攻撃と確率にステ振りしていたら最強になりました

りっくり

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第六十九話 蟻の巣窟

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 休憩を終えた僕達は地下迷宮の出口を探す為に探索していた。長い階段を上ったことで一つ上の階層に行けたと思うのだが、変わらず同じ景色が続く。

「だいぶ、見やすくなったわね」

 ツキナがそんなことを言ってくる。

「そうですね! だいぶ見やすくなりました」

 アサガオも同じ事を思っているようだ。景色は変わっていないが、階段を上った前と比べて明るくなっている。上の階層に行くにつれて、明るくなると言う仕様なのだろうか。
 それにしてもこの階層は入り組んでいるのは勿論なのだが、何かの巣みたいに整備されているような気がする。

「みんなストップ! 何かに囲まれている気がする」

 僕はみんなに警戒を促す。複数の何かに見られているような感覚になったのだ。普段はあまり感じることはないのだが、暗いので神経が研ぎ澄まされているようだ。

「どう言うこと?」
「何かに監視されている」

 ツキナが質問してくるので、警戒を解かずに答える。ゆっくりだが複数の足跡がこちらに近づいてくる。
 どうやら狙われているみたいだ。それにしてもこの隠蔽能力はなんだ。少しでも集中力を切らすと足音が聞こえなくなりそうだ。そして数秒が経ち、背後から槍の突きが飛んで来る。

「回避! 早いっ!」

 みんなに攻撃されたことを知らせつつ、攻撃を避けた。
 完全に避けれたと思ったのだが、予想以上に攻撃速度が速く、槍が頬をかする。かすっただけなのにHPが一割ほど減少する。直撃していたらどうなっていたことか……。シールドを使えるツキナを除いてみんなのHPが僕と同じくらい減少している。
 急な出来事だったので、全員にシールドを張ることができなかったようだ。

「リジェネレーション!」

 ツキナが叫ぶとみんなを癒しの光が包みこみHPを全回復させる。ツキナが回復魔法を使ったのを久しぶりに見た。
 ツキナに回復魔法を使わせるほどにダメージを負わせたものの正体が分かった。全長は僕達と同じくらいで、頭には触角。脚は六本あり、そのうちの二本で槍を持っている巨大蟻だった。
 コジロウの顔が青ざめる。虫が苦手なコジロウには精神的なダメージが入ってしまったようだ。コジロウは慌てて、僕達が固まっているところから離れようとするが、それを僕が止める。

「一人になるのは危険だ! しっかりと守るから僕の後ろにいてくれ!」

 今、複数の蟻に囲まれている状態なので、一人にするのは非常に危険である。
 僕の意図をしっかりと理解してくれたコジロウは僕の後ろに隠れる。さっきから気になっていたのだが、蟻は体から赤色のオーラを発している。

「厄介なモンスターに出会したわね!」

 ツキナは難しい顔をしている。

「どうしたんだ? そんな顔して」

 僕はツキナの表情からあまりよろしくない状況だと言うことを理解したので、すぐに質問する。

「あれはアルメールアント! この巣の中のどこかにいる女王を倒さなければ、攻撃力上昇と移動スピードアップのバフが消えないのよ」
「厄介すぎるじゃん! その能力」

 どうやら僕達はアルメールアントの巣の中に居るらしい。
 こんな入り組んだ場所で女王を見つけるなんて至難の技だ。だが、女王を見つけないと僕達が先に死んでしまう可能性がある。ツキナが難しい顔をしていた理由が分かった。

「厄介だけど、利点もあるのよ」
「どう言うこと?」
「食べたら美味しい……じゃなかったギルドメンバー全員を強化するスキルが手に入る可能性があるわ!」
「ほうほう……ツキナはアルメールアントを食べたことがあるんだぁ……」
「そ、そんなことないわよ! い、今のはなし! なし!」

 ツキナは慌てていた。本当に分かりやすい。

「ツキリン! 顔に嘘ですって書いてあるよ!」
「そ、そんなことより、戦闘よ! 戦闘!」

 話を逸らそうするツキナ。このことは後で追求するとして今は目の前にいるアルメールアントを倒さなければならない。アルメールアントは再び槍の突き攻撃をしてくる。

「今度は当たらないぞ!」

 僕はさっきよりも素早く回避して、腕を斬り落とす。攻撃力と移動速度は早かったが、防御力はあまりないらしい。

「ザウルファイア!」

 ツキナは僕達を囲んでいたアルメールアントをまとめて焼く。アルメールアントは一瞬で消滅する。ツキナが魔法を使えばあまり苦戦せずに倒せるのではと思ってしまう。
 ツキナの【ザウスファイア】が引き金になったのか、奥からアルメールアントがゾロゾロと出てくる。

「今度は俺が! 黒風白雨!」

 矢の雨が近づいてきたアルメールアントを串刺しにする。この後も出てきたアルメールアントを返り討ちにしながら女王を探す。
 ツキナがギルドメンバーを強化するスキルが手に入るかもしれないと言っていたので、探すことに決めたのだ。そのスキルが手に入れば色々な場面で役立つはずだ。
 コジロウは僕にしがみついているので、戦闘は完全に他のメンバーに任せる形になっている。

「アルメールアントの数が増えてきましたね」

 アサガオが周囲を確認した後にそんなことを言ってくる。確かにアルメールアントの数が増えてきた。女王がいる場所に近づいてきたからなのだろうか。まぁ、先に進めば自ずと分かることなのだが……。
 奥に進んでいくと今まで戦っていたアルメールアントとは違い、全長が二メートルくらいで背中には羽が生えており、丈夫そうな体や触角を持っているアルメールアントが二匹、門番としてある部屋の前に立っていた。おそらくあれは雄だ。雄が居ると言うことは中に居るのが、女王の可能性が高い。

「中にいるのは、おそらく女王だね」

 リリが発言をする。中に入る為には部屋の前に立っている強そうな雄のアルメールアントを倒さないといけない訳だ。ギルドメンバーを強化するスキルを手に入れる為にはやるしかない。
 おそらくだが、女王がこの階層のボスだと思うので、倒すことで上の階層に行くことができるかもしれない。

「よし! 行くぞ!」

 僕はみんなに聞こえるくらいの声で言う。大きすぎると周りのアルメールアントに気付かれてしまう可能性があるからだ。

「おー!」

 みんなも僕と同じくらいの声で言う。コジロウは具合が悪そうだ。
 ここに来るまでの間に何十。いや……何百体ものアルメールアントを見てきたからだろう。コジロウを守りながら戦えるか心配だが、雄のアルメールアントに接近する。
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