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レベル17 聖職者カナミ 処女 聖職者の祭服 ウエストバッグ パールのバレッタ 癒しの杖 赤い香水瓶 ステ:臆病 暗所恐怖症 金300JEM
自由都市メデオラ編①「破滅と絶望の始まり」
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「ええと、ここをまっすぐ進めばいいんだよね……」
夜の帳が下り、すっかり寝静まったメデオラ内部。
街灯も届かない、寂しい裏路地を抜けた先の民家がクエストの依頼主の住んでいるところらしい。
「こんな場所に住んでるなんて、暗いところが苦手なあたしへのあてつけ?」
『カナミ、足元には気を付けろよ。ゴミや酒瓶とかが散乱してるかもしれない』
「う、うん。分かった」
『それにメデオラは最近治安があまりよくないらしいからな』
「ちょ、ちょっと怖いこと言わないでよ」
ガサッ!
「きゃあっ!? ほ、ほらっ、そんなこと言うから――」
にゃぁぁんっっ!!
ゴミ箱を盛大に蹴り倒し角から飛び出してきたのは、不吉を象徴とする黒猫だ。
道の真ん中で立ち止まり、その鋭い眼光がカナミを射抜く。
「な、なに? 何か文句あるの?」
動物に問いかけたところで返事などもらえるはずがない。
やがてカナミに興味を失った気分屋の黒猫は、足早に暗闇の中へと溶け込んでいってしまった。
『大丈夫か』
「平気。どうやらこの民家のようね」
外から見る限り、それほど大きくない小ぢんまりとした木造平屋。
まずはノックをして家主の反応を探る。
「あのー、夜分すみません。あたし、クエストの依頼品を届けにきたものですが」
夜間と言うこともあり、普段からか細いカナミの声がさらにトーンダウン。
寝ている可能性もあるし、さすがに気付かないだろうと俺が口を出そうとしたそのとき、扉の軋む音が辺りに響いた。
「ひゃッッ!?」
奥から出てきたのは、髪がボサボサで太っていてゴリラのような風貌の大男。
おまけに、かなり臭う……長いこと風呂に入っていないようなツンとした独自な異臭がカナミの鼻を刺激した。
『カナミ、こいつ……見るからにヤバそうなヤツだ。もらえるもんを貰ったらとっととずらかれ』
「わ、分かった」
「くふ~、まさか請負人が女の子だったとはね」
「依頼の品はこれで良かったんですよね?」
「そうそう。これだよこれ。ずっと欲しかったアイテムなんだ」
「じゃあ、受け渡しの代わりに……」
「分かってるよ、報酬だろ? 悪いけどリビングのテーブルまで来てくれ。そこに金を用意してあるんだ」
「は、はぁ」
本当は一刻も早く立ち去りたかったけど、報酬のためだ。我慢するしかない。
それにしても、家主が汚ければ室内もまた汚い。部屋の明かりはところどころ切れてて暗いし、足元には飲みかけの酒瓶や腐った肉のようなものが転がっている。
「ところで、君はひとりでこんな仕事をしているのかい?」
「え? い、いや。厳密には違います。もうひとり、あそこのモニターで見守ってる仲間がいて……」
「モニター? 仲間? 何を言ってるんだ? ここにはそんなものないし、誰もいないぞ」
「ぁっ、と。これにはいろいろと深い訳がありまして」
「とにかく、見た限り君はひとりか。ふ~~~ん……」
「あ、あの。どうして玄関のカギを閉めてるんですか」
「いえね、本当はこの香水、馴染みの嬢に使うつもりだったんだけど……この際、君でもいいかなって。クヒヒw よく見ると童顔でおっぱいがでかくて、僕好みだからね!」
「な、なに気持ち悪いこと言ってるのこの人……って、やめて! それ以上近づかないで!」
『や、やべぇぞコイツ! 逃げろカナミ!!』
「そ、そんなこと言っても鍵がかかって……開かないよぉっ!!」
「お~っと、そんなに怯えなくてもいいよ子猫ちゃん。この匂いを嗅げば、すぐに気持ちが楽になるからね」
「そ、それ、さっきのこうす……ぃっ」
『カナミ! おい、どうしたんだ返事をしろ!!』
「んっ、んくぅ……! な、なにこれ……いきなり身体がアツく、なって……ぁっぁっ、ぁっ、んはっ……ん゛っ、力、入らな、ぃぃっ……」
「さすが即効性の媚薬。さぁ、一緒にベッドに行こうか。いっぱい可愛がってあげる」
「ぁふっ、ぃっ、ぃゃぁッ……。あたし、どうな、って……タクヤ、助け、てっ……ぁんッ、胸、苦しぃっ……お股がじんじんって、してぇ……はぁ゛ぁ゛んッッ♥」
『カナミ! カナミぃぃッ!!』
俺の必死の叫びも空しく、とろんとした目をしたカナミはゴリラ男に連れられ奥の寝室らしき部屋へと連れていかれてしまった――。
◇◆◇
一方、俺は姿が見えなくなってしまったカナミの身を案じていた。
あんな気持ち悪そうな男に力任せに乱暴をされたらそれこそ事だ。
しかもどういう原理か知らないが、カナミが姿を消してからカメラアングルは固定されたままのうえ、俺の声も彼女に届かなくなってしまったようだ。
「……ん?」
すると、程なくパソコンモニターに意味深な文字が浮かび上がる。
注意! ここから先をご覧になるには、課金アイテムの「監視カメラ」が必要です。また、向こうの声をお聴きになるには「マイク」が必要です。
「なんだこれ? 監視カメラは10000JEM、マイクは5000JEM!? こんなのボッタクリじゃないか!」
トリニティ・ワールド・オンライン内で使うJEMは、現実世界のお金でも買うことはできる。ようするに、課金だ。
ほぼ無課金で楽しんでいる俺からしてみれば、こんな高額JEMを買えばバイト代一か月分が軽く吹き飛んでしまう。
「でも……」
カナミが今、どんな状況に陥っているのか確認しなければ。
俺はすぐさまゲーム内のショップに移動し、監視カメラとマイクを購入してしまった。思えば、これが破滅と絶望への第一歩だったのかもしれない――。
夜の帳が下り、すっかり寝静まったメデオラ内部。
街灯も届かない、寂しい裏路地を抜けた先の民家がクエストの依頼主の住んでいるところらしい。
「こんな場所に住んでるなんて、暗いところが苦手なあたしへのあてつけ?」
『カナミ、足元には気を付けろよ。ゴミや酒瓶とかが散乱してるかもしれない』
「う、うん。分かった」
『それにメデオラは最近治安があまりよくないらしいからな』
「ちょ、ちょっと怖いこと言わないでよ」
ガサッ!
「きゃあっ!? ほ、ほらっ、そんなこと言うから――」
にゃぁぁんっっ!!
ゴミ箱を盛大に蹴り倒し角から飛び出してきたのは、不吉を象徴とする黒猫だ。
道の真ん中で立ち止まり、その鋭い眼光がカナミを射抜く。
「な、なに? 何か文句あるの?」
動物に問いかけたところで返事などもらえるはずがない。
やがてカナミに興味を失った気分屋の黒猫は、足早に暗闇の中へと溶け込んでいってしまった。
『大丈夫か』
「平気。どうやらこの民家のようね」
外から見る限り、それほど大きくない小ぢんまりとした木造平屋。
まずはノックをして家主の反応を探る。
「あのー、夜分すみません。あたし、クエストの依頼品を届けにきたものですが」
夜間と言うこともあり、普段からか細いカナミの声がさらにトーンダウン。
寝ている可能性もあるし、さすがに気付かないだろうと俺が口を出そうとしたそのとき、扉の軋む音が辺りに響いた。
「ひゃッッ!?」
奥から出てきたのは、髪がボサボサで太っていてゴリラのような風貌の大男。
おまけに、かなり臭う……長いこと風呂に入っていないようなツンとした独自な異臭がカナミの鼻を刺激した。
『カナミ、こいつ……見るからにヤバそうなヤツだ。もらえるもんを貰ったらとっととずらかれ』
「わ、分かった」
「くふ~、まさか請負人が女の子だったとはね」
「依頼の品はこれで良かったんですよね?」
「そうそう。これだよこれ。ずっと欲しかったアイテムなんだ」
「じゃあ、受け渡しの代わりに……」
「分かってるよ、報酬だろ? 悪いけどリビングのテーブルまで来てくれ。そこに金を用意してあるんだ」
「は、はぁ」
本当は一刻も早く立ち去りたかったけど、報酬のためだ。我慢するしかない。
それにしても、家主が汚ければ室内もまた汚い。部屋の明かりはところどころ切れてて暗いし、足元には飲みかけの酒瓶や腐った肉のようなものが転がっている。
「ところで、君はひとりでこんな仕事をしているのかい?」
「え? い、いや。厳密には違います。もうひとり、あそこのモニターで見守ってる仲間がいて……」
「モニター? 仲間? 何を言ってるんだ? ここにはそんなものないし、誰もいないぞ」
「ぁっ、と。これにはいろいろと深い訳がありまして」
「とにかく、見た限り君はひとりか。ふ~~~ん……」
「あ、あの。どうして玄関のカギを閉めてるんですか」
「いえね、本当はこの香水、馴染みの嬢に使うつもりだったんだけど……この際、君でもいいかなって。クヒヒw よく見ると童顔でおっぱいがでかくて、僕好みだからね!」
「な、なに気持ち悪いこと言ってるのこの人……って、やめて! それ以上近づかないで!」
『や、やべぇぞコイツ! 逃げろカナミ!!』
「そ、そんなこと言っても鍵がかかって……開かないよぉっ!!」
「お~っと、そんなに怯えなくてもいいよ子猫ちゃん。この匂いを嗅げば、すぐに気持ちが楽になるからね」
「そ、それ、さっきのこうす……ぃっ」
『カナミ! おい、どうしたんだ返事をしろ!!』
「んっ、んくぅ……! な、なにこれ……いきなり身体がアツく、なって……ぁっぁっ、ぁっ、んはっ……ん゛っ、力、入らな、ぃぃっ……」
「さすが即効性の媚薬。さぁ、一緒にベッドに行こうか。いっぱい可愛がってあげる」
「ぁふっ、ぃっ、ぃゃぁッ……。あたし、どうな、って……タクヤ、助け、てっ……ぁんッ、胸、苦しぃっ……お股がじんじんって、してぇ……はぁ゛ぁ゛んッッ♥」
『カナミ! カナミぃぃッ!!』
俺の必死の叫びも空しく、とろんとした目をしたカナミはゴリラ男に連れられ奥の寝室らしき部屋へと連れていかれてしまった――。
◇◆◇
一方、俺は姿が見えなくなってしまったカナミの身を案じていた。
あんな気持ち悪そうな男に力任せに乱暴をされたらそれこそ事だ。
しかもどういう原理か知らないが、カナミが姿を消してからカメラアングルは固定されたままのうえ、俺の声も彼女に届かなくなってしまったようだ。
「……ん?」
すると、程なくパソコンモニターに意味深な文字が浮かび上がる。
注意! ここから先をご覧になるには、課金アイテムの「監視カメラ」が必要です。また、向こうの声をお聴きになるには「マイク」が必要です。
「なんだこれ? 監視カメラは10000JEM、マイクは5000JEM!? こんなのボッタクリじゃないか!」
トリニティ・ワールド・オンライン内で使うJEMは、現実世界のお金でも買うことはできる。ようするに、課金だ。
ほぼ無課金で楽しんでいる俺からしてみれば、こんな高額JEMを買えばバイト代一か月分が軽く吹き飛んでしまう。
「でも……」
カナミが今、どんな状況に陥っているのか確認しなければ。
俺はすぐさまゲーム内のショップに移動し、監視カメラとマイクを購入してしまった。思えば、これが破滅と絶望への第一歩だったのかもしれない――。
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