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第46話 流行(3)
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帰り道、学校を一歩出た瞬間、降り注ぐ強い日差しに涼夏が力尽きたように項垂れた。
「暑いの無理……」
「また涼夏の『暑いの無理』が聞ける季節になったね」
眩しかったので額に手を翳した。年々暑くなっているし、そろそろ日傘の導入を検討してもいいかもしれない。高校生が日傘なんて使うなという声もあるらしいが、便利なものは誰でも使うべきだと思う。
古沼まで歩く元気がなかったので、今日は最寄りの上ノ水から帰ることにした。
背中が熱い。リュックは両手が空いて便利だが、風通しが悪い。
なるべく日陰になるように、壁に沿って1列に歩く。暑さは和らぐが、口数は少なめになる陣形だ。
絢音の髪の毛を眺めながら歩いていたら、不意に先頭を歩いていた涼夏が足を止めて振り返った。
「千紗都、パンツ交換しよっか」
「はぁ?」
思わず素っ頓狂な声を上げると、絢音が可笑しそうにあははと笑った。
まったく意味がわからなかったので、念のため拒否する前に理由を聞くと、涼夏が力強く頷いた。
「股間が蒸れて気持ち悪い」
「いや、それは私も同じだし、状況は変わらないから」
「千紗都のなら我慢できる」
「私の何なら我慢できるか知らないけど、ノーパンで歩いてどうぞ」
私が静かに首を振ると、絢音が「脱ぐなら預かるよ」と微笑んだ。預かってどうするのだろう。
ちなみにノーパンで歩いたことはないが、涼しいのだろうか。風が吹くたびに肝の冷える思いはしそうである。
私がパンツのない世界を思い描いていると、涼夏が疲れた顔で絢音を見た。
「絢音はあんまり汗かいてなさそうだから、パンツ交換しようか」
「いいよ」
絢音が即答して、涼夏が困ったように眉尻を下げた。
「いざいいって言われると、私はダメって言われることを望んでたのかもって気持ちになった」
「大事な気付きだね。ちなみに、私が汗をかいてないって思うのは気のせいだから」
そう言いながら、パタパタと手で扇ぐ仕草をする。
実際のところ、絢音はいつも涼しい顔をしている。細いから代謝も私より悪そうだし、涼夏の持つイメージもわからなくもない。
「絢音のパンツは乾いてる」
静かにそう告げると、絢音は厳かに首を振った。
「蒸れ蒸れ」
「確認していい?」
あまり考えずにそう言って、下半身を見つめる。お尻の曲線が美しかったので、スカートの上から指でつつくと、絢音が声を裏返らせた。
「い、いいけど」
今度は即答ではなかった。涼夏が「ワクワク」と口で言いながら身を乗り出したが、周囲にはユナ高の生徒がたくさんいて、ここでスカートの中に手を突っ込むのはやめておいた方が良さそうだ。
「また今度にするよ」
断念の旨を伝えると、絢音は「残念だよ」とガッカリしたように息を吐いた。どこか安堵しているようにも見える。
「千紗都って、時々ビックリすること言うよね」
再び歩きながら、涼夏が明るく笑った。絢音が同調するが、そもそもいきなりパンツを交換しようと言い出したのは涼夏のはずだ。
「パンツ交換したい子と、パンツ交換してもいい子と、パンツの状態を確認したい子で、誰が一番ヤバイと思う?」
当然涼夏だろうと思ってそう言ったら、意外と状態を確認したいのも変態的な響きだった。
「まあ、千紗都でしょ」
「千紗都だね」
二人が絶対にそうだと言うので、私は「もう好きにして」とため息をついた。
「暑いの無理……」
「また涼夏の『暑いの無理』が聞ける季節になったね」
眩しかったので額に手を翳した。年々暑くなっているし、そろそろ日傘の導入を検討してもいいかもしれない。高校生が日傘なんて使うなという声もあるらしいが、便利なものは誰でも使うべきだと思う。
古沼まで歩く元気がなかったので、今日は最寄りの上ノ水から帰ることにした。
背中が熱い。リュックは両手が空いて便利だが、風通しが悪い。
なるべく日陰になるように、壁に沿って1列に歩く。暑さは和らぐが、口数は少なめになる陣形だ。
絢音の髪の毛を眺めながら歩いていたら、不意に先頭を歩いていた涼夏が足を止めて振り返った。
「千紗都、パンツ交換しよっか」
「はぁ?」
思わず素っ頓狂な声を上げると、絢音が可笑しそうにあははと笑った。
まったく意味がわからなかったので、念のため拒否する前に理由を聞くと、涼夏が力強く頷いた。
「股間が蒸れて気持ち悪い」
「いや、それは私も同じだし、状況は変わらないから」
「千紗都のなら我慢できる」
「私の何なら我慢できるか知らないけど、ノーパンで歩いてどうぞ」
私が静かに首を振ると、絢音が「脱ぐなら預かるよ」と微笑んだ。預かってどうするのだろう。
ちなみにノーパンで歩いたことはないが、涼しいのだろうか。風が吹くたびに肝の冷える思いはしそうである。
私がパンツのない世界を思い描いていると、涼夏が疲れた顔で絢音を見た。
「絢音はあんまり汗かいてなさそうだから、パンツ交換しようか」
「いいよ」
絢音が即答して、涼夏が困ったように眉尻を下げた。
「いざいいって言われると、私はダメって言われることを望んでたのかもって気持ちになった」
「大事な気付きだね。ちなみに、私が汗をかいてないって思うのは気のせいだから」
そう言いながら、パタパタと手で扇ぐ仕草をする。
実際のところ、絢音はいつも涼しい顔をしている。細いから代謝も私より悪そうだし、涼夏の持つイメージもわからなくもない。
「絢音のパンツは乾いてる」
静かにそう告げると、絢音は厳かに首を振った。
「蒸れ蒸れ」
「確認していい?」
あまり考えずにそう言って、下半身を見つめる。お尻の曲線が美しかったので、スカートの上から指でつつくと、絢音が声を裏返らせた。
「い、いいけど」
今度は即答ではなかった。涼夏が「ワクワク」と口で言いながら身を乗り出したが、周囲にはユナ高の生徒がたくさんいて、ここでスカートの中に手を突っ込むのはやめておいた方が良さそうだ。
「また今度にするよ」
断念の旨を伝えると、絢音は「残念だよ」とガッカリしたように息を吐いた。どこか安堵しているようにも見える。
「千紗都って、時々ビックリすること言うよね」
再び歩きながら、涼夏が明るく笑った。絢音が同調するが、そもそもいきなりパンツを交換しようと言い出したのは涼夏のはずだ。
「パンツ交換したい子と、パンツ交換してもいい子と、パンツの状態を確認したい子で、誰が一番ヤバイと思う?」
当然涼夏だろうと思ってそう言ったら、意外と状態を確認したいのも変態的な響きだった。
「まあ、千紗都でしょ」
「千紗都だね」
二人が絶対にそうだと言うので、私は「もう好きにして」とため息をついた。
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