攻撃と確率にステ振りしていたら最強になりました

りっくり

文字の大きさ
上 下
77 / 92

第七十六話 アスレチックギミック

しおりを挟む
 あたり一面真っ白な空間。他の階層よりは比較にならないほど明るい。意図的に明るくしたのならこの空間でこれから何かが始まるのだろう。
 数分前に階段を上がってきたらいきなりこの不思議な空間に出た。空間を歩き回っているのだが、いまだに何も起きていない。あるのは入り口のみで、出口と思われる場所はない。ここに入る前に〔変化の間〕という表示があったくらいだ。

「何も起きないですね……何かアクションを起こさないとダメなのですかね?」

 アサガオが頭を捻った後、質問をしてくる。

「そうですね。ヒビトさんのリンクメニューに何かが表示されたりしてないですか?」

 コジロウはアサガオに賛同しつつ、何かを思い付いたかのように僕に言ってくる。

「リンクメニューね~。確認するわ」

 この空間に入った瞬間に何かの通知が出たような気がしていた。僕はすぐにリンクメニューを開く。するとリンクメニューの右上にあるアイコンが点滅していた。僕は点滅している部分をタップする。

〔変化の間にようこそ! ギミックを発動しますか?〕

 と言う通知が来ていた。〔発動〕というボタンを押せば先に進む為のギミックが発動するのだろう。

「通知が来てた! 今から発動というボタンを押すから警戒してくれ!」
「了解!」

 みんなが返事をしたのを確認すると僕は〔発動〕というボタンを押す。「ゴゴゴ」と言う地響きが鳴り響く。それと同時に地面が激しく揺れる。
  
「みんな、しゃがむんだ!」

 僕は地響きに負けないような大きい声でみんなに指示する。みんなはその場に一斉にしゃがみ込む。激しい揺れが起きた時は動いていると危険なのだ。
 僕達がいる地面が浮き上がっていく。そして揺れが治ると目の前にはさっきとは一転して、複数の足場が出現する。五十メートル先には出口らしき扉が見えた。足場を踏み外すと針山に突き刺さるようにできている。

「これは、足場を渡っていくアスレチックギミックね」

 リリが言う。

「ほうほう。そうなのか! 難しそうだな!」

 僕は返事を返す。足場が五十センチしか無い上に、足場と足場の間隔は全力で飛ばないと届かない距離なのだ。フウラで渡ることも考えたのだが足場が小さすぎるので断念。自分でいかなければならない。それにまっすぐ渡れるとも限らない。

「俺が一番にクリアしてやる!」

 勢いよく足場を渡り始めるトモ。うまくバランスをとりながら、真っ直ぐ進んでいくが、中間地点の辺りで足場が崩れる。

「うわぁぁぁぁぁぁ! クウガ! 頼む!」

 トモは悲鳴を上げた後、一旦落ち着いてクウガを呼び出す。そしてクウガの背中に乗って戻ってきた。

「真っ直ぐに突き進むなんて、馬鹿じゃないの!」

 とリリに叱られている。

「いやぁ……まさか……足場が崩れるとは……それにクウガで飛んで行こうとしたら見えない障壁にブロックされたし……」

 リリにだけ聞こえる声でぶつぶつ言っているトモ。ただ最後の言葉はしっかりと聞こえた。どうやら到達できたところよりは先に進めないらしい。それができてしまうと簡単になってしまうので仕方ないが。
 それよりも困ったことに真っ直ぐ進むと落下してしまうことが分かった。こういう場合はどこかに攻略のヒントになるものがあるはずだ。
 
「皆さん、あそこにでかい絵がありますよ」

 アサガオが近くの壁に貼ってある縦横の長さが四メートルくらいある絵を指差しながら言う。あれがヒントなのかもしれない。僕達は絵に近づく。
 真ん中の球体は孤立しており、周りを囲むように上から羊、牛、そして似た顔をしている子供が二人。双子なのだろうか。さらに蟹、ライオン、女の人、天秤、蠍、弓を持った男の人、山羊、樽を持った男の人、魚の順に絵が記されていた。絵の右下には〔MARK〕と書いてあった。

「これはどういう意味だ?」
「アスレチック攻略のヒントになるはずだけれど分からないわね」

 僕とツキナは頭をひねる。みんなも同じような表情をしている。ここに描かれている絵に関連するものを見たことはあると思うのだが名前が全く出てこない。真ん中の球体が一つだけ孤立しているのも気になっている。

「この絵が指しているのは、黄道なんとかじゃないんですか?」
「黄道十二星座のことか?」

 コジロウの言葉で何かを思い出したらしいトモが答える。

「そうです! それが言いたかったんです!」
「なるほど……」

 僕は再び絵を見て納得する。羊がおひつじ座で、牛がおうし座、似た顔の二人の子供がふたご座、蟹がかに座、ライオンがしし座、女の人がおとめ座、天秤がてんびん座、蠍がさそり座、弓を持った男の人がいて座、山羊がやぎ座、樽を持った男の人がみずがめ座、魚がうお座に当てはめることができるではないか。

「MARKはきっとシンボルマークという意味だわ」

 ツキナも絵が黄道十二星座を指していることが分かったことで閃いたらしい。黄道十二星座にはシンボルマークのようなものがあった気がする。何だったかは全く覚えていないが……。一旦ログアウトして調べるべきかもしれない。

「シンボルマークの形を描くように飛べば何かが起きるという事なのか?」
「確証はないけど、多分そうだわ!」
「ゴールが見えたな!」 
「確証はないわよ!」
「ツキナの予想は当たるからな!」
「そうかしら!」
「おう!」
「ありがとう!」

 僕とツキナがそんなやり取りをしているとリリが発言する。

「この孤立している球体は何を意味しているんだろうね」

 そうなのだ。孤立している球体の意味がまだ分かってない。これが分かれば、答えが分かるはずなのだが……。

「……孤立……孤立……」

 僕は頭をフル回転されて考える。みんなも必死に考えている様だ。

 孤立は一人ぼっちという意味だ。仲間外れとも捉えられる。あれ……、黄道十二星座の中に仲間外れの星座が一つだけあったような気がする。何だったかな……。蛇が付いたような、付かなかったような……。

「あっ! 分かった!」

 五分ぐらい考えて、やっと答えが分かったので大声を出してしまった。

「ヒビトさん! 何が分かったんですか?」

 僕が大声を出してからあまり時を開けずにムサシが質問してくる。

「孤立が仲間外れを意味するのならば自ずと答えが分かってこないか?」
「あっ! なるほど! 黄道十二星座の仲間外れはへびつかい座ですね!」
「そう! それだ!」
「よく出来てますね……」

 ムサシは感心している。みんなもそうだ。へびつかい座は黄道十二星座に含まれているのにバビロニアの人が作ったカレンダーの影響で除外されてしまった星座なのだ。少しだけ可哀想だと思ってしまう。

「ヒビト! 一旦ログアウトしてマークを調べてくるわね!」
「おう! 行ってらっしゃい!」

 僕達の中で一番記憶力がいいのはツキナなので、任せることにする。
 ログアウトしてからアバターが少しの間だけ残ってしまうので、すぐに近づき守ることにする。ツキナは僕が近づくのを確認するとログアウトした。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

Anotherfantasia~もうひとつの幻想郷

くみたろう
ファンタジー
彼女の名前は東堂翠。 怒りに震えながら、両手に持つ固めの箱を歪ませるくらいに力を入れて歩く翠。 最高の一日が、たった数分で最悪な1日へと変わった。 その要因は手に持つ箱。 ゲーム、Anotherfantasia 体感出来る幻想郷とキャッチフレーズが付いた完全ダイブ型VRゲームが、彼女の幸せを壊したのだ。 「このゲームがなんぼのもんよ!!!」 怒り狂う翠は帰宅後ゲームを睨みつけて、興味なんか無いゲームを険しい表情で起動した。 「どれくらい面白いのか、試してやろうじゃない。」 ゲームを一切やらない翠が、初めての体感出来る幻想郷へと体を委ねた。 それは、翠の想像を上回った。 「これが………ゲーム………?」 現実離れした世界観。 でも、確かに感じるのは現実だった。 初めて続きの翠に、少しづつ増える仲間たち。 楽しさを見出した翠は、気付いたらトップランカーのクランで外せない大事な仲間になっていた。 【Anotherfantasia……今となっては、楽しくないなんて絶対言えないや】 翠は、柔らかく笑うのだった。

異世界成り上がり物語~転生したけど男?!どう言う事!?~

ファンタジー
 高梨洋子(25)は帰り道で車に撥ねられた瞬間、意識は一瞬で別の場所へ…。 見覚えの無い部屋で目が覚め「アレク?!気付いたのか!?」との声に え?ちょっと待て…さっきまで日本に居たのに…。 確か「死んだ」筈・・・アレクって誰!? ズキン・・・と頭に痛みが走ると現在と過去の記憶が一気に流れ込み・・・ 気付けば異世界のイケメンに転生した彼女。 誰も知らない・・・いや彼の母しか知らない秘密が有った!? 女性の記憶に翻弄されながらも成り上がって行く男性の話 保険でR15 タイトル変更の可能性あり

New Life

basi
SF
なろうに掲載したものをカクヨム・アルファポにて掲載しています。改稿バージョンです。  待ちに待ったVRMMO《new life》  自分の行動でステータスの変化するアビリティシステム。追求されるリアリティ。そんなゲームの中の『新しい人生』に惹かれていくユルと仲間たち。  ゲームを進め、ある条件を満たしたために行われたアップデート。しかし、それは一部の人々にゲームを終わらせ、新たな人生を歩ませた。  第二部? むしろ本編? 始まりそうです。  主人公は美少女風美青年?

【第二部完結】 最強のFランク光魔導士、追放される

はくら(仮名)
ファンタジー
※2024年6月5日 番外編第二話の終結後は、しばらくの間休載します。再開時期は未定となります。 ※ノベルピアの運営様よりとても素敵な表紙イラストをいただきました! モデルは作中キャラのエイラです。本当にありがとうございます! ※第二部完結しました。 光魔導士であるシャイナはその強すぎる光魔法のせいで戦闘中の仲間の目も眩ませてしまうほどであり、また普段の素行の悪さも相まって、旅のパーティーから追放されてしまう。 ※短期連載(予定) ※当作品はノベルピアでも公開しています。 ※今後何かしらの不手際があるかと思いますが、気付き次第適宜修正していきたいと思っています。 ※また今後、事前の告知なく各種設定や名称などを変更する可能性があります。なにとぞご了承ください。 ※お知らせ

戦国時代の武士、VRゲームで食堂を開く

オイシイオコメ
SF
奇跡の保存状態で頭部だけが発見された戦国時代の武士、虎一郎は最新の技術でデータで復元され、VRゲームの世界に甦った。 しかし甦った虎一郎は何をして良いのか分からず、ゲーム会社の会長から「畑でも耕してみたら」と、おすすめされ畑を耕すことに。 農業、食堂、バトルのVRMMOコメディ! ※この小説はサラッと読めるように名前にルビを多めに振ってあります。

未来から来た美女の俺

廣瀬純一
SF
未来から来た美女が未来の自分だった男の話

ルキファナス・オンライン-もふもふ従魔が厨二病に目覚めた件

セフェル
SF
 モンスターを自在に操るテイマーという職業がある。  もふもふ従魔たちが厨二病に目覚めていくんですけど!?  厨二病に目覚めた従魔たちと様々な事件に巻き込まれていく、ほのぼのゲーム生活が始まる。

処理中です...