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第八十八話 花の妖怪 後編

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 しばらく辺りを見渡していると、こもることができそうな家を見つけた。体から毒を排出させているので、できれば近づきたくないと思っている。

「あそこでこもろう!」
「了解!」

 僕達はフラワーアイオスが復帰してくる前に家の中に入った。家に入ったことで突進技を防ぐことができる。それに遠距離武器を使うメンバーが三人いるので攻撃も可能だ。フラワーアイオスは体勢を立て直し、こちらに手についているとげを飛ばしてくる。僕達が家にこもったと判断したのか、適切な攻撃である。このとげにもきっと毒が付与されているに違いない。

「炎の舞! フレイムラーミナ!」
「兜割!」

 とげ攻撃を、扉を使って避けた後、僕とツキナはフラワーアイオスに遠距離攻撃のスキルを発動した。フラワーアイオスはそれを手に着いたとげとげを大きくさせて自分の体を囲むように巻き付ける。そして僕達のスキルをガードした。ガードしたと言っても多少はダメージが入った。

「チャージショット!」
「えーい!」

 トモとリリの攻撃でフラワーアイオスのガードを破った。

「凍雨!」
「天狗風!」
「星火繚乱!」

 フラワーアイオスが怯んだところにムサシ、コジロウ、アサガオが追い打ちをかける。三段攻撃をしたことでやっとフラワーアイオスに大ダメージが入った。フラワーアイオスのHPが半分になる。フラワーアイオスはガードが堅い分、HPが他のボス級モンスターより低くなっているみたいだ。

「みんなすごーい……」

 僕におんぶされていたハルが小声で呟く。今は怯えているが、小学生なのにソロでこんなところまで来ている訳なので、実力的には強いとは思う。そんなことを考えながら男の子の呟きを聞いていた。
 フラワーアイオスはとげとげがついている手を家に向かって伸ばしてくる。家にこもられるのが不利だと思ったのか建物を壊しにかかってくる。フラワーアイオスが家に気を取られている間に倒し切りたいというのが正直な感想だ。

「ちょっくら攻撃しに行ってくるわ!」

 僕は戦闘を長引かせるのは良くないと判断して、接近すると決めた。あのとげを飛ばす攻撃は魔法程速度が速くないので、斬り落とすことも可能だ。僕は家から飛び出してフラワーアイオスに向かっていく。フラワーアイオスは僕の予想した通りにとげを発射してきた。僕はそれを斬り落としながらまっすぐに進んでいく。

「うわぁぁぁあぁぁぁ!」

 ハルは悲鳴を上げている。被弾はしていないもののまたトラウマを植え付けてしまうかもしれない。もう家を飛び出してしまったので、引き返すことはしないが……。

「雪・月・花!」

 僕はゼロ距離で、スキルをお見舞いする。

「からのスクイッド・オーシャン!」

 フラワーアイオスがのけぞったところをオリジナルスキルで追撃した。フラワーアイオスのHPが残り一割を切る。僕がHPをかなり削ったところにみんなが一斉に攻撃した。フラワーアイオスのHPがゼロになる。

「ナイス!」

 僕はみんなに声を掛けた後にハルを地面に降ろしてあげる。

「助けてなんて言ってねぇし!」

 すっかり元気を取り戻したハルは首をそっぽ向く。やっぱりこのガキは生意気だ。元気があることは良いことなので、怒るつもりはないが。それに僕が怒るよりもアサガオが怒ったほうが効果的だからだ。

「ちゃんとお礼を言わないとダメでしょ!」
「はい……ありがとうございます……」

 アサガオに怒られ、ハルはしゅんとしてしまった。やっぱりこの二人のやり取りは見ていて面白い。

「ハルはどんな武器を使うんだ?」
「えっとね、片手剣だよ」
「盾なしの?」
「うん」
「そうなのか。盾を使わないなんてすごいじゃないか」
「えへへ……すごいでしょ」
「おう! すごいぞ!」

 機嫌がよさそうなハル。アサガオと同様に褒められると喜ぶ年頃だ。生意気でもそういうところがあるので、許せてしまう。

「そうだ。ハル! 僕達のギルドに入るか?」
「本当? 本当にいいの?」
「もちろんだ!」
 
 ここまでソロ出来ている様子だったので、おそらくギルドにも所属していないのだろう。それに実力ははっきりとしないが、ちょうどもう一人ギルドメンバーが欲しいと思っていたところなのだ。

「ありがとう……」

 ハルは素直にお礼を言った。一人に限界を感じていたのか、それとも仲間と一緒にプレイをしたかったのだろうか。それは頭の隅に置いておいて仲間が増えたことを喜ぼう。

「よし! 拠点に帰ったら歓迎会をやろう!」
「賛成!」

 トモが提案したことにみんなが賛成したので、拠点に帰ってからゲーム内で歓迎会を開くことになった。この後もいろいろなフィールドを回って順調にポイントを稼いでいった。
 
「夕刻になったから、そろそろ拠点に戻ろう!」

 僕は歓迎会する時間を取るために早めに引き上げようと考えたのだ。みんなも賛成なようなので、今日は早めに拠点に戻ることになった。帰りはクウガで帰ることにする。一回、幻獣を使ってしまうと歩いて帰ることなんて考えられない。僕達はクウガの背中に乗って、拠点に帰っていた。

「ハル君、見て! あれが拠点だよ!」

 アサガオが拠点を指さしながら言う。

「どれどれ?」
「あれだよ!」
「わぁ……立派な家だね」
「そうでしょ?」
「うんうん」

 仲良く話しているアサガオとハルを僕達は温かく見守っていた。アサガオも同じ年の仲間ができてリラックスできている様だ。今までは年上しかいなかったので、嬉しいのだろう。

「着いたよ! 案内するね!」
「うん! お願い」

 アサガオは楽しそうにハルの手を引っ張って家の中に入って行った。

「今のうちに準備するわよ!」
「そうしましょ!」

 ツキナとリリはそう言うと台所に入って料理を開始した。

「僕達は飾りつけや掃除をしよう」
「オッケー!」
「了解です!」

 僕を含めて、残された男組は雑用全般をこなすことにした。アサガオがハルを案内している間にできれば準備を終わらせたい。みんなもそう思っているので、超特急で準備が進んでいく。歓迎会の準備を始めてから二十分が経ち、アサガオとハルが戻ってきた。
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