーからは見えなかった。
チェックインをして、部屋の鍵を二つもらう。部屋は階は同じだが隣同士ではなかった。念のために部屋割を確認すると、やはり初日は私と涼夏で、二日目は絢音と替わるという。
「本当にそれでいいの? 奈都、後悔しない?」
エレベーターの中でギュッと手を握って問いかけると、奈都は困ったように微笑んだ。
「別にいいけど。なんていうか、そこはあんまり今回の旅行で重要じゃない」
「どこが重要なの?」
「アクティビティ?」
奈都がそう言うのなら構わない。私は単に、私経由で知り合ったメンバーが、私抜きで泊まることに抵抗がないか心配しただけだ。きっかけは私だったが、もう一年以上の付き合いだし、そういう心配はしなくていいのかもしれない。実際、絢音と奈都は時々私抜きで遊んでいる。
シャワーも浴びたいし少し休みたいので、三十分後くらいにまた適当に連絡しようと約束してそれぞれの部屋に入った。一番スタンダードな部屋なので、ベッドの上以外にくつろぐスペースはないが、全然構わない。
リュックをテーブルの上に放り投げて、ベッドにダイブした。エアコンがよく効いていて気持ちいい。少し寒いくらいだが、温度の調整はできないようだ。夜は寒いかもしれない。
ぐったりとうつ伏せで突っ伏していると、頭上で涼夏の声がした。
「シャワー浴びないの?」
「お先にどうぞ」
初めての飛行機に初めての沖縄、炎天下に加えて久しぶりの自転車、そして海ではしゃいで、思ったよりも疲れている。死んだように倒れていたら、上から涼夏が覆いかぶさってきた。背中に胸やお腹の柔らかな感触がする。
抱きしめるように私の体に手を這わせながら、涼夏が耳元で囁いた。
「調子悪い? 大丈夫?」
「ちょっと眠いだけ。元気。でも、今夜は早く寝る」
「寝かさないよ?」
「今夜は早く寝る」
二回繰り返すと、涼夏は「つれないなぁ」とため息をついて、跨るようにお尻の上に座った。そして、何を思ったのか、いきなり私の服を脱がせ始めた。
「ダメだ。犯される」
「人聞きが悪い。疲れてると思って、手伝ってあげてるのに」
そう言いながら、嬉々として服を剥ぎ取ると、私の背中に顔を押し付けた。そのまま肌に舌を這わせて、かすれる声で言った。
「しょっぱい。汗の味がする」
「マジレスすると、海水だと思うよ?」
「そう言えばそうだった。千紗都の味ってことにしておこう。魚介類の香りがする」
「臭そう。せめて潮の香りって言って」
強く抗議すると、涼夏はくすっと笑って、私の体をごろんと転がした。上は何も着けていないので恥ずかしかったが、胸を隠すより先に涼夏に抱きしめられて、肩を引き寄せられた。
キスをしながら抱き合ってごろごろしていると、涼夏が少しだけ体を起こして私の胸に手を這わせた。
「興奮してきた」
「いや、順番にシャワーを浴びた方がいいと思う」
「もう少し……」
熱にうなされるようにそう言って、涼夏がとろんとした顔のまま、私の胸を口に含んだ。相変わらず頭がおかしい。
しばらく髪を撫でながら好きなようにさせていたが、絢音と奈都を待たせてはいけないので、涼夏を押し退けて起き上がった。
涼夏はぺたんとベットの上に座ったまま、ぼんやりした顔で私を見上げている。相手をすると長くなりそうなので、ベッドから下りて下着を脱いだ。
先にシャワーを浴びる。汗と海水でベタベタしていた体が洗い流される。日焼け止めは塗っていたが、肩が少し焼けていた。沖縄に来て白いままで帰るのは諦めた方がよさそうだ。ずっと自転車を漕いでいたせいで、脚もだいぶ焼けている。
体を洗っていたら、ドアの向こうから「一緒にいい?」と涼夏の声がした。
「狭いよ?」
シャワーを止めてそう言ったが、もちろんそれで「じゃあ、やめておく」などと言うはずがない。
狭い浴槽で二人でシャワーを浴びたが、涼夏は私に抱き付いているだけだったので、仕方なく体を洗ってあげた。
体を拭いて部屋に戻ると、涼夏が全裸のままベッドに突っ伏して長い息を吐いた。
「千紗都がいっぱい触ってくれた」
「体洗ってあげただけだから」
「隅々まで触られた。もうお嫁にしか行けない」
「全然意味がわからない」
服を着ながらベッドを見下ろすと、腰からお尻のラインが綺麗だった。一年の時は幼さの残る体型をしていたが、随分大人びたように見える。ただでさえとんでもなく可愛いのに、体型まで完璧になられたらもう、太刀打ちできない。
「腰が細くなった気がする」
両手で腰とお尻を撫で回すと、涼夏が変な悲鳴を上げた。
「くすぐったい」
「早く服を着ないと、いっぱい触るよ?」
「じゃあ、着ない。千紗都とイチャイチャする」
「そんなの帰ってからいくらでもできるから、沖縄を楽しもう」
お尻をピシャリと叩くと、涼夏が諦めたように体を起こした。要するに、奈都が言っていたのはそういうことだろう。ごろごろするのは、帰ってからいくらでもできる。沖縄まで来て、優先すべきはそれではない。
窓から外を見下ろすと、遥か眼下にホテルのプールが見えた。思ったより小さいが、プールサイドにビーチチェアが置いてあって、何人か利用していた。もう十八時だが、まだ外は明るいし、気温は言うまでもない。
二人でメイクしていると絢音からメッセージが飛んできたので、部屋に呼んだ。四人揃って夕食の会議をした結果、とりあえず国際通りまで行って、気になった店に入ることにした。
「ゴーヤチャンプルー食べないとね」
「後はなんだろう。もずくとか、海ぶどうとか?」
「サーターアンダギー」
「それはお菓子だから」
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