攻撃と確率にステ振りしていたら最強になりました

りっくり

文字の大きさ
上 下
71 / 92

第七十話 雄のアルメールアント

しおりを挟む
 雄のアルメールアントが羽をはばたかせる。羽をはばたかせた事で今まで倒してきた働き蟻と思われるアルメールアントが大量に集まってきた。

「これはまずいですね……」 

 ムサシが呟く。働き蟻はざっと数えて五十体以上いるだろうか……。これだけいると雄のアルメールアントを倒すどころの話ではない。

「この蟻は私たちが引き受けるね! ヒビトとツキナは雄のアルメールアントを頼むね!」

 リリはそう言うと円柱の形をした何かを地面に設置する。設置してすぐに僕とツキナとみんなとの間に鉄格子が出現する。
 僕とツキナが雄のアルメールアントとの戦いに専念できるように仕切りを作ってくれたみたいだ。
 これで雄のアルメールアントが働き蟻を呼んでも気にする事なく、戦うことが可能になった。それにしてもリリの発明はすごい。もう慣れてしまったので、驚くことはないが……。みんなの無事を祈りつつ、僕は剣を抜き戦闘の準備をする。

「ツキナ! やるぞ!」
「もちろんよ! 援護は任せて!」
「おう! 任せた!」

 僕はツキナに背中を預け、雄のアルメールアントに向かっていく。ツキナとの共闘は僕がゲームを始めた頃以来だ。久々の共闘に僕は胸を躍らせていた。
 二体の雄のアルメールアントは口から剣を出現させる。(どうなってるいるんだ! あの口の中は!)と思ったが、今は気にしていられない。さすがは雄と言うべきか、かなり速いスピードで飛びながら攻撃してくる。最初は順調に迎撃できていたが、攻撃するたびにスピードが上がるみたいで、今の状態だと対応ができなくなっている。

「くそっ! なんて速さだ!」

 僕は顔をゆがめる。ツキナは僕が対応できないところをシールドでカバーしてくれているが、少しずつHPが減っていく。

「雷電!」

 僕は雄のアルメールアントを麻痺状態にして動きを止めようとするが、いち早く危険を察知した雄のアルメールアントはスキルの範囲外のところまで下がる。麻痺攻撃をしてくるプレイヤーにも対応できるようになっているみたいだ。

「厄介すぎるな……このモンスター……」

 僕は呟く。

「出し惜しみしていないで、疾風迅雷を使いなさい!」

 僕のカバーと回復を同時に行っているツキナの指示が飛んでくる。【疾風迅雷】は一日に二回しか使えないという制限が付いたので、もっと強いモンスターが現れたときのためにとっておこうと考えていたのだが、やむを得ない。

「十分でケリをつけてやる! 疾風迅雷発動‼」

 AGIをSTRと同じだけの数値にする。これによってAGIが百以上になった。僕が使えるスキルの中で一位、二位を争う圧倒的なスピードと圧倒的な攻撃力が混ざる最強のスキルなのだ。STRが二百を超えてきたら、どうなってしまうのだろうか。想像するだけで恐ろしい。
 AGIが上がったことで、雄のアルメールアントの攻撃を軽々と避けれるようになった。雄のアルメールアントの剣の攻撃を弾きながら、確実にダメージを与えていく。働き蟻みたいに一撃で真っ二つになるということはないらしい。一撃で死んでしまったら女王を守ることはできないと思うので当然だとは思うが……。
 順調にHPを奪っていき、やっと残り三割のところまできた。時間は五分経過している。あと五分で終わらせる。雄のアルメールアントはいったん僕から距離を取り、口から針状の何かを飛ばしてくる。(いったいあのモンスターの口はどうなってるんだ!)と突っ込みたくなるが、今は倒すことに専念する。

「ツキナ! シールドを頼む!」
「分かってるわ! はい!」

 僕の意図を察したツキナがすぐにシールドを張る。回避しながら進んでいくこともできるが、雄のアルメールアントが二体いるので、飛んでくる数が多い。できるだけ時間を短縮するために真っ直ぐ進んでいくことにしたのだ。

「落ちろぉぉぉぉぉ!」

 僕は叫び声を上げながら雄のアルメールアントに接近していき、二体の羽を斬り落とす。雄のアルメールアントの機動力が高いのはきっと羽があるからだ。雄のアルメールアントを一回の攻撃で倒すことはできないと思うので、機動力を奪ってしまおうと考えた。地面に落とすことができれば、後はじっくりととどめを刺せばいい。羽を無くした雄のアルメールアントはゆっくりと地面に落下していく。

「ヒビト! とどめを刺さずに進んで!」

 ツキナが今になってなぜ、そんな指示を出したのかは分からないが言うことを聞くことにする。

「炎の舞! フレイムラーミナ!」

 ツキナが作りだした炎の刃が、雄のアルメールアントのHPをすべて奪い去った。雄のアルメールアントは音を立てながら消滅する。地面に着地した僕はすぐにツキナに近づく。なぜ、あんな指示を出したのかが気になったからだ。

「さっきの指示は何だったんだ?」
「あれね! あれはラストアタックボーナスを狙ったのよ!」
「なんで?」
「このスキルを手に入れるためよ!」

 ツキナはそう言うとスキルを見せてくれた。ちなみにラストアタックボーナスと言うのは名前の通りにモンスターのHPが少なくなった時にスキルでとどめを刺すことで特別なアイテムやスキルを手に入れることができることを言う。

【ハント、モンスターを生け捕りにすることができる。同時に十五体まで】

「このスキル必要なくね……ってまさかアルメールアントを捕獲する予定なのでは?」
「えっ? なんで分かったの?」
「いやいや、誰でも分かるからな! やっぱりツキナはアルメールアントを食べたことがあるんだぁ~」
「な、ないわよ!」
「もう逃げれないぞ! 捕獲すると言ってたからな!」
「わ、分かったわよ……一度だけ食べたことがあるわ!」
「例の情報屋に貰ったのか?」
「そうよ! 柔らかくてとても美味しかったわ!」
「ほうほう……ツキナが虫を食べるとはな!」
「もう! やめて! 恥ずかしいじゃない!」
「ごめん、ごめん……それよりみんなの無事を確認しに行こう」
「分かったわ! アルメールアントも捕まえたいし……」

 僕とツキナは鉄格子があるところに向かって歩いていく。鉄格子に近づくとみんなはまだ戦っていた。僕とツキナの存在に気づいたリリが鉄格子を解除してくれた。残っているアルメールアントは十五体くらいか……。コジロウも本来の力は出せていないが、戦っていた。(頑張ったな!)と後で褒めてあげなければ。

「ツキナ! チャンスだよ!」
「分かってるわ!」

 アルメールアントがまだ残っているので、捕獲するチャンスだと思いツキナに提案する。【ハント】がどういうスキルなのかも見て見たかった。

「ツキリン! 何をやるの?」

 リリが質問してくる。

「見ていれば分かるわよ! ハント!」

 ツキナが声を出すと十五体のアルメールアントの上から檻が出現し、捕獲する。そして檻が縮んでいき、ツキナのストレージに収まった。すべてのアルメールアントがいなくなり、残すは女王だけとなった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました

Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。 順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。 特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。 そんなアメリアに対し、オスカーは… とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

せっかく転生したのに得たスキルは「料理」と「空間厨房」。どちらも外れだそうですが、私は今も生きています。

リーゼロッタ
ファンタジー
享年、30歳。どこにでもいるしがないOLのミライは、学校の成績も平凡、社内成績も平凡。 そんな彼女は、予告なしに突っ込んできた車によって死亡。 そして予告なしに転生。 ついた先は、料理レベルが低すぎるルネイモンド大陸にある「光の森」。 そしてやって来た謎の獣人によってわけの分からん事を言われ、、、 赤い鳥を仲間にし、、、 冒険系ゲームの世界につきもののスキルは外れだった!? スキルが何でも料理に没頭します! 超・謎の世界観とイタリア語由来の名前・品名が特徴です。 合成語多いかも 話の単位は「食」 3月18日 投稿(一食目、二食目) 3月19日 え?なんかこっちのほうが24h.ポイントが多い、、、まあ嬉しいです!

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

ギフト争奪戦に乗り遅れたら、ラストワン賞で最強スキルを手に入れた

みももも
ファンタジー
異世界召喚に巻き込まれたイツキは異空間でギフトの争奪戦に巻き込まれてしまう。 争奪戦に積極的に参加できなかったイツキは最後に残された余り物の最弱ギフトを選ぶことになってしまうが、イツキがギフトを手にしたその瞬間、イツキ一人が残された異空間に謎のファンファーレが鳴り響く。 イツキが手にしたのは誰にも選ばれることのなかった最弱ギフト。 そしてそれと、もう一つ……。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

処理中です...