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プロローグ

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まず最初に断っておきたい。

本来ならば、こうしたことを冒頭に述べるのは間違っているかもしれない。

しかし、それでも今から綴られる物語は、あくまで僕の個人的な体験にすぎないということは言っておきたい。

よってこの物語には、読者の皆様が期待するような劇的な展開や、はたまた心躍るようなエンタメ的要素は皆無である。

あくまで僕の体験を嘘偽りなく告白することに従事している。人によっては全く面白くなく感じるだろう。

いま、嘘偽りないといったが、賢い読者にはいかにそれが奇妙なことかを知っているはずだ。

物語を語る時、我々は主観的な目線でしかそれを語ることができない。周りから見れば、またその物語に関わった人間から見れば、それは真実ではないと抗議することも、僕にも容易に想像できる。

だがしかし、真実とははたして一つしかないのだろうか。

視点が変われば見方が変わるように、真実がいつも必ず同じ形をしているわけではない。
さながら万華鏡のように、見える景色も色も変わるのが真実ではないのだろうか。
僕はそう思う。

つまり何が言いたいかというと、これから始まる物語も、また真実に違いないということだ。

前置きが長くなって申し訳ない。
それでは僕は何を語るというのか。

大それたことを言わずに、簡潔化していうのであるならば、ラブストーリーである。

きっとどこにでもあるような話だ。
それでも、僕がこの話を書こうと思ったのは、僕の心の奥底に今でも深く根差している出来事を僕なりに整理してみたかったからだ。

あの体験は一体何の意味を持つのか、僕は何を間違えたのか、それとも僕は正しかったのか、彼女は僕に何を伝えたかっのか。
過去の恋愛に縛られる人間は、愚かだと人は言うのだろう。
それでも僕は筆を取る。



そうしなければ、僕は過去に踏ん切りをつけて、前に進むことができないから。
この告白は僕という人間を再形成するための物語だ。

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